こんにちは。内科専攻医(卒後5年目)の内山秀平です。
このたび、アメリカ内科学会日本支部国際交流委員会主催のプログラムに参加して、米国フロリダ州のUniversity of Florida Division of Hospital Medicineにて3週間のエクスターンシップの機会を頂きました。現地で学んだ事柄について報告させていただきます。
はじめに、今回ローテーションさせていただきましたDivision of Hospital Medicineについて説明いたします。この診療科はいわゆるHospitalist(病棟総合診療医)が勤務している診療科であり、入院中の患者のうち複数科にわたるプロブレムを持つ患者を中心に担当を行っています。また、他科(主に整形外科、泌尿器科、産婦人科などの非内科系診療科)からの内科的プロブレムに対するコンサルトも引き受けています。私は総合内科医の一員として、日米の病棟総合内科の差異を知るだけでなく、本エクスターンシップを通じて私の学んだことをしっかり当センター総合内科に還元できればと思います。
①Floor
こちらは入院患者を担当医として受け持つ部門です。入院患者の疾患は多岐にわたり、心不全、肺炎、COPD急性増悪、蜂窩織炎などの当センター総合内科でも頻繁に診療している疾患から、嚢胞性線維症、鎌状赤血球症によるacute chest syndromeなどの、米国ならではの症例も含めて見学することができました。日本でも見られる疾患の診療内容に関しては普段から私がホスピタリストとして行っているものと大きな差はないと感じられましたが、コストの意識が高い影響か入院期間が非常に短く、case manager(ソーシャルワーカー)が各患者のdispositionについて毎日確認を行っている場面が非常に印象的でした。
②Consultation service
こちらは他科からのコンサルトを受ける部門です。主な診療内容としては外科病棟入院中の患者の内科的併診や心不全管理、高血圧緊急症などがありました。さらに院内で腹腔穿刺、腰椎穿刺、中心静脈カテーテル留置などの処置が必要になった場合のコンサルト先もこちらでした。例としては、大腿骨頸部骨折で手術を控えている患者の併存疾患である高血圧、糖尿病、慢性心不全のマネジメントを受け持つ、というような内容です。
もともと私が病棟総合内科に興味を持ち始めたのは総合内科としての病棟担当もさることながら、他科との併診という形で一人一人の患者を包括的に診療することのできるシステムが素晴らしいと感じたことが契機でした。コンサルテーションのみを受け持つ部門は日本の病院には一般的でないと思われますが、非常にやりがいのある仕事だと感じられました。
③当センター総合内科のさらなる改善にむけて
3週間のエクスターンシップにおいて第一に感じたことは、当センター総合内科で学び、実践している診療内容は米国においても通用するということでした。当科では実臨床におけるEvidence-Based Medicineの実践を重視しており、各ガイドラインや治療方針の参照も海外の文献をもとに行うことが少なくありません。その中で私たち専攻医が学び実践している内容は確実にworld standardであることを肌で感じ、自信につながりました。
ですが、やはり本場米国の医師たちはそういった文献へのアクセスおよび知識の習得が我々と比較して圧倒的に速いということも感じました。その文献検索能力をフルに活用し、レジデントの教育には単純な耳学問だけでなく、それを裏付ける論拠を常に用意している指導医の姿が印象的でした。エクスターンシップ中に文献検索の方法や一つ一つの論文からいかに素早く正確に論旨を読み取るかといった訓練を行うことができたので、今後はその培ったスキルを当科に還元していきたいと思います。
総じて今回のエクスターンシップでは本場米国の診療内容を深く知ることができただけでなく、私自身のキャリア形成においても大きな糧を得ることができました。
最後になりましたが、今回のエクスターンシップへの参加をご快諾頂きました総合内科 平岡先生、江原先生、ならびに現在ローテーション中の集中治療科 則末先生、藤本先生に深く感謝を申し上げます。