心原性ショックにチームで挑む!~補助循環用ポンプカテーテル『IMPELLA』を用いた心原性ショック治療~

医師 浅野 和宏
臨床工学室 初鹿野 夏気

心原性ショックとは

心原性ショックとは心臓の構造あるいは機能の障害により、心臓特有の血液ポンプとしての機能が低下し、全身の臓器に必要な血液が供給されないことでさまざまな症状が生じる状態をいいます。具体的には頭への血流が途絶えれば失神や脳梗塞の原因となったり、腸への血流が途絶えれば腸管の壊死を引き起こしたりと、速やかに介入を行わなければ重篤な臓器不全を生じて死に至る可能性があり、一刻の猶予もありません。

代表的疾患

心原性ショックの原因となる心臓疾患は多岐にわたりますが、本邦では急性心筋梗塞が51.0%と半数を占め、致死性不整脈が16.4%、急性大動脈解離などの大動脈疾患が14.9%と続きます1。近年ではCOVID-19に関連してメディアでも取り上げられるようになった急性心筋炎や、エコノミークラス症候群として有名な急性肺塞栓症なども心原性ショックの原因となる代表的疾患です。

治療

心原性ショックの治療は全身の臓器への血流を保ちながら、ポンプ機能の低下の原因となっている心臓の原疾患に介入を行うのが原則です。とはいえ、原疾患の治療も大抵は時間を要するものであり、その間、臓器への血流を薬剤のみで確保することは容易ではありません。

ここで登場するのが表題の補助循環用ポンプカテーテル『IMPELLA (インペラ)』です。IMPELLAは心臓の左心室内に留置して使用するデバイスで、カテーテルの先端から吸入した血液をカテーテル内部のインペラ(羽根車)の力を使用して大動脈へと組みだし、全身の臓器への血流(=循環)をサポートする目的で使用します。

また循環をサポートする一方で、急性期の心臓への負担を減らすことそのものが予後の改善につながるのではないかと遠隔期の効果も期待されています。IMPELLAの最大のメリットは両足の付け根にある大腿動脈や肩にある鎖骨下動脈など、体表面に近い血管から皮膚を経由して簡便かつ迅速に導入することが可能なことであり、予断を許さない心原性ショックの患者さんでも、速やかにデバイスを導入することで循環を保ち、原疾患の治療にあたることができます。

IMPELLAは本邦では2016年9月に承認された比較的新しいデバイスでありながら、現在は全国223施設で使用が可能となっており2、全国の医療機関で導入が進んでいます。当院では2018年9月より使用を開始し、これまで述べ42件の重症心原性ショックの患者さんに使用しました。

▲上記3つの画像は日本ABIOMED社からの提供

当院での取り組み

IMPELLAは高度な専門技術と知識を必要とする治療法であり、医師一人で行う治療ではありません。当院では心不全治療に精通した循環器内科医、心臓血管外科医、集中治療室医師、臨床工学技士、診療放射線技師、ICU看護師よりなる多職種ハートチームで運用を行っており、定期的に院内講習会を開き、技術の確認や知識のアップデートを図っています。

原疾患の治療、IMPELLAの導入や離脱、時にはIMPELLAと膜型人工肺『ECMO(エクモ)』を組み合わせた『ECPELLA(エクペラ)』治療へのアップグレードなど、予断を許さない患者さんに最適な医療を提供できるよう日々チームで議論を重ね、少しでも多くの重症心原性ショックの患者さんを救命できるようチーム一丸となって診療にあたっています。

臨床工学技士とIMPELLA

血管造影室には、IMPELLAをはじめECMO、大動脈内バルーンポンピング『IABP』等の補助循環装置がスタンバイされており、補助循環を使用する宣言がされた際には速やかに補助循環を導入できるように準備しています。

IMPELLAが必要になった際には、カテーテル班に加え人工心肺班も協力し迅速で安全な導入を行います。IMPELLA導入時には臨床工学技士は主に術野外でIMPELLAの操作や導入の手引きを行っています。導入後も医師がカテーテルの手技に集中できるように機器を操作し駆動状況を報告していきます。

患者さんがカテーテル室から集中治療室に入室した後は、機器が正常に稼働しているか患者さんにとって最善の状況になっているかを機器側の目線からの状況を報告し管理しています。補助循環装置から患者さんが離脱した後は、装置の保守管理を行います。装置に破損は無いか、装置のシステムに異常はないか等の終業点検を行い次の出番に備えて常に使える状況を整えています。

参考:当院ME関連記事
手術室業務:https://tokyobay-mc.jp/medical_engineering_ope/
TAVI治療にチームで挑む〜磨き上げた技術とひるまない心〜:https://tokyobay-mc.jp/heartcenter_blog/web01_41/

  1. Ueki Y, et al. Characteristics and Predictors of Mortality in Patients With Cardiovascular Shock in Japan - Results From the Japanese Circulation Society Cardiovascular Shock Registry. Circ J. 2016;80(4):852-9.
  2. 2022年7月時点での補助人工心臓治療関連学会協議会インペラ部会の公表データに基づく.
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