健診で尿酸値が高いと言われたら 〜痛風患者Oさんのお話から〜

健診で尿酸値が高いと言われたら 〜痛風患者Oさんのお話から〜

健康診断で、「尿酸値が高いので医療機関を受診してください」と言われたけど、特に体調は悪くないからとそのまま様子をみていませんか。
または突然足の親指の付け根が腫れて歩くのもしんどい思いをしたことはないですか(痛風発作の可能性があります)。
もう何回も繰り返しているけど数日でおさまるからと我慢して病院受診をためらっていらっしゃいませんか。
今回は、健診で高尿酸血症と指摘された方で、医療機関を受診すべきか迷っている方、あるいは数年前に指摘されたけどそのままにしていた方、または痛風でお悩みの方を対象としています。

まずは、実際に当院を受診された方の例を見てみましょう。
Oさん(47歳男性)の例:
Oさんは、だいぶ前から健診で高尿酸血症と指摘されていましたが無症状でした。
ここ数年、忘年会の時期になると急に右足の親指の付け根が痛くなっていましたが、湿布を貼ると大体は数日で良くなるので様子をみていました。
今回またいつもの発作が出てきましたが、中学生の娘に心配されたので病院受診を決意しました。

上記のOさん、同じ症状の患者さんを見慣れている医師からしても、いかにも痛風発作のように思われます。
ただし、どんな場合でも私たち医師はまず、細菌の感染による関節炎(化膿性関節炎)でないかを第一に気にします。
極論として、痛風発作であれば痛みを我慢してさえいれば自然とおさまる(ただし繰り返していると慢性化してしまいますが)のですが、細菌感染によるものでは、関節そのものが破壊されてしまう場合や、菌が全身に及ぶこともあり、その場合は命に関わることもあるからです。
そのため私たちは、今までの発作と同じ痛みか(今までよりも痛みが強ければ、別物と考えた方がいいかもしれません)、傷口(細菌の侵入経路)がないか、外傷歴がないか、全身状態が悪くないか(痛風では痛みはあっても、ぐったりしてしまうほどになる方は若い方では稀な印象です)などを気にしながら患者さん本人のお話を注意深く伺い、全身をくまなく診察します。
患者さんからのお話を聞いて、痛風か化膿性関節炎か迷う場合には、痛みのある箇所の腫れが強ければ関節穿刺といって関節に針を刺してたまった液体(関節液)を抜き取って、細菌の成分がないか確認することもあります。
痛風による関節炎だと診断したら、まずは痛み止めを処方させていただきながら、尿酸を下げる治療が必要か、下記のプロセスに沿って治療法を検討していきます。
痛風であれば大体1-2週間程度で痛みは落ち着いてくるはずですが、完全に痛風ですと言い切ることは実際の臨床の現場ではなかなか難しく(関節液に痛風結晶がある方でも化膿性関節炎を一緒に起こしてしまう方も中にはいるためです!)、本当に関節炎が良くなったかどうか確認させていただくために、1-2週間後ぐらいを目安に患者さんに再度受診をお願いすることが多いです。
私たち内科医が実際に患者さんを診療していると、多くの場合で上のOさん(47歳男性)のような経過になります。
それでは、痛風の原因である高尿酸血症がどのようなメカニズムで症状を引き起こすのか、どのような治療法があるのか、日本人における高尿酸血症の頻度も含めて見てみましょう。

1、高尿酸血症とは

尿酸というのは私たち生物のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)が分解されてできるもの(代謝産物)で、体内には一定の濃度あり、高尿酸血症とは、血液の尿酸濃度が7.0mg/dL以上の状態を指します。なぜ7という数字なのかというと、この濃度を超えると生理的にも尿酸が凝集して結石をつくりやすいと言われているためです(Arthritis Rheum 1972;15:189-92 )。

2、日本人における高尿酸血症の頻度は?

やや古いですが、日本の成人男性では21.5%、女性では50歳未満は1.3%、50歳以降で3.7%とされており、男性に多いことが示されたデータがあります。(冨田眞佐子,水野正一:高尿酸血症は増加しているか?;性差を中心に.痛風と核酸代謝30:1-5,2006)成人男性の5人に1人は抱えるとされるこの病気、決して珍しいものではないことがご理解いただけたでしょうか。

3、高尿酸血症が引き起こす痛風発作の症状は?

尿酸が凝集して尿酸結石となり、関節に沈着すると、痛風関節炎と呼ばれる関節の腫れと強い痛みを起こします。これがいわゆる痛風と呼ばれるもので、吹いた風邪が関節にあたるだけで痛みがあるから痛風という名前がついたという説があるほどに強い痛みを伴い、歩くのもしんどそうにされて病院に受診される方もたくさんいらっしゃいます。85-90%は一つの関節のみ腫れる単関節炎で、60%は親指の付け根の関節(第一中足趾節関節)に起こるとされています(Rheum Dis Clin North Am. 2007; 33(1): 33-55)。その他、膝・肘関節の伸側(膝小僧や肘の頭の部分など伸ばす側)や、耳介(いわゆる耳たぶ)にできることもあります。頻度はやや落ちますが、手足のその他の関節にできることもあります。また、痛風発作を繰り返しているうちに、腫れが元に戻らなくなる、いわゆる痛風結節ができてしまうこともあります。

尿酸値が高いほど、この痛風性関節炎を起こしやすいと言われていますが、発作頻度について調べた観察研究(Am J Med 1987;82:421-6)によると以下の通りです。

尿酸濃度痛風発作
7.0mg/dL以下0.1%/年
7.0-8.0 mg/dL0.5%/年
9.0mg/dL以上4.9%/年
9.0mg/dL以上(5年間)22%/5年間

これを見て、尿酸値が9を超えると20人に一人は痛風発作を起こす、ともいえるし、5年間放置していても5人に1人しか発症しない、ともとらえることはできますが、解釈は人それぞれだと思います。

4、何が問題なの?

痛風発作は起きてしまうと強い痛みのため、それ自身が問題となり、生活の質が低下してしまいます。また、そういった症状はなくても高尿酸血症がある方は、高血圧・脂質異常症・肥満などのいわゆる生活習慣病を持っている割合が多いことが示されています(Circ J. 2016; 80: 1857-1862)。

5、治療は?

高尿酸血症については、食事・運動療法と、場合によっては尿酸降下薬の適応となります。特に、「プリン体が悪さをするみたいだからビールではなくワインを飲みます」と仰ってくださる方もいらっしゃいますが、残念ながらビールもワインもなんでも発作のリスクを上昇させることが示されており、飲酒量が多いほどそのリスクも高いことが示されています(Am J Med. 2014; 127: 311-318)。発作を減らすことが明確に示されたものは実はまだないのですが、飲酒や肉類、果糖類を多く含むものは避けた方が良いとされています。

6、薬物治療の対象となるのは?

高尿酸血症と指摘されたからといって、全員が病院受診すると薬を処方されてしまうわけではありません。現在治療をして効果が示されているのは痛風発作を繰り返している方(年間2回以上が目安として示されています)または痛風結節がある方で、あとは治療を考慮すべきものとして慢性腎臓病がある方や、尿酸による尿路結石症を起こした方が挙げられます(Arthritis Care Res. 2012; 64(10): 1431-1446.)。なお、上述の通り尿酸が高いと生活習慣病が多いのですが、だからといって尿酸値を薬で下げたからといってその危険が下がるかどうかについてはまだ明確なデータは得られてはいません。そのため、欧米のガイドラインでは無症候の高尿酸血症の方への薬物療法は推奨していませんが、日本のガイドラインでは尿酸値8-9以上の場合は痛風発作のリスクが高いので治療を考慮としており、未だに不確実な部分です。

薬ならなんでもそうですが、メリットとデメリットがあります。尿酸降下薬のメリットは、もちろん尿酸を下げて、痛風発作の頻度を減らすことと、あるいは慢性腎臓病がある方の場合はその進行を遅らせる可能性についてのデータが少しずつ出てきています(Am J Kidney Dis. 2015;66:945-950 )。その一方、デメリットとしては、費用の問題と副作用が挙げられます。3-5%に皮疹を起こす他、下痢や薬剤そのものによる熱などを起こし得ます。重症な過敏症が0.1%に出るようですが、その死亡率は20-25%とも言われています(ただしこれは海外の報告で、投与量も腎臓が悪い方に対して日本の通常投与量の2-3倍で投与されている例に多いため、日本人における発症率はもっと低い可能性はありますが、絶対に安全とも言い切れないのが薬の宿命です(Arthritis Care Res (Hoboken). Apr 2013; 65(4): 578–584.)。私たちは薬のメリットがデメリットを上回ると判断した場合のみ、その薬の処方を行っています。

7、結局病院は受診した方がいいの?

結論としては、一度は受診をお勧めします。痛風発作が起きている場合は、痛みが強いので、わざわざこのホームページをみるまでもなく病院受診されている方が多いと思います。しかし、受診をためらっている方も、親指の付け根が腫れる=痛風と決めつけてはいけません。痛風を繰り返している方でも、初めて腫れた方であっても、実は細菌が関節の中に入って強い炎症を起こしている、化膿性関節炎の可能性があり、この場合は適切な治療を行わないと命に関わってくることもあります。もう痛みには慣れっこだからと我慢している方も、痛風結節ができている、または発作頻度が高い場合には、尿酸降下薬の適応となる可能性があり、病院受診をおすすめします。

では、無症状の場合はどうでしょうか。現時点で、症状がない方に対して尿酸降下薬を明確に強く推奨する根拠は乏しいのは上述の通りです。薬も処方されないなら行く意味がないのではないか、とお考えではないでしょうか。実は違います。尿酸値が高い方は、その他の生活習慣病を合併している方が多いのは上述の通りです。そのため、私たち医師は、尿酸値が高いからと病院受診された方には、その他の生活習慣病で何か介入できそうなものがないかに実は強く力を注いでいます。アルコール依存症になっていないか、高血圧はないか、糖尿病はないか、喫煙中ではないかなど、適切に介入することで死亡率や合併症を減らすことができる病気を実は抱えていないかに私たちは気にかけています。ですので、症状はなくても尿酸値が高いと言われたら、一度は医療機関を受診されてみてはいかがでしょうか。

※この文章は、2017年3月4日現在のものであり、今後は新たな知見によって推奨度が変わるなど、内容が変化していく可能性があることはご留意ください。

文責:総合内科 遠藤 慶太

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 総合内科

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