不整脈とは、心臓のリズムが異常になるものをいいます。不整脈には、自覚症状を伴わないものや、動悸・息切れなどの自覚症状が出るもの、失神や心不全をきたすもの、なかには突然死をきたす大変危険なものなどさまざまあります。
1. 不整脈とは
心臓の異常なリズムが、不整脈です。さまざま不整脈があり、全く自覚症状を伴わないものや、動悸・息切れなどの自覚症状が出るもの、失神や心不全をきたすもの、なかには突然死をきたす大変危険なものもあります。
2. 不整脈の種類
不整脈の種類は大きく分けて、脈が遅くなる不整脈(徐脈)、脈が速くなる不整脈(頻脈)、脈が乱れる不整脈(期外収縮や心房細動)があります。
(ア)脈が遅くなる不整脈(徐脈)
徐脈とは、脈拍数が1分間に50回以下のものをいいます。全身倦怠感・脱力感・めまい・ふらつき・失神・息切れなどの症を認め、明らかな理由がなく徐脈を生じた場合はペースメーカー植え込みの適応となることが多いです。徐脈性不整脈として以下の2つが主なものとしてあげられます。
(1) 洞不全症候群
右心房の上部にある心臓リズムの司令塔、洞結節の障害です。一時的に電気信号が送られなくなったり、少なくなったりする不整脈です。
(2) 房室ブロック
心臓リズムの中継地点、心房との心室へ電気刺激が伝わらなかったり、伝わりにくかったりする不整脈です。
(イ)脈が速くなる不整脈(頻脈)
頻脈性不整脈には、狭い範囲内での異常な心筋の興奮により生じているものと、特定の回路を旋回するものがあります。頻脈の種類によっては心臓電気生理学的検査を行うことで詳細な診断の上で、治療を行っています。
(1) WPW症候群
WPW症候群の方は先天的に心臓内を異常な電気が通る副伝導路が存在します。異常な電気が心臓内を旋回することで頻脈を起こします。
(2) 房室結節リエントリー性頻拍
心臓内の速い伝導路と遅い伝導路の間で電気がぐるぐる回ることで頻脈を生じます。
(3) 心房粗動
心房粗動は、右心房と右心室の間にある三尖弁の回りを旋回することで頻脈を起こします。
(4) 心室頻拍
心室に異常な興奮性を有する心筋細胞が存在して心臓を興奮させることにより頻拍を生ずる場合と、心筋梗塞後などの障害心筋の周りを興奮が旋回して頻拍を生じる場合があります。致死的な不整脈である心室粗細動に移行したり、心機能が低下したりすることがあります。
5) 心室細動
心室細動は、心臓がけいれんして血液を送り出すことができず、たちまち体内の酸素が欠乏する危険な不整脈です。心室細動になると数秒以内に意識を失い、その状態が続くと命に危険が生じます。心室細動を生じる可能性のある方は、心筋症や心筋梗塞後などの心機能の低下した方や、ブルガダ症候群やQT延長症候群をもつ方です。
(ウ)脈が乱れる不整脈(期外収縮や心房細動)
脈が乱れる不整脈は、期外収縮や心房細動がおもにあげられます。心房細動では、脈が乱れる症状のほかに心臓内に生じる血栓が脳などに飛ぶ塞栓症が起こる場合があり、注意が必要です。
(1) 期外収縮
瞬間的に脈が飛ぶものを言います。脈が抜けたり、瞬間的にドキッとしたりする症状を呈します。心臓に病気を持たず、運動負荷試験で増悪しない期外収縮は、まず生命へ危険を及ぼすことはありません。しかし心筋症、心臓弁膜症や、心不全、心筋梗塞後などにより心機能が低下している場合には、加療を要することがあります。
(2) 心房細動
心房細動は、心臓内の電気の伝わり方が無秩序になるために脈が一定ではなくなり、一部の人には頻脈となります。心房細動では左心房内に血の塊(血栓)を生じる可能性があり、この血栓が飛ぶと脳梗塞などの塞栓症を来たします。この塞栓症を予防する薬として、従来はワーファリンしかありませんでしたが、近年では食事の影響や血液検査による内服量の調整が不要な新たな抗凝固薬が開発されております。
3. 不整脈の検査
心電図や運動負荷試験、24時間心電図(ホルター心電図)のほか、胸部レントゲン、心エコー図検査などで心機能の評価、基礎心疾患の有無を確認し、また血液検査で電解質や甲状腺機能などを調べます。また、通常の治療では効果が少なくより詳細な評価が必要な場合や、不整脈が証明されにくい場合、カテーテルアブレーション(焼却術)や植込み型除細動器植込み術などの手術を行う場合には、さらにすすんだ検査として心臓電気生理学的検査を行うことがあります。
4. 不整脈の治療
不整脈の治療として、以下の5つがあげられます。④、⑤は現在施行できませんが、今後可能となります。
(1) 内服薬による薬物治療
不整脈の出現を抑えたり、心拍数を良好に整えたりします。また発作時に服用していただき、発作を短時間で止める方法もあります。
(2) カテーテル焼却術
(3) ペースメーカー植込み術
ペースメーカーは、局所麻酔で左側(右側)の前胸部に植え込みます。退院後は、ペースメーカー外来にて、半年ごとに経過を診させていただきます。
(4) 植込み型除細動器(ICD)
(5) 心臓再同期療法(CRT)及び両室ペーシング機能月植込み型除細動器(CRT-D)植込み術
(文責:奥村弘史)