心臓手術の不安を解消!〜手術前から社会復帰までを診療看護師がご説明します〜

心臓血管外科外来の扉を開ける時、患者さんはきっと不安な気持ちいっぱいでいることと思います。
「本当に心臓手術を受けなければいけないの?」
「手術ってやっぱり痛いよね?」
「心臓血管外科の先生は怖いのかしら?」

なんせ心臓の手術といったら誰にとっても一大事ですから当然です。そこで本日は、心臓手術を受けられる皆さまの不安を少しでも解消できるよう、周術期(手術が決定してから手術を終えて退院し、社会復帰するまでの一連の期間のこと)の治療の流れについて説明します。

手術前外来

近隣クリニックのかかりつけ医の先生や、他の病院の循環器内科の先生から紹介いただくと、術前外来ではまず診療部長をはじめとする当院の心臓血管外科医が診察を行います。心臓手術が必要かもしれない、もしくは必要と判断された場合、疾患の説明や考えうる手術方法について説明します。皆さまの予想に反し、穏やかな外科医ばかりですのでご安心ください。

その後、心臓血管外科専任の診療看護師(通称NP:医師指示のもと一定の医行為を行うことができる看護師)の外来で、より詳細な問診や身体診察を行います。また手術のリスク評価に必要な検査や入院までのスケジューリング、説明を合わせて行います。緊張して思わず外科医に聞けなかったこと、聞きにくかったことなど、ここでは丁寧にお答えします。

術前検査から手術方法決定まで

心臓手術がある程度見込まれると、リスク評価のための検査が始まります。心臓手術と一口に言っても、患者さん一人一人の状態は異なります。頭部MRIや肺機能検査、心臓カテーテル検査など、より安全に手術に臨めるよう全身をくまなく調べます。

一連の検査が終了すると、診察内容も踏まえて手術の適否や方法を検討します。検討は、心臓血管外科だけでなく、循環器内科、麻酔科、看護師、臨床工学技士などハートチームで行います。近年はステントグラフト術やカテーテル治療といった新たな術式の普及や超高齢者に対する適応拡大もあり、これまで以上に慎重な検討が必要となりました。ときには「手術をしない」という選択肢も含めた最適な方針を丁寧に導き出します。

手術の適否や具体的方法が決定すると、外科医から改めて説明を行います。疑問点を残さず説明を受けていただければと思います。最近ではインターネット等にも心臓手術に関する情報が多く出ています。事前に予習をしてから外科医に質問するのも良いですね。

入院そして手術

手術2日前に入院します。経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を受けられる方はNPが、開心術やステントグラフト術を受けられる方は心臓血管外科医が、入院中の主な担当となります。入院後はリハビリチームによる身体機能チェック、麻酔科診察、手術室看護師の術前訪問、病棟看護師との手術準備など、入院したら少しゆっくり休もうと思っている方も多いと思いますが、実は患者さんも結構忙しいのです。スタッフの顔や名前を覚えるのもなかなか一苦労です。

いよいよ手術当日がやってきました。手術時間までに着替えや点滴などを終え、ご家族と面会を済ませたら手術室に向かいます。手術帽や術衣に包まれたスタッフ達に囲まれて緊張は最高潮だと思いますが、マスクの下はみんな笑顔ですよ。手術室に入るとスタッフから何度も名前や生年月日を確認されます。これも安全な手術の遂行に必要なことですのでご協力ください。

手術台の上に乗り、麻酔科医の「○○さーん、わかりますかー」の声がしだいに遠く、、、
それでは手術開始です。

麻酔からの覚醒とICU(集中治療室)

「○○さーん、手術終わりましたよー」という看護師の声や、ピッピッピッというモニターの音で目覚めるでしょう。ぼんやりと目を覚ます方もいれば、パっと目覚める方もおられます。手術を受けられた患者さんにお聞きすると、数時間経っているにも関わらず「あっという間に起こされた」という感覚を持たれた方もいました。いずれにしても目覚めてからすぐには声を出すことはできません。この時点で患者さんには人工呼吸器が装着されているからです。しっかりと麻酔から覚め、ご自分の呼吸が十分に整ったところで人工呼吸器の管を外します。

ICUでは集中治療専門の医師や看護師らがケアにあたります。ダイナミックに変化する術後の血行動態をきめ細やかに観察し、異常の早期発見と対処に努めます。また手術翌日からリハビリを開始します。心臓手術というと1ヶ月くらいは寝たきりでいることを想像される患者さんもおられますが、早期に離床を行い、肺炎などの術後合併症を予防することが最も重要です。

残念ながら現在は、感染対策として面会に制約がありますが、以前は手術直後にICUで面会を行なっていました。

術後一般病棟から退院まで

術後の経過が安定していれば、手術翌日には一般病棟に戻ります。ここでは術後の不整脈予防や手術によって変化した体液量(体重)の正常化など、日々細かな薬剤調整が行われます。新たに心臓を保護する薬剤も追加され、術前と処方内容が変わりますので、わからないことは薬剤師にお尋ねください。特に血液をサラサラにする抗凝固薬ないしは抗血小板薬が始まる方も多くいますので、出血に注意が必要となります。

また退院に向けリハビリが加速します。この頃のリハビリスタッフは厳しくも頼もしいバディです。当院は胸骨を切らない小切開手術を得意としていますが、痛みがゼロと言ったら嘘になりますので、鎮痛薬をきちんと使用しながら動ける範囲を拡大していきましょう。階段昇降やシャワーがご自身で浴びられる程度に動くことができれば、もう退院は目の前です。

退院間近になると看護師や栄養士が生活指導を行います。創部や体調の管理方法、注意点などを説明しますので退院後の生活の参考にしてください。術式にもよりますが、当院では概ね術後5〜7日での退院を目指しています。

社会復帰とフォローアップ

退院後は定期的に外来でフォローアップします。創治癒や検査結果の確認のほか、仕事復帰や運転再開のタイミングなど日常生活にスムーズに戻るための指導も合わせて行います。
また、かかりつけ医やご紹介いただいた病院とも密に連携を図り、術後の経過を地域ぐるみでサポートしていきます。術後1ヶ月くらいで手術前の症状や生活状況との変化を実感できるでしょう。

いかがでしたか?
周術期の経過は想像できたでしょうか?
東京ベイハートチームは、チーム一丸となって最適な治療の提案と安心・安全な心臓手術の提供に努めています。一緒に心臓手術を乗り越えていきましょう。

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