心エコーが支える心臓弁膜症の専門治療〜クオリティを高め続ける飽くなき追求心〜

妥協なき心エコー図検査〜最適なタイミングで最善の治療を行うために〜

循環器内科 加藤 奈穂子

心エコー図検査は、心臓の動きをリアルタイムに観察することができるとても便利な検査で、ほとんどすべての心疾患で行われます。弁膜疾患においても、心エコーは弁膜疾患の機序、重症度の評価に最も重要な検査です。当センターでは多くの弁膜症患者さんの治療を取り扱っていますが、弁膜症が見つかったら皆さんに治療を勧めるわけではありません。人工弁置換術を行えば人工弁劣化や感染性心内膜炎のリスクも伴いますし、手術の合併症リスクもありますので、治療が早ければいいわけではありません。

逆に治療が遅れると、左室肥大や左室拡大といった変化が心臓に起こり、心不全を起こすようになります。私たち心エコー医は患者さん一人一人の弁膜症の状態に合わせて、最適なタイミングで最善の治療ができるように努めています。弁膜疾患の至適手術時期はガイドラインで定められており、一般に症状のある高度の弁膜症は治療適応です。

まず当センターのよく経験を積んだ心エコー技師が経胸壁心エコー図を行い、弁膜症の有無、重症度を評価します。ガイドラインで示されている基準は多くの患者さんに当てはまりますが、中には中等度なのに症状があったり、高度だけど症状がないなど、ガイドラインに合わない症例が存在します。

特に高齢の患者さんでは活動性が低く症状を自覚しないことや、無意識に活動を制限して症状を訴えないことがあります。当センターエコー室ではそのような症例に対して運動または薬剤負荷心エコー図検査を追加し、重症度の再評価や症状を確認し、弁膜症の心臓への影響を評価しています。

図 運動負荷心エコー図検査の実際

弁膜症の機序や形態の評価は治療法を決めるための重要な情報です。経胸壁心エコー図検査でもある程度の評価が可能です。手術適応があると判断し、さらに詳細な評価が必要な場合は経食道心エコー図検査を追加します。経食道心エコー図検査は、胃カメラのような検査で経胸壁心エコー図よりも侵襲的ですが、弁や心臓の構造をより近くで詳細に観察することができます。

例えば、大動脈弁狭窄症の主な原因は加齢に伴う弁の石灰化ですが、その他に比較的若い方でも生まれつき大動脈弁が1尖弁、2尖弁(正常は3尖)であることが原因となり発症します。このような場合はカテーテル的大動脈弁置換術よりも外科的大動脈弁置換術の方が治療として適している場合があります。また僧帽弁閉鎖不全症では、僧帽弁のどこに腱索断裂などの構造的異常があるのか診断することができます。術前に、このような情報があると心臓外科医が速やかに安全に手術をおこなうことに役立ちます。

弁膜疾患の重症度、機序の評価は心エコー図検査が重要な役割を担っています。弁膜疾患の評価には十分な訓練と経験が必要です。当センターの経胸壁心エコー図検査は熟練した素晴らしい技術をもった心エコー技師が記録しています。心エコー専門医師は十分な知識をもって読影し、必要な検査があれば追加し診断します。

運動負荷心エコー図検査や経食道心エコー図検査においては、患者さんが負担なく安全に検査を受けられるよう心がけています。患者さんにとってベストな治療が提供できるよう、私たち医師、心エコー技師は日夜ディスカッションを繰り返し、一人の患者さんをハートチーム全員で診るという意識で診療にあたっています。弁膜症でお困りの患者さんはぜひご相談ください。

精度を高めた心エコーで、患者さん一人一人の最適な治療につなげたい

生理検査室 佐藤 志織

【心エコー検査では何を見ているのか?】
弁膜症を診断する上で最初に行う検査は「経胸壁心エコー図検査」です。心エコー検査ではリアルタイムに、弁の動き、心臓の大きさや機能が悪くなっていないかなどを評価することができます。当センターでは臨床検査技師が経胸壁心エコー図検査を行い、胸壁からプローベという機械を当て15~20分ほど心臓を観察します。

正常な心臓であれば弁の動きは良く、機能が正常であれば異常な血流は認められません。しかしながら、加齢性変化などの影響で弁が硬くなると弁の開きが悪くなったり、様々な要因で弁が上手く閉じられないと血液が逆流してしまいます。これがいわゆる弁膜症です。例えば、大動脈弁狭窄症があると大動脈弁の可動性は著しく低下して異常な血流を認め、弁の開口面積が狭くなります。弁が開きにくくなったことで心臓に負担がかり機能も悪くなってしまうことがあります。

また、僧帽弁閉鎖不全症があると、通常では見られない左室から左房への逆流を認めます。この場合、弁自体に異常がある場合と左室や左房に異常がある場合があります。僧帽弁に異常があるのか、心臓自体に異常があるのかで治療方針が大きく異なるため、何が原因なのかをエコーで追究します。異常を認めたら原因を探る画像に加え、弁膜症の重症度を評価するための画像を記録します。

さらに、高度の弁膜症では心臓の機能に影響を及ぼすことがあるため、検査終了後に弁膜症と心機能評価の解析を行い、微細な変化があればレポートに記載します。心臓のことを理解していなければ心臓の異常に気付くことはできず、異常所見を見逃してしまうこともあります。

当センターでは弁膜症に対する様々な治療を数多く行っていることもあり、私たち検査技師は心臓が正常な方から高度な弁膜症、その他の疾患を持つ方など非常に多くの方々の検査を日々行っているため、豊富な症例経験と実績があります。そのため、このような異常所見にいち早く気付くことができます。また、治療前だけではなく治療後の患者さんの定期検査も行っており、手術した後の弁や心臓の機能も検査しています。

図 経胸壁心エコー図検査の実際

【弁膜症治療に対する臨床検査技師と医師の連携】
検査技師が作成したレポートは全て心エコー専門の医師が最終的に判読し診断をします。検査技師は診断をすることはできませんが、弁膜症が重度で心臓の機能も高度に悪くなってしまっている場合など医師への報告が必要と判断したときには迅速に心エコー医や担当医に報告します。また、重症度の評価など判断に悩んだ場合には心エコー医に相談してレポートを作成します。

更に心エコー検査には検査技師だけで行う「経胸壁心エコー」の他に、当センターではエコー医と検査技師で行う「運動負荷心エコー」と「経食道心エコー」があります。(詳細は心エコー図 | 東京ベイ・浦安市川医療センター (tokyobay-mc.jp)参照)

当センターではエコー医と検査技師が接する機会が多く、カンファレンスも定期的に行われ、情報を共有しながら数多くの検査を行っています。私たちが行った検査結果を見ながら、弁膜症の治療適応の有無や、適応があった場合には薬か手術か、どのような方法で治療をするのが最善かなどを心臓外科医や循環器内科医などを含むハートチームで協議して治療方針が決定します。

このように、心エコーは弁膜症の治療の有無を判断するための重要な検査です。レポートに「弁膜症は重度です」と記載しても文章や数字だけではなく、説得力のある画像を残さなければ信頼性のあるデータを診療側に提供することはできません。これからも丁寧に正確に質の高い検査を行い、信頼できるデータを診療に提供できるよう日々努めていきます。

【コロナウィルス感染症の流行下での対策】
コロナウィルス感染症の流行下で、私たちは感染予防に配慮して検査を行っています。特に、運動負荷心エコー検査と経食道心エコー検査はしっかりした対策をしないと飛沫が拡散する可能性があります。検査前には問診を行い、症状や発熱の有無などを確認しています。感染の可能性がある患者さんには、検査を延期させていただくことがあります。

さらに運動負荷心エコー検査では、運動時にマスクを装着することをお願いしています。このため、運動時に少し息苦しく感じるかもしれません。経食道心エコー検査でも飛沫の拡散を防ぐための工夫を行っています。スタッフ一同、自身の感染予防を徹底しており、ガウンやフェイスシールド、マスクを装着し検査を行っています。検査間隔を空けて検査室の換気と清掃を行い、患者さんが安全に検査を受けられるよう努めています。

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