みなさま、大腸がん検診、受けていますか?
東京ベイ総合内科「異常所見Q&A」シリーズ第4弾の今回は、大腸がん検診についてご紹介させていただきます。
日本では、がん検診推進事業として40歳以上での大腸がん検診が勧められています。
無料で受けられる場合や少しお金がかかる場合など、各市町村によって異なりますが、40歳以上の方を対象とし、1年に1回もしくは2年に1回の便潜血検査が推奨されています。
(大腸がんポリープ診療ガイドライン2014,日本消化器病学会,以下ガイドライン)
詳しくは、お住まいの市町村のホームページをご参照ください。
Q1.便潜血検査とは?
便潜血とは、文字通り、「便のなかに血液が混ざっているか?」を調べる検査です。
ポリープや癌があると、出血があります。
この出血は非常にわずかなもので、見た目ではわかりません。
便潜血検査はこのわずかな出血を検知するものです。
化学法と免疫法の2つがありますが、化学法は食事の内容に影響されることがあり、現在は免疫法が推奨されています。
2回検査を行う2日法を用いると、より検出度が上がるとされるため、ガイドラインでは免疫法による便潜血検査2日法が推奨されています。
また、便の内側よりも表面のほうが血液が多く存在するため、便の長軸方向に数本なぞる方法がよいとされています。
Q2.便潜血陽性の場合、どうしたらよいですか?
では、検診で便潜血陽性と言われたらどうしたらよいでしょうか?
がんやポリープがある可能性がありますので、原則として大腸内視鏡検査による精密検査を受けることになります。
ただし、便潜血陽性であれば必ずしも癌やポリープがあるというわけではありません。
検査をして異常はなかったということもあります。
また、「2回のうち1回だけ陽性だったので大腸内視鏡検査は受けなくてもいいですか?」という質問をよくいただきますが、2回便潜血を行うのは検診の精度を上げるためです。
1回は陰性だったから大丈夫ではなく、1回でも陽性ならば大腸内視鏡検査をお勧めさせていただきます。
Q3.なぜ大腸がん検診が勧められるのか?
検診の目的は、ずばり「がんによる死亡を減らす」ことです。
2013年における人口動態統計のデータでは、がんの部位別死亡数で第3位(1位 肺癌、2位 胃癌)です。
また、グラフ(1)をみてわかる通り、大腸がん罹患率は年々増加傾向にあります。
現在の日本における大腸がんの生涯罹患リスク(一生のうちに大腸がんになる確率)は男性9%、女性7%であり、大腸がんが原因で死亡する確率は男性3%、女性2%とされてます。
ざっくり言いますと、100人中8人が大腸がんに罹患し、2.5人は大腸がんが原因で亡くなるということになります。
このように大腸がんは増えつつある病気ですが、大腸がんになった人すべてが大腸がんで亡くなるわけではありません。
がんはその進行度合に合わせて「ステージ」が決められます。
がんが腸壁のどこまで存在するか、リンパ節や肝臓、肺などの転移があるか、などによって0~Ⅳ期に分類され、数字が大きくなるほど進行した状態を示しています。
大腸がんの5年生存率(5年間生存している確率)を、表(2)に示します。
StageⅣ(肝臓や肺に転移がある状態)では18.8%と低くなりますが、0~Ⅱ期では生存率は高いと言えます。
これは他のがんと比較しても高い生存率です。
進行度(ステージ) | 累積5年生存率 |
---|---|
0 | 0.94 |
Ⅰ | 0.916 |
Ⅱ | 0.848 |
Ⅲa | 0.777 |
Ⅲb | 0.6 |
Ⅳ | 0.188 |
つまり、大腸がんは早期に発見、治療することで治すことが期待できるがんです。
患者さんも増える傾向にあり、みなさんに検診を受診していただき、早期発見に努めることで、より多くの方が大腸がんで亡くなるリスクを減らすことができるわけです。
Q4.大腸内視鏡検査はどのような検査ですか?
大腸内視鏡検査には前もって準備が必要です。
腸の中にたまった便をすべて出すために、前日からの食事制限と当日は1リットルから2リットルの下剤を服用する(前処置)が必要であり、時間と労力を要するのはたしかです。
しかし、腸の中に便や食物残渣が残っていると、ポリープや癌の見落としが増えるため、適切な前処置は検査の目的を果たすためにとても大切なことです。
大腸内視鏡検査は、適切な前処置を行った上で、内視鏡をまずは大腸の奥(大腸と小腸のつなぎめあたり)まで挿入し、内視鏡を抜きながらしっかりと腸の中を観察してきます。
内視鏡を挿入する際に、痛みがあるのではないかと心配される方もいますが、痛みの感じ方には個人差があります。
ご心配な方は、痛み止めを使って検査を受けることも可能ですので、受診する医療機関にお問い合わせください。
検査に伴う偶発症は、観察のみの検査(ポリープを切除するなどの処置をしない場合)、日本消化器内視鏡学会の報告では、0.012%(1万件に1件の発生頻度)とされており、比較的安全な検査です。
検査について心配なこと、不安なことがあれば、担当医に遠慮なくご相談ください。
Q5.大腸がんが見つかった場合、どうしたらよいですか?
大腸内視鏡の結果、がんが見つかった場合のお話をします。
CT検査などの追加検査を行い、転移がないか評価を行い、先に述べた進行度合の確認を行います。(ステージング、と言います)
ステージングの結果で、治療方針が概ね決定します。
早期がんの場合は、内視鏡的に切除することが可能ですが、ある程度進行している場合は手術や化学療法を行います。どのような治療を選択するかは、専門医とよく相談することが必要です。
Q6.大腸ポリープが見つかりました。どうしたらよいですか?
大腸内視鏡検査の結果、がんはなかったけどもポリープがあると言われたら、どうしたらよいでしょうか?
便潜血陽性で大腸内視鏡検査を受けられた場合、多くはこのケースだと思われます。
ポリープは、「大腸の内腔に向かって限局性に隆起する病変で、組織学的に良悪性は問わない」と定義されています。
組織学的な分類では、通常型腺腫、鋸歯状ポリープ、炎症性、間質性、リンパ組織性、内分泌性などに分類され、各々の分類の中でもさらに細かく分類されています。
ポリープとひとくくりにしていますが、実はたくさんの種類があるのです。
切除が必要なものはこれらのうち、6mm以上の通常型腺腫、右側結腸に存在する10mm以上の鋸歯状ポリープです。
大腸のポリープはサイズが大きくなると、癌化している割合が増えるため、サイズで切除適応を判断しています。
過形成ポリープや炎症性ポリープなどは、基本的には癌化しないので、サイズが大きくても切除はしません。
「見た目だけで、組織学的分類がわかりますか?」と質問をいただくことがありますが、顕微鏡で見なくてもある程度は組織学的分類を予想できます。
現在は、拡大内視鏡(カメラにズーム機能が付いているもの)を使って、拡大観察を行うことで、より予想しやすくなっています。
ただし、組織学的判断が難しい場合で6mmを超えるものであれば、切除をすることもあります。
切除したポリープは、病理検査へ提出し、この結果が最終的な組織診断となります。
Q7.検査は定期的に受ける必要がありますか?
ヨーロッパや米国のガイドラインでは、腺腫の大きさや数、切除したポリープの組織学的分類によって、それぞれ推奨される大腸内視鏡検査の間隔が決められています。
日本では一定の見解が得られておらず(現在JapanPolypStudy本試験で研究中)、ガイドラインでは3年以内の大腸内視鏡検査が提案されています。
5mm未満で切除しなかったポリープがある場合は、サイズの変化がないか、新たな切除適応のポリープないか観察を行います。
大腸がん検診で便潜血陽性と言われたら、大腸内視鏡検査を受けましょう。
大腸内視鏡検査について、「大変、痛い、恥ずかしい」などのイメージがあり、やりたくないと思われるかもしれません。
しかし、大腸がんは早期に発見できれば、治すことができる病気です。
検査についてご心配な点があれば、相談を承りますので、病院を受診してください。
文責:総合内科・消化器内科 宮垣 亜紀