大動脈弁狭窄症患者さんが安心して受けられるTAVI術前CT検査~ハートチームにおける診療放射線技師の役割~

私たちは東京ベイ・浦安市川医療センターで働いている診療放射線技師です。当センターは2015年に経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI/タビ)の実施施設に認定されました。TAVI手術前の治療計画には、CTによる計測および評価が重要な役割をはたします。今回、私たち診療放射線技師がTAVI手術前CTについて取り組んでいることを紹介させていただきます。

東京ベイ・浦安市川医療センターのCT装置

CTはX線を出す管球とそれを受け取る検出器が身体のまわりを回転し断面画像を撮影する装置です。当センターには検出器が320列並んだCTが導入されており、通常のCTに比べ撮影時間が非常に短いことが特徴です。また、このCT装置には被曝低減技術が搭載されており、少ない放射線量でも高画質な撮影が可能です。私達はこの性能を十分に生かした患者さんに優しい検査を行っています。
※検査の実施は医師の判断が必要です。


図:TAVI手術前CT撮影に使用するCT装置

TAVI手術前CT撮影の工夫

TAVI手術前の治療計画には心臓(大動脈弁)の評価と大動脈(胸部~脚)の評価が必要です。心臓(大動脈弁)のCT撮影は、大動脈弁の石灰化の状態やサイズを正確に把握するために行います。心臓の拍動による画像のブレを抑えるため心臓の拍動とCT装置を同期させながら撮影する必要があります。大動脈のCT撮影では血管の詳細な形状・蛇行や狭窄の有無等、カテーテルが脚から大動脈を通って心臓の大動脈弁まで安全に到達できるかを見極めるために行います。この2つの部位の評価は別々に行われることが多く通常は撮影を2回受けることになりますが、当センターのCT装置ではこの2つの評価を1回の撮影で行うことが可能です。


図:撮影風景

ヨード性造影剤の減量

TAVI手術前のCT検査で、心臓(大動脈弁)や大動脈の状態を調べるためには、腕の静脈からヨード性造影剤という薬剤を注射して撮影する必要があります。TAVI手術適応の大動脈弁狭窄症患者さんはご高齢で、腎臓機能が低下している方がいらっしゃいます。ヨード性造影剤は多く使用すると腎臓機能に悪い影響を及ぼす可能性があり、なるべく少量での検査が求められます。(1) 私たちは撮影方法・撮影条件・ヨード性造影剤の注入方法を工夫してその使用量を減らすことができています。


図:TAVI手術前CT撮影方法

質の高い計測

TAVI手術前CT撮影後はハートチームの医師が判定するために、私たち診療放射線技師が解析・計測し結果を提出しています。解析結果はその後の治療方針に大きく関わるため、私たちは日々検討を重ね技術を研き慎重な解析を行っております。また、TAVI手術前CTを撮影することで大動脈弁以外の病変が見つかることがありますが、撮影画像は当センターの放射線科医も読影を行い、私たちもそれらの画像をわかりやすく作成し医師に伝えることを行っておりますのでご安心ください。


図:計測風景

このように私たち診療放射線技師は患者さんにとって優しく質の高い検査を行うことでTAVIを安心・安全に受けていただくためのサポートをしています。

参考文献
(1) 腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター ハートセンター

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