卵円孔開存(Patent Foramen Ovale: PFO)とは

心臓は、にぎりこぶし程の大きさの臓器で、肺と全身に血液を送り出すポンプのような働きをしています。心筋という筋肉でできており、右心房、左心房、 右心室、左心室の4つの部屋から構成されています。 出生前の胎児期には、心臓の上部にある右心房と左心房の間の壁(心房中隔) に、組織が重なり合うようにしてできた穴が開いています。この穴を「卵円孔」といい、胎盤を通して流れてくる酸素を含んだ血液が「母親から」胎児の全身に循環するために必要な穴です。卵円孔は通常、出生後、数週間から数か月以内に自然に閉鎖されます。 しかしながら成人の3〜4人に1人は、卵円孔が完全には閉じていないといわれています。 このように卵円孔が開いたままの状態のことを「卵円孔開存(Patent Foramen Ovale : PFO)」といいます。

提供:Abbott

治療適応

PFOは通常、治療の必要はないとされていますが、静脈に血栓があるとまれに血栓が右心房から左心房にPFOを通過してしまい、その血栓が心臓から血管に排出されて脳に到達し、脳梗塞を起こすことがあります。PFOを通過した血栓を原因とする脳梗塞は、PFO閉鎖治療によって再発を予防できる可能性があります。PFOの関連が考えられた場合は、担当の脳卒中専門医と循環器内科専門医がPFOを閉鎖する治療の必要性を検討し、あなたに選択肢を提示します。

PFO閉鎖治療方法

カテーテル(細い管)によるPFO閉鎖治療では、右心房と左心房の間に開存するPFOを行き来する血流を遮断するように作られた器具(デバイス)をPFOの穴にはめ込んで塞ぎます。カテーテルによるPFO閉鎖治療は心臓カテーテル室で行われます。 治療は全身麻酔下(※個々に応じて局所麻酔下)で行われます。治療は通常、ふとももの付け根(そ径部)の皮膚を少しだけ切開して行います。切開部分が小さい、低侵襲な治療法です。切開部からカテーテルを血管内に挿入し、デバイス(PFOを塞ぐディスク)を血管に沿って心臓内のPFO付近まで誘導します。挿入したデバイスが正しい位置まで運ばれているか、心臓の画像診断ツールを用いながら慎重に確認します。デバイスが正しい位置にあることが確認されると、折り畳まれていたデバイスが拡げられ、固定されます。デバイスを心臓内に留置すると、医師はカテーテルを引き抜いて治療が終了します。治療に要する時間は多くの場合、1〜2時間程度です。

提供:Abbott

カテーテル治療入院の実際

当センターでのPFOに対する標準的なカテーテル治療入院の流れを示します。

【入院1日目】
手技前日に入院します。
全身の状態を確認させていただいた後、改めて治療の説明を行います。

【入院2日目・治療】
全身麻酔(※個々に応じて局所麻酔)であるため、朝から絶食・点滴となります。

治療はカテーテル室で行います。
全身麻酔後(※個々に応じて局所麻酔)、経食道心エコー(※個々に応じて心腔内エコー)で心臓内の様子を観察しながら施行します。手順は以下の通りです。

  1. 大腿静脈からシースを挿入し、PFOを越えてシースを左房側へ挿入する
  2. 閉鎖栓を左心房にあるカテーテルの先端まで進めて、左心房側のディスクを開く
  3. 閉鎖栓の中心部を広げて卵円孔に近づける
  4. 閉鎖栓中心部の位置に合わせる
  5. 右心房のディスクを開く
  6. 閉鎖栓を前後に動かし、簡単に外れず確実に留置されていることを確認した後、接続を解除して終了

治療後、大腿の穿刺部位は圧迫止血していますが、数時間で圧迫を外すことができ、以降は歩行可能です。

【入院3日目】
治療翌日であり、必要に応じて採血、心電図、胸部レントゲン、心臓超音波検査を行い、大きな問題がないことを確認します。特に問題なければ同日退院です。

なお、上記日程は標準的な予定を示しており、実際は状態に合わせて変更させる場合があります。

PFO閉鎖後はデバイスが適切に留置されていることを確認できるよう退院後にも定期的に胸部レントゲン、心臓超音波検査を行います。脳卒中専門医、循環器内科専門医による定期検査を受けていただきます。

医師紹介

小船井 光太郎

おぶない こうたろう

循環器内科部長
経皮的卵円孔開存閉鎖術 認定実施医

高藤 広弥

たかふじ ひろや

循環器内科医長
経皮的卵円孔開存閉鎖術 認定実施医

三枝 邦康

さいぐさ くにやす

脳神経外科部長
脳卒中専門医

当センターハートチームによる心臓病診療のご紹介

心臓病の診断から治療

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで心臓の筋肉への血液の供給が不足し胸痛などの症状をきたす疾患です。このような疾患の治療法のひとつとして、冠動脈インターベンション(心臓カテーテル治療)があります。

狭心症・心筋梗塞

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで心臓の筋肉への血液の供給が不足し胸痛などの症状をきたす疾患です。このような疾患の治療法のひとつとして、冠動脈インターベンション(心臓カテーテル治療)があります。

心エコー図

心エコー図検査とは超音波を利用することで心臓の形態や機能を評価する画像診断法です。当センターの心エコー図検査室は、経胸壁心エコー図検査をはじめ各種心エコー図検査を熟知した複数の専門医師および専門技師が繰り返し検査を評価するため常に質の高い心エコー図検査を提供することができます。

TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)

心臓の出口である大動脈弁が硬くなって、出口が狭くなる病気、それは大動脈弁狭窄症です。重症の大動脈弁狭窄症は命にかかわる病気であり、最も確実な治療は人工弁に置換する手術(大動脈弁置換術)です。TAVI(タビ)は、心臓以外の病気を抱えていたり、体力が低下していて手術に耐えられないような大動脈弁狭窄症の患者さんに対する最新治療です。

低侵襲心臓手術(MICS、ミックス手術)

心臓血管外科では、胸骨を切らない低侵襲心臓手術(MICS、ミックス)を積極的に行います。僧帽弁形成術・置換術、三尖弁形成術、心房中隔欠損閉鎖術、心房細動などの手術(メイズ手術)は、骨を切らない・折らない・開かない完全内視鏡下手術を行っています。大動脈弁の手術は、直視下の右小開胸アプローチや胸骨を半分だけ切る胸骨部分切開で行っています。

大動脈弁手術(大動脈弁形成術・置換術)

大動脈弁に重度の狭窄や逆流が生じると、薬での治療が困難になってきます。そもそも狭窄や逆流そのものは薬では改善しません。そのような場合は手術あるいはカテーテルの治療が必要になります。大動脈弁の手術には、大動脈弁置換術と大動脈弁形成術があります。

経皮的末梢動脈形成術

内服治療で改善が見込めない場合や重症な状態であるときなど、多くの病変が適応となっ…

経皮的腎動脈形成術

腎動脈の狭窄を解除する治療法は、現在では侵襲の少ないカテーテルによる風船治療やス…

心筋シンチグラフィー

心筋シンチグラフィーは、心筋に集まる特殊薬(放射性医薬品)を注射して心臓に血液が…

心電図

心電図検査は、心臓の電気的な活動の様子を記録することで、心疾患の診断と治療に役立…

心臓MRI

MRI(磁気共鳴画像診断法:Magnetic Resonance Imaging…

心臓CT

心臓CTとは、造影剤を使用して冠動脈やその他の心臓や血管の形態を評価する検査のこ…

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近くても、遠くても、心臓血管治療が必要な方をいつでも診療いたします

私たちのハートセンターでは救急科と連携して、心臓救急治療に迅速に対応できる体制を24時間365日完備しております。命にかかわる病気である心筋梗塞、大動脈瘤破裂や大動脈解離などの急性大動脈疾患にたいして、早期治療により助かる患者さんを確実に助ける、それが我々の重要な使命です。緊急時搬送手段は様々です。当ハートセンターでは、近くても遠くても、救急車からドクターヘリまで受け入れ実績があります。

東京ベイから全国へ最先端医療の情報発信をして行きます

私たちハートチームが第一に考えているのは、目の前の患者さんと向き合い、心臓や血管の病気からお守りしたいということです。そのために、地域の医療を大切にするとともに、遠方からの期待にも応えます。これまでも、そしてこれからもドクターカーからドクターヘリまで期待に応え、市民公開講座やミニ循などで、真摯に活動して参ります。
それと同時に、私たちハートセンターが現実にとどまること無く前進するために、臨床成果をアカデミックな立場で継続し、価値ある情報を積極的に国内外に発信します。私たちハートセンターは、心臓血管治療における国内外の有名施設で十分な研鑚を積み、あるいは指導的立場であった医師やコメディカルたちが集まり、ハートチームを形成しています。それぞれのメンバーが国内外の様々な場でチームとして情報発信します。さらに、与えられた場だけでなく、自ら学ぶ場を作り発展させることで、世界の医療に貢献したいと考えています。

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