腎動脈狭窄症

腎臓の動脈が狭くなる病気を腎動脈狭窄症といいます。高血圧の原因を詳しく精査することで腎動脈狭窄症がわかる場合があります。また、腎動脈が狭くなり腎臓に十分に血液が流れなくなることで、腎臓の機能が低下していくこともあります。

1. 腎動脈狭窄症とは

腎動脈狭窄症とは腎臓の動脈が狭くなる病気のことをいいます。高血圧や腎臓の働きを悪くさせる慢性腎臓病だけでなく、狭心症、心不全といった重篤な病気の引き金にもなる病気です。
腎動脈が細くなる原因の90%以上は加齢に伴う動脈硬化です。残りの10%弱は比較的若年者に見られる、動脈硬化によらないもので線維筋性異形成症と呼ばれています。腎動脈が細くなっても、腎臓への血流量や腎臓への血圧が低下しなければ腎臓の働きに障害は起きません。一般的には70〜80%以上細くなって、はじめて障害が起きると言われています。高度の狭窄の結果、1)腎血管性高血圧、2)腎機能障害、3)心不全の急激な悪化、4) 狭心症などを発症する可能性があります。

2. 腎動脈狭窄症の検査

高血圧の精査としてまずは腎動脈エコーがあります。腎動脈エコー検査は無侵襲で放射線の被ばくもなく行えるため、外来で繰り返して行うことができる検査です。この検査で腎動脈の通過血流速度を測定して、血流速度が速い場合には腎動脈狭窄症を疑います。腎動脈狭窄症を疑う場合には、つづいて造影CT検査やMRI検査、腎動脈造影検査を行います。造影CT検査ではエコーに比べて、腎動脈の末梢の狭窄や、周辺の血管も含めた全体像もよく確認でき鮮明な画像が得られます。しかし、造影剤を使用するため腎機能が悪い方やアレルギーがある方は検査が難しいことや、放射線の被爆があるため繰り返して検査しにくいこと、血管の石灰化が強いと狭窄度の判定が困難なことが欠点としてあげられます。MRI検査では造影剤を使用せずに血管を見ることができます。しかし、造影CT検査ほど鮮明な画像を得ることはできません。また、体内にペースメーカーや磁力に反応する金属が入っていると検査できない場合があります。腎動脈造影検査では、撓骨動脈(手首)や上腕動脈(肘)からカテーテルを挿入し腎動脈の狭窄病変の有無を直接造影剤で判断することができ、もし腎動脈の狭窄病変を認めた場合にはそのまま治療を行うこともあります。

3. 腎動脈狭窄症の治療

腎動脈狭窄症に対しての治療法は、カテーテルによる風船治療やステント留置術で直接狭窄病変を広げる経皮的腎動脈形成術が現在では主流になっています。

(文責:奥村弘史)

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