大動脈疾患

1. 急性大動脈解離

病気について
大動脈解離とは、体の中の一番太い血管である大動脈が突然裂けてしまう病気で、全例緊急入院を要します。心臓からでてすぐの大動脈(上行大動脈)が裂けていたり、裂けた血管が破裂したり、大動脈の枝の血流が悪くなり様々な臓器(脳、心臓、脊髄、腸管、腎臓、四肢など)の障害があったりする場合は、緊急手術が必要になります。

症状
血管が裂けるまでは無症状のことがほとんどで、裂ける時に激烈な痛みが生じます。胸の血管が裂ける時は胸や背中の痛み、おなかの血管が裂けるときには腰痛があります。このような症状がありましたら、すぐに救急受診をしてください。

原因
(1) 高血圧
急性大動脈解離を起こした人のうち、約70%は高血圧です。血管に高い圧がかかることで、血管の内側の膜に傷ができやすくなり発症します。
(2) 血管の病気
血管の壁が弱くなる遺伝的病気がいくつかあり、そうした病気を持っている方は大動脈解離を起こしやすくなります。(例:マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群など)。
(3) 妊娠
妊娠中にお母さんの体内に増えるホルモンが、大動脈の壁に変化を起こすことが知られており、これが原因の一つと考えられています。妊娠後期(25週以降)と出産後に起こりやすいと言われています。
(4) 外傷
高いところから落ちたり、交通事故でハンドル外傷などを起こした場合、大動脈に間接的に強い衝撃が加わり解離を生じることがあります。

治療
(1) 緊急大動脈手術
心臓から出てすぐの大動脈(上行大動脈)が避けているとき(A型解離といいます)は、破裂の危険がきわめて高いため、緊急手術を要します。また、上行大動脈が避けていないとき(B型解離といいます)でも、破裂や急激な拡大、臓器の血流障害、激しい痛みが止まらない場合などは緊急手術を要します。B型解離の場合はカテーテルを用いたステントグラフト内挿術の適応となることもあります。
(2) 血圧の治療
緊急手術の適応とならない場合も入院して、血圧を下げる治療が必要になります。入院中に再度造影CTを撮影し、解離した部分が拡大してこないかどうかを確認します。退院後も血圧管理を継続し、定期的にCT検査を受ける必要があります。ただし、大動脈が拡大して大動脈瘤になってくると、破裂の防ぐために手術が必要となります。

2. 胸部大動脈瘤

病気について
大動脈は心臓から出た血液を全身に送るパイプの働きをしていますが、その大動脈が一部もしくは全体的に拡大してこぶ状になったものが動脈瘤です。心臓から横隔膜までの胸部大動脈は、正常では30㎜以下ですが、45㎜を越えると大動脈瘤となります。動脈瘤はその拡大に伴い徐々に破裂の危険がでてきます。
いったん破裂してしまうと、緊急手術を行っても救命が困難になるため、55㎜以上に拡大している場合や、急速に拡大している場合(半年で5mm以上の拡大)は破裂予防のため手術が必要になります。体格の小さい人や、大動脈の一部が不均一に膨らむ嚢状瘤の場合は、55mm未満でも手術適応となります。

原因と症状
動脈瘤の原因としては、動脈硬化に伴うものが最も多いです。悪玉コレステロールなど血液中のあぶらが血管の壁にたまると、血管は弾力性を失っていき、もろくなっていきます。その他にも、全身の炎症性疾患、細菌の感染、外傷などが原因で動脈瘤ができることもあります。
動脈瘤をもつほとんどの方は破裂するまで症状がありません。胸や背中の鈍い痛みが破裂の前兆のことがあります。また、瘤が神経や食道、気管を圧迫すると、かすれ声、むせ、血痰、食べ物が飲み込みにくいなどの症状を訴える方がいます。このような症状があれば、一度ご相談ください。また、破裂の際は突然の強い胸痛や背部痛を生じることが多いですので、そのような症状があればすぐに救急受診してください。

診断
通常無症状のため、胸部レントゲンで偶然発見されることが多いです。胸部レントゲンで胸部大動脈瘤が疑われたらCT検査を行います。もっとも確実な診断方法はCT検査ですが、MRIや心臓エコー、血管造影でも診断は可能です。

治療
一度大きくなった瘤は薬で小さくすることはできません。前述のように、サイズや形状によって破裂を予防するために手術が必要になります。手術は胸を開いて人工血管に置き換える方法(人工血管置換術)とカテーテルを用いて血管の中から人工血管を挿入する方法(ステントグラフト内挿術)があります。破裂または切迫破裂(破裂寸前の状態)の際は緊急手術が必要になります。

3. 腹部大動脈瘤

病気について
大動脈は心臓から出た血液を全身に送るパイプの働きをしていますが、その大動脈が一部もしくは全体的に拡大してこぶ状になったものが動脈瘤です。横隔膜から下の腹部大動脈は正常では20㎜以下ですが、30㎜を越えると大動脈瘤となります。高齢者に多く、性別では男性に多く見られる疾患です。動脈瘤はその拡大に伴い徐々に破裂の危険がでてきます。いったん破裂してしまうと、緊急手術を行っても救命が困難になるため、50㎜以上に拡大している場合や、急速に拡大している場合(半年で5mm以上の拡大)は破裂予防のため手術が必要になります。体格の小さい人や、大動脈の一部が不均一に膨らむ嚢状瘤(のうじょうりゅう)の場合は、50mm未満でも手術適応となります。

原因と症状
動脈瘤の原因としては、動脈硬化に伴うものが最も多いです。悪玉コレステロールなど血液中のあぶらが血管の壁にたまると、血管は弾力性を失っていき、もろくなっていきます。その他にも、全身の炎症性疾患、細菌の感染、外傷などが原因で動脈瘤ができることもあります。
動脈瘤をもつほとんどの方は破裂するまで症状がありません。ただし、横になっておへそのまわりに手をおくと、ドクドクと拍動するものが触れることがあります(肥満の場合や骨盤の奥に瘤がある場合は、触れにくいこともあります)。また、腹痛や腰痛が破裂の前兆であることがあります。このような場合は病院を受診してください。また、破裂の際は、突然の強い腹痛や腰痛を生じることが多いですので、そのような症状があればすぐに救急受診してください。

診断
通常無症状のため、おなかの拍動するしこりに偶然気づかれたり、腹部エコーやCTで偶然発見されたりすることが多いです。もっとも確実な診断方法はCT検査ですが、MRIや腹部エコー、血管造影でも診断は可能です。腹部エコーはスクリーニングの手段として優れており、とくに65歳以上の男性は腹部エコーで大動脈瘤がないかどうか確認するのがよいと言われています。

治療
一度大きくなった瘤は薬で小さくすることはできません。前述のように、サイズや形状によって破裂を予防するために手術が必要になります。手術はおなかを開いて人工血管に置き換える方法(人工血管置換術)とカテーテルを用いて血管の中から人工血管を挿入する方法(ステントグラフト内挿術)があります。破裂または切迫破裂(破裂寸前の状態)の際は緊急手術が必要になります。
(文責:平岩伸彦、田端実)

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