「あなたの心臓をチームで守ります」

「心臓を守る」ハートチームが掲げるそう簡単なことではないこの言葉を患者さんへの確かなものとするために、東京ベイの臨床工学技士とICU看護師たちが普段からどのようなコミュニケーションをもって患者さんへ届けているのかをお伝えします。

東京ベイでハートチームが関わる疾患の治療、手術の場合まずお世話になるのがICUと呼ばれるエリアです。ここでは臨床工学技士と看護師が患者さんにかかわるあらゆる治療やケアを行っています。

臨床工学技士が医師の指示のもと管理するものに
・持続的腎代替療法(Continuous Renal Replacement Therapy,CRRT)
・大動脈バルーンパンピング(Intra Aortic Balloon Pumping,IABP)
・経皮的心肺補助装置(Percutaneous cardiopulmonary support,PCPS)

など、なんとも眠たくなりそうな長い名前の機械や治療法があります。
これらは構造が非常に複雑で操作に高度な知識を必要し、かつ命をつなぐシステムです。臨床工学技士はその操作に習熟し安全に操作を行うことが可能ですが、操作のみでは治療は完遂どころかスタートすることもままなりません。そのためには常に患者さんに寄り添い細やかな気づきや24時間患者さんの看護にあたり詳細な状態の把握を行っている看護師さんたちとのコミュニケーションが欠かせません。

それではそんな臨床工学技士と看護師のICUでのやりとりをのぞいてみましょう。

CRRT編

CRRTとは術後合併症などで一時的に腎臓の働きが低下してしまった場合に、体の中の余剰な水分量や電解質(ナトリウムやカリウムなど)を調整しながら腎臓の働きを助けるのと同時に回復を望むものです。一方、重症度の高い患者さんに対しては急激に不純物や水分などを除去してしまうと血液の濃度や循環量が変化しすぎてしまう可能性があります。そのような患者さんの場合には、24時間以上の時間をかけてゆっくりと施行していきます。

これから始まる会話は、どうやら術後急激に腎機能が低下してきてしまった患者さんに対してCRRTを用いた治療を開始するまさに直前の会話です。どんな情報のやり取りがあるのか見てみましょう。

ME:臨床工学技士
Ns:看護師

(ME)「今からオーバーナイト(24時間休み無し)でCRRTをはじめます。患者さんに危険行動などはありそうですか」
(Ns)「術後せん妄で体動が多いですね」
(ME)「なるほど、CRRTをはじめるにあたって鎮静を少し深めにできるか担当医と相談してきます。あと、血圧が低めなのでバックアップにカテコラミン(昇圧剤)は使用できますか」
(Ns)「担当医から低血圧時はカテコラミン使用の指示がありますので可能です。必要な場合は相談してくださいね。」
(ME)「わかりました。」

IABP編

IABPとは心筋梗塞などで心臓を栄養する血管である冠動脈に十分な血液が供給されにくくなってしまったときに使用する機器です。具体的には、心臓に近い大動脈という太い血管に風船(バルーン)を大動脈内に留置して、心臓の収縮と拡張にあわせて膨らませたりしぼませたりします。そうすることで冠動脈への血流や心臓のポンプとしての働きを手助けしてあげることができます。
これからの会話は、カテーテル室での治療後にIABPを留置された患者さんが治療から帰ってきた直後でのやりとりの場面です。

(ME)「緊急カテーテル治療後で心原性ショックのためにIABP挿入の患者さんです。挿入部が少し出血しているので定期的にチェックをお願いしますね。」
(Ns)「わかりました。あ、動脈血圧ラインがまだ確保されていないのでベッドサイドモニタへIABPからの血圧を表示させることはできますか?」
(ME)「もちろんできますよ。配線しておきますね。」
(Ns)「ありがとう。あと時々機械が一瞬止まるようなんだけど何か異常かな。」
(ME)「フルオートモードで動いているからなんです。これだと一定間隔でタイミングを取り直すために数秒止まることが必ず起こります。故障などではないので心配いらないですよ。」
(Ns)「そうだったんですね。ありがとう。」

PCPS編

PCPSとはさきほどのIABPと同じく循環を助けてくれる機器のひとつで、心臓と肺の両方の機能を補助することができるものです。心臓手術で使う人工心肺装置をシンプルにしたもので、緊急時に用いることが多く、手術室以外の場所でも体外循環を開始することができます。ですので見た目にも仰々しくまさに重症といった感じを受けることでしょう。PCPSを導入することで、病気によって疲れてダメージを負った心臓と肺を休ませてあげて回復を待ち、治療を継続するための機械です。
これからの会話は、どうやら心肺停止という緊急事態に対して、PCPS導入となり一命をとりとめた患者さんのようですが、看護師がPCPS管理に関して疑問点があるようです。MEはどのように考えて看護師の疑問解決に結び付けるのでしょうか、見てみましょう。

(Ns)「心肺停止に対する緊急蘇生のためPCPS導入となった患者さんについて相談していいですか?」
(ME)「ええ。もちろんです、どうしました?」
(Ns)「PCPSの回転数は一緒なんですけど流量が確保できなくなってきてるんですが、なぜでしょうか?」
(ME)「そうですね、おそらく急性期で血管内のボリュームが減ってうまく脱血できていないんだと思います。まず細胞外液を血管内に投与してみてはどうでしょうか。」
(Ns)「なるほど。ではまず細胞外液をいれてみてはどうか担当医と相談します。」
(ME)「お願いします。」
(Ns)「もう一つ相談していいですか?脱血管の挿入されている側の足の末端色が悪いんだけどなぜでしょうか?」
(ME)「脱血管挿入による合併症で下肢の虚血がおきているかもしれませんね。末端方向に血流を確保するためのシースを挿入して虚血を改善させましょう。」
(Ns)「末端方向に血液の流れを新しく作ってあげるわけですね。ありがとうございます。」

このように臨床工学技士は看護師らとコミュニケーションをとり患者さんの情報共有を怠らないようにしています。集中治療室、特にハートチームが遭遇する重症患者さんの場合はより専門的で高度な医療機器の治療効果が必要になる場合も少なくありません。そんな時、我々臨床工学技士が24時間365日必ず院内に常駐していることで不意のトラブルやアクシデントにも柔軟に対処できる看護師をはじめとしたハートチームメンバーとのコミュニケーションにより治療効果を最大限高める一つの要因になっていると考えます。
さらに、我々、臨床工学技士は治療機器についての知識や技術を駆使して治療をサポートしていきます。そして、治療方針やその時の状況を熟知しているICU看護師と連携し、お互いに問題点や疑問点を解決していきながら協力していくことによってより治療効果を発揮できると考えています。

あなたの心臓をチームで守るために我々はいつでも東京ベイにいます。

ハートチームシンフォニー:臨床工学技士×ICU看護師編

ICUに入室されている患者さんの多くは、一般の病棟とは異なり心臓をはじめとする諸臓器を助ける機器や点滴をつけています。医療技術の進歩により多臓器をサポートする手段が増えてきた一方、機器操作やモニタリング、ひいては情報量がより増えることもあるため、多職種での情報共有が重要となってくると思われます。ICUにおける問題点の共有や解決に向けた相談は医師だけに限らず、ICU看護師や臨床工学技士も行っており活躍しています。当院ハートチームでは集中治療においてもチーム力を発揮し、プロフェッショナリズムを追求していきます。

ハートチームWEB担当 石川凌馬 (リハビリテーション室 理学療法士) 

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