東京ベイ・浦安市川医療センター(以下東京ベイ)総合内科では、教育を目的としたカンファレンスを毎日行なっています。今回は東京ベイ総合内科の特色の1つである倫理カンファレンスについてご紹介します。
◆倫理カンファレンスとは
学生時代は専ら医学について学びますが、医師となり現場で働くようになると教科書通りに進む事はむしろ少なく、ジレンマを感じる事も多々あります。倫理カンファレンスは、倫理的な問題を考えるにあたっての背景知識を整理し皆で議論を行う場です。東京ベイ総合内科部長の平岡栄治医師を中心とし、毎週火曜日の昼に倫理カンファレンスを行なっています。
◆過去のテーマ
- 意思決定困難な問題の考え方:倫理4分割表
- 終末期医療に関連するガイドラインや法律
- 終末期医療(疾患別:悪性腫瘍・心不全・呼吸不全・腎不全・肝不全・認知症・老衰など)
- 倫理4分割表:倫理的に意思決定困難な問題の考え方
- コードステータス:心肺停止時の蘇生に関する希望
- アドバンス・ケア・プランニング
ここに挙げたのはほんの一部で、実際には年間を通して30以上のテーマを取り扱い体系的に学んでいます。この中でも繰り返し行なっているのが倫理4分割表を用いた症例カンファレンスです。
◆倫理4分割表とは
倫理4分割表はJonsenが提唱した倫理的問題を考えるための枠組みです。意思決定が難しい倫理的問題に直面した際に、①医学的適応、②患者の意向、③周囲の状況、④QOLの4項目を挙げ、その情報に基づいて総合的に議論を行います。この症例カンファレンスに正解は存在せず、患者さんにとっての最善のゴールについて話し合う過程がとても重要です。毎回同じ枠組みに沿って情報を集めることで漏れが少なくなり、議論に深みが増します。また、多職種を交えた医療チームでカンファレンスを繰り返すうちに、共通言語が生まれ円滑な議論が可能となります。
◆当センターの特徴
医学的な知識を深める勉強会は病院内外で多くありますが、倫理カンファレンスを定期的に行なっている病院はまだ少ないのではないでしょうか。東京ベイ総合内科では多くの短期研修生を受け入れていますが、倫理カンファレンスが印象に残ったとの感想も頂いています(→「研修を終えて」の記事)。「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という教育の格言がありますが、このカンファレンスではこの先医師として仕事を続ける上で普遍的な思考過程を学ぶ事ができます。興味を持たれた方は是非一度東京ベイ総合内科の見学にいらしてください。
文責:吉野かえで