胆石とは?
医学的に難しくいうと、胆石には胆嚢にできる「胆嚢結石」と総胆管にできる「総胆管結石」と、肝臓内の胆管にできる「肝内胆管結石」などと分類されます。
ただし一番ポピュラーなのは胆嚢内にできる「胆嚢結石」なので、胆嚢結石=胆石として使用されていることが多く、我々医療従事者も「胆石」と言ったときには「胆嚢結石」を意味して使っていることが多いです。
そこで今日の話題でも「胆石」という語彙を「胆嚢結石」の意味で使うことにします。
無症状の胆石には基本的に手術はしない
胆石は成人の10人に1人くらいはあると言われているので、人間ドックでの超音波検査や、あるいは何か別な疾患で行ったCTなどの画像検査などで「胆石がありますね」と言われたことがある方は多いのではないかと思います。
でも「胆石がある」と言われただけで「その後どうするのか」を教えてもらえずに結局どうしたらいいのかよく分からないという方もいるかもしれません。
筆者が医師になった20年くらい前までは「胆石をほっておくと胆嚢がんになるので手術した方がいいですよ!」と説明されて胆嚢摘出術を受けていた方もいましたが、現在わかっている限りではそのような事実はないとされています*。
無症状の胆石を有する人がその後10年から15年以内に症状が出現する確率は20%程度と言われています。
一方で、多くの手術が実施されれば必ず合併症、つまり期待した結果が得られずにかえって不具合を生じてしまうことが一定の割合で生じます。
これは統計的にある頻度で起きているのが現実なので「あなた方が注意してやれば私は大丈夫だね」という話にはなりません。
胆嚢摘出術の場合300回に1回程度の頻度で追加の治療を要するような合併症が生じるとされているので、胆石のような数の多い疾患を胆石をもつ全ての方に行ってしまうと”やらなくても良かった手術を行った結果、かえって健康を損なった”という結果を生じてしまうことになりかねません。
そもそも不要な手術は避けるべきです。
したがって「胆石がある」と言われただけであれば、あることをご自身で知ってさえいればそれ以上は何もしなくてよいということになります。
胆石の症状とは?
では症状がでる場合にはどんな症状なのでしょうか?
もっとも典型的なのは、脂っこい食事をした2〜3時間くらい後にみぞおちから右脇腹あたりに痛みを感じます。
右側の背中が痛くなるのもよくある症状です。
痛みの程度は個人差が相当大きいいので、のたうちまわるような痛みから、ちょっとおかしいくらいにしか感じないまで様々です。
ポイントは食事の内容と食事からの時間経過で、脂っこいものを食べたあと2〜3時間後、というのが最大のキーワードです。
これが繰り返し起こるようであれば胆石が疑わしいです。
内臓には皮膚のような鋭敏な位置感覚が無いので、内臓のどこが痛いのかを自分で知ることはできません。
「ときどきみぞおちが痛くなるので胃が悪いと思います」と自ら医師に申告して胃薬を漫然と内服している・・というケースもめずらしくないです。
胆石の治療とは?
有症状胆石症の標準治療は胆嚢摘出術、つまり胆嚢を取ってしまうことです。
“標準治療”というのは現在の医学界において適正とされている治療の意味です。
かつては胆石と超音波で破砕しようとか。
胆石を薬剤で溶かそうという試みがなされたこともありましたが、いずれもよい結果は得られなかったので、これらが標準治療として行われることは現在はありません。
胆嚢を取る手術は現在そのほぼすべてのケースで腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われており、合併症がなくスムーズにいった場合には比較的負担の少ない治療であることもまた事実です。
胆石があると言われただけでとくに自覚する症状がないのであれば、医療機関を受診する必要はないですが、上記に症状に「近いな!」とか「ちょっと似たような感じがする!」という場合にはぜひ一度医師にご相談ください。
*胆嚢がんにかかっている場合には高率に胆石があることが知られており、このことが拡大解釈となったと推測されます。