心房細動による塞栓症予防のための経カテーテル的左心耳閉鎖術

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心房細動と脳卒中

心臓は4つの部屋で構成されています。上方の2つの部屋を右心房と左心房と呼び、下方の2つの部屋を右心室と左心室と呼びます。

心房細動は、心房が小刻みで不規則な拍動(細動)をする不整脈です。

心房細動になると、心房内で血液がうっ滞して、互いにくっついてしまうことで、血栓が形成されることがあります。

血栓が心臓から飛んで、脳への血液を供給する血管をふさいだ場合、脳卒中(脳塞栓症)が起こります。
心房細動がある人は脳卒中のリスクが5倍高くなることが示されています1
非弁膜症性心房細動.では、脳卒中の原因となる血栓の90%以上が左心房にある左心耳で形成されると言われています2

.1 Holmes D. Atrial Fibrillation and Stroke Management: Present and Future. Semin Neurol 2010,30:528-536
.2 Blackshear J. and Odell J., Annals of Thoracic Surgery. 1996;61:755-759
. 非弁膜症性心房細動とはリウマチ性僧帽弁疾患または機械弁置換術後以外の方におこる心房細動のことです。

左心耳閉鎖による脳卒中の予防

心房細動では、脳卒中や血栓による塞栓症を予防することが重要となります。現在、一般的に推奨されている治療法は薬剤による抗凝固療法です。しかし、中には出血リスクが高いなどの理由から長期間の抗凝固療法の服用ができない非弁膜症性心房細動の方がいます。
上記のように、非弁膜症性心房細動では左心耳でほとんどの血栓が形成されると報告されており、左心耳閉鎖デバイス(Watchman®)を留置することにより左心耳を閉鎖することが脳卒中のリスクを低減する有効な方法となります。

治療の適応

抗凝固療法の経過が良好であり、継続が可能と考えられる場合には、左心耳閉鎖を検討する必要はありません。
抗凝固療法が必要であるにも関わらず、出血リスクが高く、長期間実施できないと考えられる方が左心耳閉鎖の適応となります。
具体的には、非弁膜症性心房細動の方で、脳出血の既往がある、大きな出血の既往がある、出血リスクが高い(HAS-BLED score ≧3点)、複数の抗血栓薬を内服する必要がある、などの方が適応となります。

手技の流れ


1. 全身麻酔下で、右脚の付け根に細い管(カテーテル)を挿入します。


2. X線と経食道心エコー下に、心房中隔穿刺システムを用いて心房中隔を通過させ、カテーテルを通して左心房に進めます


3. カテーテルを左心耳に誘導します。


4. 左心耳閉鎖デバイス(Watchman®)を展開し、左心耳に留置します。


5. 手術自体は約1時間を要します。術翌日から歩行が可能です。


6. 左心耳閉鎖デバイス表面の内皮化が進み、左心耳が永久的に閉鎖されます。手術後約45日間は抗凝固療法(ワーファリン)の内服を継続します。経食道心エコーで閉鎖が確認されれば、抗凝固療法を中止します。

(画像はすべてBoston Scientific社提供)

医師紹介

小船井 光太郎

おぶない こうたろう

循環器内科部長
左心耳閉鎖システム (WATCHMAN) 実施医

牧原 優

まきはら ゆう

循環器内科副部長
左心耳閉鎖システム (WATCHMAN) 実施医

当センターハートチームによる心臓病診療のご紹介

心臓病の診断から治療

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで心臓の筋肉への血液の供給が不足し胸痛などの症状をきたす疾患です。このような疾患の治療法のひとつとして、冠動脈インターベンション(心臓カテーテル治療)があります。

狭心症・心筋梗塞

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心エコー図

心エコー図検査とは超音波を利用することで心臓の形態や機能を評価する画像診断法です。当センターの心エコー図検査室は、経胸壁心エコー図検査をはじめ各種心エコー図検査を熟知した複数の専門医師および専門技師が繰り返し検査を評価するため常に質の高い心エコー図検査を提供することができます。

TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)

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大動脈弁手術(大動脈弁形成術・置換術)

大動脈弁に重度の狭窄や逆流が生じると、薬での治療が困難になってきます。そもそも狭窄や逆流そのものは薬では改善しません。そのような場合は手術あるいはカテーテルの治療が必要になります。大動脈弁の手術には、大動脈弁置換術と大動脈弁形成術があります。

経皮的末梢動脈形成術

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近くても、遠くても、心臓血管治療が必要な方をいつでも診療いたします

私たちのハートセンターでは救急科と連携して、心臓救急治療に迅速に対応できる体制を24時間365日完備しております。命にかかわる病気である心筋梗塞、大動脈瘤破裂や大動脈解離などの急性大動脈疾患にたいして、早期治療により助かる患者さんを確実に助ける、それが我々の重要な使命です。緊急時搬送手段は様々です。当ハートセンターでは、近くても遠くても、救急車からドクターヘリまで受け入れ実績があります。

東京ベイから全国へ最先端医療の情報発信をして行きます

私たちハートチームが第一に考えているのは、目の前の患者さんと向き合い、心臓や血管の病気からお守りしたいということです。そのために、地域の医療を大切にするとともに、遠方からの期待にも応えます。これまでも、そしてこれからもドクターカーからドクターヘリまで期待に応え、市民公開講座やミニ循などで、真摯に活動して参ります。
それと同時に、私たちハートセンターが現実にとどまること無く前進するために、臨床成果をアカデミックな立場で継続し、価値ある情報を積極的に国内外に発信します。私たちハートセンターは、心臓血管治療における国内外の有名施設で十分な研鑚を積み、あるいは指導的立場であった医師やコメディカルたちが集まり、ハートチームを形成しています。それぞれのメンバーが国内外の様々な場でチームとして情報発信します。さらに、与えられた場だけでなく、自ら学ぶ場を作り発展させることで、世界の医療に貢献したいと考えています。

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