透析TAVIに安心を〜ハイリスク治療の安全を担保するハートチームの「踏んだ場数とくぐった修羅場」〜

ハートチームの力を集結して透析患者さんにも安心のTAVIを届けます!

循環器内科 野口 将彦

こんにちは。循環器内科の野口です。
今回は当センターで数多く行われているTAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)という手術をご紹介したいと思います。

TAVI(Transcatheter Aortic Valve Implantation)とは、心臓の出口である大動脈弁が狭窄することで、全身にうまく血液が送り出すことができなくなる大動脈弁狭窄症に対する治療法の一つです。従来は開胸による心臓手術が基本でしたが、高齢で体力が低下していたり、他の病気を持っていて手術が難しい方もいらっしゃいます。そのような患者さんに対して、患者さんの体への負担が小さいカテーテルを用いた治療であるTAVIが開始され、東京ベイでも2016年からTAVIによる治療を行ってきました。2021年10月末までの時点で508人の方に治療を行っており、日本でも有数の症例数を誇る施設となっております。

このように患者さんの体への負担が小さい治療であるTAVIですが、これまで透析患者に対しては保険適用が認められていませんでした。しかし、2021年2月より透析患者さんに対するTAVIが保険適用となり、全国の限られた施設でのみ行えることになりました。東京ベイはその施設の一つとして認定され、2月より透析患者さんに対するTAVI治療を開始し、10月末までに29例の透析患者さんに対するTAVIを行いました。

透析患者さんは全国に約34万人(2019年末時点:日本透析医学会発表)おられます。透析患者さんは、一般的に動脈硬化を引き起こしやすい状態にあり、大動脈弁狭窄症を患う方が一定数おられます。これまでは開胸による大動脈弁置換術しか根治治療がなく、高い手術リスクのため、手術を躊躇する患者さんも多くおられました。しかし、今回の適応拡大によって、より体への負担の小さいカテーテル治療が透析患者さんの治療の選択肢として加わり、透析患者さんにとっては朗報と考えます。

ただし、TAVIは万能ではありません。外科的手術と同様にTAVIであっても、透析症例は非透析症例よりも成績が劣ることが知られています。さらに透析TAVI症例における特有の合併症や生体弁の早期劣化の報告もあり、患者さんによってはTAVIによる治療の恩恵を受けられない可能性もあります。そのため、透析患者さんに対するTAVI 適応の決定には、年齢や併存する疾患などを考慮した熟練したハートチームによる決定が重要です。

東京ベイでは、心臓外科・循環器内科・麻酔科・集中治療科・放射線技師・看護師・理学療法士のみならず、透析に関わる腎臓内科スタッフ、かかりつけの透析クリニックとの連携を行う地域連携課・退院支援課・ソーシャルワーカーなどの多職種スタッフからなるハートチームがあり、強力な連携が取れております。

これからも、私たちは地域の患者さんや先生方の信頼にこたえ続けるために、地域の透析治療に携わる医療者のみなさまと連携し、透析患者さんに適切で安全な治療を提供できるよう、ハートチームとして更なる高みを目指して邁進いたします。どうぞ、安心して東京ベイでの心臓病治療を受けられてください。

チーム力が問われる難しい症例ほど、治療の鍵を握るのはコメディカル

臨床工学室 高畠 尚平

こんにちは、臨床工学技士の高畠です。
ここからはTAVIに対する臨床工学技士の関わりについてお話します。

我々臨床工学技士は今回のテーマであるTAVI治療の際、主にデバイスやカテーテル等の物品出しは勿論のこと、術野に入りTAVI治療の要となる人工弁を大動脈弁へ留置するためのデバイスの準備、治療中に患者さんが急変した際のECMOの対応など、様々な場面で関わっています。

まず、TAVIを行うためには穿刺を行うためのシース、血管に通すためのワイヤー、造影をするためのカテーテル等、多くのデバイスが必要になります。そこで臨床工学技士は医師の手技が滞ることのないよう治療デバイスの準備を行い、素早く正確な治療を遂行できるようにサポートをしています。

また、今年度導入となった透析患者さんへのTAVIは通常よりもリスクが高いとされており、患者さんが急変した際の迅速な対応も臨床工学技士にとって、より重要な仕事となっています。
そのような時、近年COVID-19に対して使用されていることで話題になっているECMOが使用されることがあり、臨床工学技士はECMOの準備及び導入の重要な要となっています。当センターのECMO件数は年間30~40件と全国的にも数多く経験しており、導入時にはECMOの経験が豊富な医師、看護師、放射線技師と緊密な連携をとることで急変時にも柔軟かつ迅速な対応することができています。

また、臨床工学技士はTAVIのみではなく透析業務の面でも関わっており、TAVIの術前及び術後の患者さんの声に直接耳を傾けることができます。術前、術後、その時々の不安に寄り添ってお話ができ、対応することが可能です。

その他にもTAVI術前という状態の患者さんの透析は通常の透析と比べてリスクが高いです。それを踏まえた安全な透析を実施することができるというのもTAVIを経験しており術前から術中、術後全ての過程で関わることのできる臨床工学技士ならではの強みだと思います。
そういった強みを生かすことができているのも心臓血管外科、循環器内科、腎臓内科などが科を越えた領域でしっかりとした連携が取れているためです。

東京ベイでは今後も我々臨床工学技士を含めた様々な職種との連携、技術力の向上を怠らず安全安心な治療を提供できるよう努力してまいります。

メニュー