2018年度最後の東京ベイ・浦安市川医療センター総合内科のweb通信では、当科で実施しているジャーナルクラブについて紹介します。
EBMとは何か?エビデンスに踊らされないために
Evidence Based Medicine(EBM)という言葉はすでに広く浸透し、研修医など若手医師の周囲でもよく聞かれる言葉になっています。それで「EBMとは何か?」「EBMを実行するとはどういうことか?」と問われた場合、皆さんはその問いに対して明確に答えられるでしょうか?
EBMというと「エビデンス(論文の結果)に従って医療をすること」と考えられがちです。EBMの本来の意味は、「エビデンスを参考にしながら、患者さんに最適な医療を提供すること」です。具体的には、①患者の病状・周囲の環境、②患者の価値観、③エビデンス、を総合的に評価し、その上で④医療者の臨床経験を踏まえて患者さんに提供する医療を決定していきます(BMJ 2002;324:1350)。ここでいうエビデンスとは、臨床研究などのいわゆる「論文」(一次文献)の他、それを臨床に適用しやすい形にまとめたガイドライン、UpToDateなどのツール(二次文献)を主に指します。

つまり、たとえガイドラインと異なる治療を行なっていても、患者さんが正しい医学的情報を理解していて、患者さんの価値観・希望を踏まえた上で行なっている医療であれば、それは「EBMを実行している」といえるでしょう(ガイドラインに反することを推奨するわけではありませんが)。一方でいくらエビデンスとしては正しくても、患者さんが希望しない治療を押し付けているようではEBMとはいえません。こういった、概念的な部分も理解してもらうことで、エビデンスを適切に用いた良質な医療が行えるようになることを目指します。
当センター総合内科で行なっているジャーナルクラブ
以上の内容も踏まえ、最後に当科で実施しているジャーナルクラブについて紹介します。当科のジャーナルクラブでは、「論文アレルギーをなくす」「論文を通して、意味のある知識を身につける」ということを大切にしています。当科のジャーナルクラブに参加している医師は、初期研修医、後期研修医など若手医師が中心です。日常的に数多くの論文に目を通しているという医師は多くありません。逆に、論文を読もうとすると莫大な時間がかかってしまい、その割にあまり内容は頭に入っていない、といった経験から論文を読むことのハードルが上がってしまっている医師もいます。論文から抽出すべき情報を明確にし、その効率的な抽出方法を示すことで、「頑張らなくても論文は読める」という感覚を身につけてもらうことを大切にしています。
また、題材となった論文の中身を読み込むことも大事ですが、その研究が行われた背景、結果がもたらす意義、また自分たちの臨床内容を変えうるものなのかといった、論文を通して得られる臨場感のある知識を味わうことに重きを置いています。論文の批判的吟味を行うための必要知識(ITT解析とは、盲検化とは・・・など)の解説は毎回ポイントを決めて行なっていますが、あまりその細かな解説に終始しないように注意しています。
今年度は、東京ベイ総合内科で実施している、総合内科力を高めるための仕組みやカンファレンスなどを中心に紹介してきました。来年度は研修内容に限らず、東京ベイ総合内科の魅力・日常・雰囲気が伝わるような、現場の「生の声」をお届けする記事を配信していく予定です。ご期待ください!