コレステロールが高いと言われたら

東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科 村石 真起夫

「コレステロールが高いですね。下げるようにしましょう」と健診で言われても、なんだかイメージがわかないですよね。体に不具合があるわけではないし、言われた方は、以下の部分が特に腑に落ちないのではないでしょうか。

  1. コレステロールって、そもそも何のこと?
  2. 特に今困っていないけど、コレステロールが高いと何でいけないの?
  3. コレステロールを下げるにはどうしたらいいの?下げるメリットはあるの?

何かと、高いと指摘される機会が多く、周りの人も何となく気にしているコレステロールですが、上記の項目について、それぞれ確認しながら理解を深めていただければと思います。

コレステロールとは、そもそも何のこと?

コレステロールとは、脂質の仲間であり、全身の細胞膜(さいぼうまく)の成分となっているものです。コレステロールと聞くと、悪いイメージを抱くかもしれませんが、体に必須の性ホルモンやステロイドホルモン、ビタミンDなどの原料となります。また、脂肪の消化吸収を助ける胆汁の材料になるため、生きるために必要なものです。

コレステロールは、LDLコレステロールとHDLコレステロールに分かれます。LDLコレステロールは主に血管にたまり、動脈硬化の原因となるため、「悪玉コレステロール」と呼ばれます。一方HDLコレステロールは、動脈硬化の血管からコレステロールを抜き取ることができるので「善玉コレステロール」と言います。

LDL (低密度リポ蛋白)は、肝臓から全身の細胞にコレステロールを運ぶ粒子であり、この中に含まれるコレステロールがLDLコレステロールです。HDL(高密度リポ蛋白)は、全身の細胞から使われなくなったコレステロールを肝臓に運ぶ粒子で、この中に含まれるコレステロールをHDLコレステロールと言います。

コレステロールが高いと何がいけないの?

40代の男性患者さんの例を紹介します。健診でコレステロール高値を指摘されている以外に特に大きな病気にかかったことはありませんでした。タバコを1日20本吸っていました。胸痛が3時間続くため東京ベイ・浦安市川医療センターを受診しました。検査の結果、LDLコレステロールは233mg/dL, 症状と心電図で心筋梗塞が疑われ、緊急で心臓カテーテル検査・治療を行いました(図)。

(冠動脈造影検査。左前下行枝(矢印)が完全閉塞しており、急性心筋梗塞と診断。経皮的冠動脈形成術によるステント留置し、血流を開通させた)

この患者さんは、若年であるにも関わらず、LDLコレステロールが非常に高いことと喫煙から、動脈硬化が進み、心筋梗塞に至った例です。特にこの方の場合、父方の親戚が3人心筋梗塞を起こしており、アキレス腱も肥厚していることから「家族性高コレステロール血症」と診断されました。

このように、コレステロールが高いこと自体で、日頃の症状は特にありません。しかし、上記のようにLDLコレステロールが血管に蓄積することで動脈硬化が進行します(もちろんコレステロールだけではなく、実際は高血圧、糖尿病、喫煙などが加わることにより進行しやすい。)動脈硬化は全身の血管に及ぶため、頭、心臓、足どの病気も起こし得ます。その結果、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症などの大きな病気を引き起こします。重篤な例で言うと、脳梗塞は体の麻痺を残す場合があり、心筋梗塞は突然死に繋がる場合があり、下肢閉塞性動脈硬化症は、感染の合併などで下肢切断を余儀なくされる症例もあります。

極端かもしれませんが、健診での「コレステロールが高いですね」の先には、動脈硬化というものを意識せずそのまま放って置いた場合、上記のことが起こる可能性があるといいことを知っていただければと思います。

コレステロールを下げるにはどうしたらいいの?下げるメリットは?

一言にLDLを下げると言っても、人によって目標値は異なります。心筋梗塞や狭心症といった冠動脈疾患の既往があれば、二次予防となるため、LDLコレステロール<100mg/dLと、より低い値を目標とする必要があります。また、冠動脈疾患の既往がなくても糖尿病や慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患をすでに指摘されている患者は、高リスクであり、LDLコレステロール<120mg/dLが目標となります。

上記のどちらでもない場合、リスク因子〔喫煙・高血圧・低HDLコレステロール血症・耐糖能異常・早発性冠動脈疾患(第一度近親者かつ発症時年齢が男性55歳未満、女性65歳未満)〕の個数と年齢で低リスク (LDLコレステロール<160mg/dL)、中リスク (LDLコレステロール 140mg/dL)、高リスク (LDLコレステロール 120mg/dL)に分け、それぞれの目標値を目指します。自分の目標を知りたい方は是非かかりつけの医師に確認するといいでしょう。

コレステロールを下げる方法としては、生活習慣の改善と薬物療法があります。生活習慣の改善として日本動脈硬化学会からは以下が推奨されています。

  • 禁煙し、受動喫煙を回避する
  • 過食と身体活動不足に注意し、適正な体重を維持する
  • 肉の脂身、動物脂などの飽和脂肪酸、鶏卵、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える
  • 魚、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆製品、未精製穀類の摂取量を増やす
  • 糖質含有量の少ない果物を適度に摂取する
  • アルコールの過剰摂取を控える
  • 中等度以上(楽〜ややきつい)の有酸素運動を、毎日合計30分以上を目標に実施する

上記の食事療法・運動療法共に、LDLコレステロールを下げるだけでなく、さらには動脈硬化疾患の予防に有効であることが示されています。

また、心筋梗塞、不安定狭心症などの急性冠症候群を経験した患者の場合は特別であり、その後のLDLコレステロールは低ければ低い程長期予後が良いと言う報告があります。現在日本のガイドラインではLDLコレステロール目標<70mg/dLであり、ヨーロッパのガイドラインに至っては、LDLコレステロール目標<55mg/dLとまで言われており、正常値であれば良い、と言うわけではなく、できる限り数値を下げる努力が必要です。このような方には薬物療法が必須となり、特にLDLコレステロールの数値を気にしていく必要があります。

以上、コレステロールについて見てきました。今まで「コレステロールが高い」と言われても、その重要性や、対策としてどうすればいいかわからなかった方も、今回の記事を通して考えるきっかけになれば幸いです。気になる時はいつでもご相談に来ていただければと思います。

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