「ほな行こか」平岡回診は突然に

東京ベイの総合内科(TB GIM)では毎日朝カンファで前日入院の患者さんを中心に情報の共有と方針確認を行なっています。尿路感染症や市中肺炎の抗菌薬選択、消化管出や急性期心筋梗塞、致死性不整脈の対応、重症弁膜症のマネジメント、悪性腫瘍について。こういった分野は他の病院でも行われる一般的なテーマではありますが、一つの科で話される内容としては幅広いテーマです。そのほか、誤嚥性肺炎で再入院となった高齢者の今後の方針、慢性心不全や末期がんにおける症状緩和といったACPや緩和治療の領域についても重要なテーマであり毎回discussionします。
当科では平岡部長が教育に力を入れてくださり、専門科すら診断に難渋する症例(緊急透析を要した意識障害の症例、不明熱、原因不明の腎障害、複視、渡航感染症疑い、倫理的ジレンマ…etc。)についてもアイデアを出しあい、レジデントとともに悩みます。

このような毎朝提示される様々な問題に対して毎日一緒にdiscussionに加わり、問題点解決のためにアドバイスとティーチングまで行うのが平岡部長です。幅広い知識からの珠玉のパールはそれだけでも必聴ですが、そのほかにも直接相談し指導を受けることができる機会があります。通称「平岡回診」です。

「平岡回診」は朝カンファでの難渋する症例から日々の相談例について「ほな行こか。」の一声で突然始まります。医学的、倫理的に悩んだ症例について平岡部長と直々に協議でき、溢れるほどの知識からティーチングも受けることができるまたとない機会です。

プレゼンテーションを行いながら患者さんの元に行き、平岡部長により直接診察を行います。話を聞く時には大きな体を小さくして患者さんの目線に合わして親身に話をし、問診を行います。医学的な質問のほか、患者さんの希望や普段好きなこと、価値観、治療の希望なども含めて患者さんの訴えを十分に聴取します。丁寧に説明しながら身体診察を行う姿を見て、研修医は医師としてあるべき姿をその背中から学びます。実践的なポイントレクチャーも欠かしません。各科の知識を縦横無尽に駆け巡り、科のカテゴリーを超えた平岡回診はいつも目から鱗の連続です。

行なった診察から重要なプロブレムを再確認し、今後すべき検査・治療方針について他科の医師とも即座にその場でともに協議しながら鮮やかにsolid planを立てていきます。
医学的、倫理的に難解な問題がある中でも患者さんやご家族のゴールを中心に据え、幅広い知識を持った上で各科と協議し方針をまとめ上げる姿は、まさにGIMとはどうあるべきかを体現しています。

部分的には回診により問題解決が得られ、アウトカムの改善につながっているのは勿論ですが、回診を繰り返すうちにチーム内での共通言語や知識が増え、あるべき姿勢が明確化するため、全体としてチーム診療の質が改善されていくのが分かります。米国では十分に浸透していますが、総合内科は日本ではまだ手探りの現状があります。そういった中でGIMのアイデンティティが実感できるこのような機会は非常に大切で、この回診を通じて多くの医師がTB GIM ismを習得しています。

TB GIMでは研修医教育のためにも毎日多くのカンファやレクチャーを行なってはいますが、まさに教育の原点はここにあり。です。

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