ペースメーカーとは?

ペースメーカーとは?

聞いたことありますか?
『ペースメーカー』という言葉。
“ヘルスメーター”ではないですよ。

「そう言えば、友人の○○さんが不整脈で、体に何か機械を入れられたと言っていたような・・・」、そんな記憶ありませんか?
そうです! たぶん、それが『ペースメーカー』です。

『ペースメーカー』とは一体何なのでしょうか・・・。

ペースメーカーが必要な方とは?

「不整脈」という病気を御存知でしょうか?
胸がドキドキしたり、あるいは脈が乱れたりする病気のことです。

心臓の打ち方が乱れると、拍動(鼓動)や脈が乱れます。
『不安』などの精神的なことから胸がドキドキしたりすることもありますが、ここでは心臓の病気としての『不整脈』を説明します。

実は『ペースメーカー』というものは、この「不整脈」の治療で使われる機械です。
では「不整脈」になれば何でもペースメーカーで治療することになるのでしょうか?

そうではありません。
「不整脈」には大きく分けると2種類あります。
“脈拍・心拍が速くなる不整脈”と“脈拍・心拍が遅くなる不整脈”です。
これを医学用語では、「頻脈性(ひんみゃくせい)不整脈」と 「徐脈性(じょみゃくせい)不整脈」と呼びます。

このうち、『ペースメーカー』が適応となるのは、基本的に「徐脈性不整脈」に対してです。
つまり、自分の心拍数が少ない(心臓の拍動が少ない)場合に、『ペースメーカー』での治療を検討することとなります。

簡単に言うと、
『ペースメーカー』とは人工的に心臓を動かすための機械で、心拍数が少ない人の心拍数を増やすことがその役割です。

心臓が動くしくみ

『ペースメーカー』が心臓を動かすしくみを知るには、まず私たちの心臓がどのように動いているかを知る必要があります。

心臓は全身に血液を送るポンプの役目をしていますが、このポンプは筋肉でできた袋です。
袋に血液を貯めた後に、筋肉が縮んで袋を小さくすることにより、貯めた血液を送り出します。
ちょうど風船に水を貯めて、口を離すと風船が縮んで水が飛び出すのに似たようなしくみで血液を送り出しています。
そんなポンプが2つ集まって一つの心臓が構成されています(1つのポンプは上下2つの部屋からできており、心臓の中には合計で4つの部屋があります)。

そして、実際に心臓の筋肉を縮ませている(=収縮させている)のは電気による命令です。電気(電気信号)に反応して筋肉が収縮することにより、心臓という器官は初めてポンプとして役に立つのです。

ではこの電気信号はどこからやってくるのでしょうか?
通常、この電気信号は心臓内で発生しています。発生した電気信号は心臓内の決まった回路を流れた後に消失していきます。

正常な電気信号は「右心房(うしんぼう)」にある「洞結節(どうけっせつ)」という発電機で発生します。
その電気刺激は左右の心房を収縮させた後に、心房(= 心臓の4つの部屋のうち上側2つ)と心室(= 心臓の4つの部屋のうち下側2つ)の間にある「房室結節(ぼうしつけっせつ)」という電気信号の中継点を介して心室に流れていき、心室を収縮させます。

心臓の4つの部屋のうちで特に大切なのは下側の2つ、つまり心室です。
心臓は心室が動いて初めて血液を体や肺におくることができます。
“心臓が動く”というのは、“心室が動く”ということです。
そのため心臓の電気信号も心室に伝わることが大切なことなのです。

徐脈性不整脈について

『ペースメーカー』の適応となる「徐脈性不整脈」にはいくつか種類があります。
代表的なものは「洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)」あるいは「房室(ぼうしつ)ブロック」という疾患です。

「徐脈性不整脈」はなぜ生じるのでしょうか?
その原因は心臓を収縮させるべき電気信号が送られてこないことです。

前述の“【心臓のしくみ】の項”でお話したように、心臓はもともと電気信号で動いている器官ですが、この電気信号の流れがどこかで滞ると心臓の活動が少なくなったり、止まったりします。
これが「徐脈性不整脈」です。

このうち「洞不全症候群」は「洞結節」の異常、「房室ブロック」は主に「房室結節」の異常となります。
つまり心臓の発電機である「洞結節」の故障で、心臓内で発電できなくなって徐脈になるのが「洞不全症候群」、発電はされているが途中の送電線である「房室結節」が切れて、電気信号が上手く伝わらなくなって徐脈になるのが房室ブロックと言えます。
いずれの場合も最終的には「心室」に電気信号が伝わらないことが問題となっています。

『ペースメーカー』は壊れた発電機の代わりに人工的に発電したり、切れた送電線の代わりに人工的に直接心臓に電気を流すことで心臓を動かし、徐脈を改善します。

ペースメーカーの適応

『ペースメーカー』は「徐脈性不整脈」に対して適応となりますが、心拍・脈拍が遅い方の全てに『ペースメーカー』を植込まなければならないかと言えばそうではありません。
基本的には徐脈とそれに伴う症状があることが条件となります。
症状には脳虚血に伴うふらつきや失神というものの他にも、心不全症状である労作時息切れや倦怠感(けんたいかん)、浮腫(ふしゅ)などがあります。

ペースメーカー植込みの実際

『ペースメーカー』植込みは局所麻酔で行い、一般的には利き手と反対側の前胸部の皮下に4~6cm程度の皮膚切開をして植込みます。
『ペースメーカー』植込みをされた方の前胸部を触れると、皮下に金属を触れますが、これが『ペースメーカー』の本体で、電池と制御回路からなります。

さらに体表からはわかりませんが、実は『ペースメーカー』の重要は部品にはこの本体部分に加えてリードと呼ばれる、本体内で起こした電気信号を心臓へ伝える電線からなっています。
リードは鎖骨下静脈とよばれる血管を介して心臓につながっており、多くの場合、先端はスクリューで心臓に固定されています。
リードの挿入・留置に際してはレントゲンで透視しながら、操作を行います。
リードの本数はもともとの疾患により異なりますが、1~2本留置されていることが一般的です。

ペースメーカー植込みの合併症

『ペースメーカー』植込みに際して重篤な合併症を生じることは稀ですが、1%程度で出血、感染、気胸(肺に穴が開いてしぼみます)、心穿孔(心臓に穴が開いて出血します)、リードの移動などが生じます。

ペースメーカー植込み後について

『ペースメーカー』の電池寿命は患者さんの状態によってことなりますが、5~10年程度です。
6か月毎に外来にてペースメーカーチェックを行いながら、電池が消耗すれば電池交換の手術が必要となります。

MRI検査について

現在使用されている『ペースメーカー』の多くはMRI対応となってきておりますが、いずれも「条件付き」となっております。
『ペースメーカー』そのものがMRI対応であることに加えて、検査施設が認可を受けていることがその条件となります。
MRI検査に際しては担当医師に必ずお問合せ下さい。

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