<不整脈に対するカテーテルアブレーション治療とは>
循環器内科 牧原 優
胸がドキドキするような動悸の症状を認めた時に「不整脈がある」と言うことがありますが、”不整脈”とは「脈が不規則になること」を意味します。”脈”というのは、心臓が血液を体に送り出すことによって生じる拍動です。「脈が不規則になる」ということは「心臓の動きが不規則になる」ことと同じことなのです。
心臓の動きが不規則になるのはなぜか?これを知るには心臓がどのようにして動いているのかを知る必要がありますが、答えは簡単です。心臓は”電気”の力で動いています。もう少し具体的に言うと、心臓の中には”発電機”があり、発電された電気が”決められた順序”で流れることで心臓は動いているのです。

洞結節 = 右心房にある本来の発電機
洞結節でおきた電気は、心房に広がった後に
房室結節→ヒス束→右脚・左脚を通じて心室に広がります。
心臓の中の電気は”決められた順序”で流れることが大切です。なぜなら”決められた順序”でなければ、心臓の打ち方がおかしくなるからです。このように心臓の中で電気の流れに異常が起きた結果、心臓の打ち方が乱れ、脈が不規則になることを”不整脈”と呼んでいます。つまり不整脈とは”心臓の中の電気の流れの異常がおこる”病気です。
不整脈には脈が速くなる不整脈と、遅くなる不整脈があります。このうち脈が速くなる不整脈の治療にはもちろん薬による薬物療法もありますが、最近では電気の流れ自体を直して不整脈を根治させる治療、治療用の管(カテーテル)を用いたアブレーション治療がよく行われています。この治療では、様々な機械を使うことで異常な電気の流れの正体をつきとめ、カテーテルを用いて、異常な発電を起こしている部位や回路の一部を焼くことで異常な電気自体をなくしてしまいます。
不整脈に対するカテーテル治療では、実際にカテーテルを持っている医師のみでなく、工学技士や看護師がいなければ治療ができません。東京ベイでも医師、臨床工学技士、看護師がチームとなって不整脈のカテーテル治療に当たっています。

治療中は写真のように検査台の前には医師が立ってカテーテルを操作しておりますが、その後ろには臨床工学技士、看護師が複数で治療をサポートしています。臨床工学技士は心臓内に配置されているカテーテルからの情報を記録・解析したり、不整脈の回路を調べるために使用する機械を操作したりします。機械操作には知識や技術が必要であり、特に不整脈治療に関わる臨床工学技士はその高い専門性で治療の中核を担ってくれます。
また不整脈のカテーテル治療中は、患者さんの状態が安定していることが非常に大切です。看護師は医師が治療に集中している間も患者さん状態を常に確認し、治療が円滑に進むようにしてくれます。チームで治療を行うことで、東京ベイではカテーテル室への入室から退室まで患者さんに問題なく治療を受けて頂く医療を提供しております。

もちろん難しい不整脈回路の場合や、異常発電部位をみつけるのが難しい場合もありますが、不整脈が根治できることがアブレーションの魅力であり、皆様の症状がよくなることに我々が貢献できるように、ハートセンター一丸となって日々精進しております。
<~心臓アブレーションにおける臨床工学技士のかかわり~>
臨床工学技士 山本 達也
みなさんこんにちは、臨床工学技士の山本です。
不整脈治療の心臓アブレーションは、医師・看護師・診療放射線技師・臨床工学技士がチームで行っています。その中でも臨床工学技士が担う業務は多いため、今回私たちが治療中に行っていること・気を付けていることを紹介したいと思います。
心臓アブレーションは3Dマッピングシステムという機械を使用することが主流で、当センターではCARTO3(Johnson&Johnson社)を使用しており、操作を臨床工学技士が行っています。その際は治療に必要な心臓の形の作成・不整脈の起源の同定などを行っております。治療中は医師とのコミュニケーションがとても重要で、治療を円滑に進めるために必要なことはなるべく細かく伝えるように心掛けています。

その他にも、特殊な機械を用いて、どの不整脈かを特定する検査も担当しています。不整脈の種類もたくさんあり、検査で得られた心電図から不整脈の判断をする知識が必要となってきます。

治療を終えた患者さんから、「不整脈がなくなって、本当に楽になりました」「毎日の散歩が楽しみになりました」「これからいつでも旅行にいけるわ」などといった声を聞くと治療に携わり患者さんのお役に立てたことにやりがいを感じます。
心臓アブレーションの治療は日進月歩であり、患者さんにベストの治療を行うためには専門知識のアップデートが欠かせません。また、医師をはじめとした不整脈治療チーム全員で力を合わせて治療を行っていきたいと思います。