こんにちは。今回は言語聴覚士の仕事に加え、ハートチームでの役割についてご紹介させていただきます。
はじめに、心臓手術を受けられる患者さんのなかには、それまでに脳梗塞や脳出血などを患われた方もいらっしゃいます。また、ご高齢の患者さんからは、ご自宅にいらっしゃる頃から「食事が飲み込みにくい」「むせこむことがある」などのお声を伺われることがあります。言語聴覚士(ST: Speech-Language-Hearing Therapist)は、このような脳卒中後の嚥下障害や、加齢に伴う飲み込みづらさなどに関して、摂食・嚥下リハビリテーションをさせていただく職種です。
心臓手術後に危惧されることとして、食事が肺に流れる誤嚥(ごえん)が上げられます。窒息の危険だけではなく、炎症を契機に全身の機能回復を大幅に遅らせてしまうことが考えられます。多くのスタッフやご家族が支えた患者さんの命をリハビリテーションへとつなげるためにも、「術後の食事を安全に始めていただくこと」が私たちSTに与えられた使命と感じています。
しかしながら、食べ物や飲み物が正しく胃に流れているかについては、患者さんの外見から判断することは非常に難しいことであり、とても不安なことでもあります。また、むせこみなどの明らかな症状がなく、患者さんご自身でも気づかれないうちに誤嚥している不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)も多いとされています。実は、誤嚥性肺炎の半数以上がこれによるものであると指摘されています。
この問題を解決してくれるのが、嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査などの可視的な検査ですが、なかでも嚥下造影検査は不顕性誤嚥の発見にとても有用です。患者さんには少量のバリウムを含んだ食品を召し上がっていただくだけです。この検査に協力いただいているのが放射線技師さん、リハビリテーション科医師です。放射線技師さんは患者さんの嚥下のタイミングに合わせて、のどの動きと食事の流れ方をレントゲン動画で撮影保存しています。リハビリテーション科医師はリアルタイムで行われる嚥下の状態を適切に評価して問題点を明らかにします。ハートチームではこの嚥下造影の動画を供覧することができ、ご希望の場合には患者さんご自身やご家族様にも提示させていただき、ご覧いただけます。
この結果に応じて、食事の形態など食事環境を整えさせていただく仕事人がSTなのですが、”術後の食事を安全に始めていただくために”ハートチームとリハビリテーション科医師、放射線技師とで取り組むことによって、適切に問題点を見つけることができるのです。
これからも患者さんのリハビリテーションが効果的に進みますように、ハートチームのSTは頑張ります!よろしくお願いします。