ホームページをご覧の皆様、こんにちは。みなさん、“黄疸(おうだん)”という症状についてご存知でしょうか。今回のweb通信では、黄疸を起こす総胆管結石や癌などの内視鏡治療についてお話をします。
■あれ、なんだか皮膚が黄色いぞ!?~それは黄疸(おうだん)かもしれません~
眼球結膜(白目の部分)や皮膚が黄色くなる、尿が濃くなる(赤っぽくなる)、これらは黄疸の症状です。黄疸というのは、「ビリルビン」という物質が体に蓄積して、沈着して起きる症状です。
「ビリルビン」とはなんでしょうか?簡単にいうと、ビリルビンは、人間の血液のなかの血球である白血球・赤血球・血小板のうち、「赤血球」に含まれる成分です。赤血球は骨髄で作られ、古くなって寿命を迎えると脾臓という臓器で分解されます。赤血球の分解の過程でビリルビンは作られ、肝臓で代謝されて、「胆汁(たんじゅう)」の中に排泄されます。胆管という細い管を通り、いずれは十二指腸に流れます。流れ道の途中で胆のうという袋にストックされたりもします。「胆汁」は腸管の中で便の成分となり、我々の便を茶色っぽい色になります。この過程のどこかが障害されて、ビリルビンの排泄がうまく行かないと、血液中のビリルビンの濃度が上がり、皮膚や目に黄色っぽい色がつくようになります。これが黄疸ということです。
ちなみに寒い季節にこたつでみかんを食べ過ぎると、手の皮膚が黄色っぽくなったりすることはありませんか?これは柑皮症といって、柑橘類に含まれるカロテンが皮膚に沈着するために起こるもので、「黄疸」とは別物です。なので、「黄疸」か「柑皮症」かは、血液検査でビリルビンの値を測ればはっきりします。
■「黄疸」の原因とは?~胆管が詰まっているかもしれません~
いろいろな病気で黄疸は起こりますが、多い原因は、肝臓で作られた胆汁が、腸の中に出てくるまでの道がつまって(閉塞して)おきる、「閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)」です。我々東京ベイ消化器内科が治療しているのは、この閉塞性黄疸です。閉塞性黄疸について少し詳しくお話しましょう。
胆汁は肝臓で作られて、胆管という管を通って十二指腸という腸に出てきます。この胆汁を蓄える袋のような臓器が、胆嚢です。胆汁の流れ道で、流れが滞るような病気があると、閉塞性黄疸が起こります。
胆汁の流れが滞る原因のナンバーワンは、胆石です。健康診断などで「胆嚢に石がある」と言われたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。この「胆石」が、「胆管」につまってしまうと、胆汁がうっ滞して閉塞性黄疸を来します。そして、胆汁の流れが滞った胆管でばい菌が繁殖すると、「胆管炎」という状態になります。これは、ひどく熱が出たり、寒気がしたり、重症になると血圧が下がって亡くなってしまうこともある怖い病気です。他にも、胆管癌というがんでも、胆管が狭くなり黄疸の症状がでます。実は胆管は膵臓という臓器とくっついているところがあり、膵臓の病気(たとえば膵臓癌や慢性膵炎)でも同じように黄疸がでることがあります。
■閉塞性黄疸、どんな治療?~内視鏡チームにおまかせください!~
では、どんなふうに治療すればいいのでしょうか?簡単にいうと、「胆管」のつまり、を取ってあげればいいのです。これが、今回のWeb通信のテーマである、「ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)」という検査・治療になります。
普段の胃カメラと同じように口からカメラを入れて、「胆管」の出口のある十二指腸まで進めます。治療用の特殊なカメラで、様々な道具を出し入れすることができます。カメラの先から細いワイヤーをだして、胆管の中に入れていきます。そのワイヤーさえ入ってしまえばこっちのもの、小さなナイフで「胆管」の出口を切り開いたり、石を取り除いたり、胆管のステントを入れたりすることができます。詰まりが取れれば、「胆汁」はまた流れるようになるので、「黄疸」は良くなりますし、ばい菌が感染した汚い胆汁も流れていってしまうので胆管炎も治っていきます。
<治療の写真>
■胃の手術をしています、治療できますか?~バルーン内視鏡を使えば大丈夫!~
ちなみに、この「ERCP」という処置は、胃癌の手術をして、胃を取っている方や、他のおなかの手術で、食道や胃・小腸の形が変わってしまった方では、通常用いているカメラでは対応できません。しかし、当センターでは、「バルーン内視鏡」という長いカメラを使って、胃を切除した後の方でも安心して「ERCP」が行うことができます。
<バルーン内視鏡治療の写真>
当センターで使用しているバルーン内視鏡(FUJIFILM EI-BT580)

レントゲン写真の様子。黄色の矢印が結石です。
バル―ン内視鏡で、術後でも胆管にアプローチすることが可能になります。
レントゲンと内視鏡画面で結石を確認しながら除去します。
今回は閉塞性黄疸に対する内視鏡治療のお話が中心でした。閉塞性黄疸の原因になるそれぞれの病気の詳しいお話については、また次の機会にお話します!