心臓手術後のリハビリテーション栄養〜ハートチーム対談 管理栄養士×理学療法士〜

リハ:こんにちは。理学療法士の石川です。
栄養:こんにちは。管理栄養士の大矢です。
リハ:今日は、心臓手術後の栄養管理について、リハビリテーション栄養を含めて当センター管理栄養士の大矢さんにお話を聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
リハ:まず、『栄養管理』とはどういうことか教えていただけますか。
栄養:栄養管理というのは、栄養状態を良好に保ち、効果的な疾患治療が行われるようにサポートしていくことを目標にしています。栄養状態が悪い場合、治療が長引いたり、合併症が起きやすかったりと不利益な状態になる可能性が高くなります。また、治療後に少しでも良好な生活を送るためにも栄養状態を良好に保つことは重要となります。
リハ:治療だけでなく治療後の生活のためにも栄養管理が必要なんですね。では『栄養状態を良好に保つ』にはどうしたらいいんでしょうか?
栄養:私たちは、健康なときに栄養状態が良いとか悪いとか考える機会は少ないと思います。しかし病気になると、食欲が落ちたり、食べても痩せてしまうということが起きるのは想像できますよね。こういう状態が長く続くと、栄養状態は低下していきます。つまり、必要な栄養がきちんと補給されることで、『栄養状態を良好に保つ』ことができます。
リハ:では、心臓手術後の栄養管理としては何か特徴的なことはありますか?
栄養:術後回復のためには、必要な栄養を不足なくしっかりと補給することが重要です。しかし、術後は食欲が落ちる患者さんもいらっしゃいます。その場合、個別に食事相談をさせていただいています。比較的多いご意見は、口当たりの良いものやさっぱりしたものなら食べられそう、飲み物なら飲めそう、といった内容です。そのため、茶わん蒸しや果物を提供したり、少量でたくさんの栄養が摂れる高栄養飲料を提案し、食べられる食品で必要な栄養が確保できるよう工夫しています。食欲が病状に左右されるのはやむを得ないことです。そこでどう対応できるかが管理栄養士の力の見せ所だと思っています。リハビリテーションも疾患の影響はありますか?
リハ:そうですね…、心不全や心臓手術後は、息苦しさや痛みで体を動かすことが困難ですので、リハビリテーションは段階的に進めていきます。段階的というのは、術後炎症の影響で体内のタンパク質が分解されやすい時期もありますので、そうした点にも注意しながら運動量を決めています(下図参照)。食事(量)が安定してくる頃は、順調な方であれば第2相から第3相へ移行する時期であることが多い印象で、主に歩く距離を延ばしたり、階段の上り下りの練習をしていることが多いですね。

栄養:心臓に特化したリハビリテーションというのはあるのでしょうか?
リハ:心臓病に限らずリハビリテーションに共通することは、目標が歩行や入浴といった日常生活活動の改善にあります。心臓病患者さんの特徴は、心臓手術後や慢性心不全の方は入院までの経過で長い期間心臓を患っており、体力や筋力がすでに低下していることが多いです。そうした方の病気が悪化したり、手術を受けたりすると、より一層体力や筋力が低下し、活動能力が落ちてしまいます。心臓病患者さんに対しては、このような身体状態や経過を踏まえてリハビリテーションを考えていく必要があります。
栄養:心臓病患者さんは体力も筋力も落ちやすいんですね。
リハ:はい、そういう方が多いですね。リハビリテーション治療で焦点を当てているものの一つに筋肉があります。筋肉はヒトが起きたり立ったり歩いたりといった、生活で必要な活動を行う上で重要です。筋肉は運動をすることで改善が期待されます。先ほどもお伝えした通り、心臓病患者さんは体力や筋力がすでに落ちている方が多く、特に心臓手術後は炎症などでエネルギーを普段以上に多く使ってしまい足腰がやせ細ってしまいます。これに対して、リハビリテーションを通じて運動を進めていき、活動改善のためにも筋肉をつけていく必要があります。
栄養:心臓病患者さんにとってリハビリテーションは欠かせませんね。
リハ:そうですね。そこで同時に大切なのが栄養ですよね。筋肉の材料は栄養で、それを形にしていくのがリハビリですからね。
栄養:そうなんですよ。栄養が不足した状態でリハビリテーションを行うと、必要なエネルギーは患者さん自身の体を消耗して補うことになりますからね。リハビリテーションは全速力で走るようなトレーニングではありませんが、安静時と比較するとかなり多くのエネルギーを消費していることがわかっています。ですので、手術や心臓病そのものにより低下した筋肉や体力を再獲得するためには、消耗が優位にならないようリハビリテーションに見合った栄養補給を同時に行うことが欠かせません。ですから、私たち管理栄養士はどんなリハビリテーションを行っているのか、理学療法士はどのくらい栄養補給できているのか、という意識をお互いに持たなければいけませんよね。
リハ:そうですね。当センターの場合は、職種間の垣根が低いという強みがありますから、お互いに情報共有できるよう今後も協力していきましょう。
本日はありがとうございました!

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター ハートセンター

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