早期食道癌、胃癌、大腸癌も内視鏡で治療〜ハサミ型鉗子を用いたESD〜

ホームページをご覧の皆様、こんにちは。季節はすっかり秋めいてきましたね。今月の東京ベイ・消化器内科web通信は内視鏡治療のお話です。皆様、内視鏡検診は既に受けられていらっしゃいますか。胃や食道をみる胃カメラや、大腸をみる大腸カメラなど検査をするときに登場することが多い内視鏡ですが、今回は内視鏡を用いた治療についてお伝えします。

胃潰瘍の止血や、大腸ポリープ切除など実は様々な治療が内視鏡によって行われています。その中でも、早期癌に対する内視鏡治療は画期的な治療として注目されてきました。テレビなどでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、患者さんによってはお腹を開いて手術をしなくても癌を治せる時代になってきているのです。

体のどこかに癌ができた場合、その癌がどの程度進行しているかを、まずは評価します。この評価をステージングと呼び、各ステージ(病期)によって、治療方法は異なります。臓器や癌の種類によっても治療方法は異なりますが、血液腫瘍など一部の癌を除いて、早期の癌は手術によって取り除けるものは取り除いてしまうのが一般的な考え方です。これは、消化器内科で診療する食道、胃、大腸といった消化管に発生する癌にも当てはまります。そして消化管に発生する癌の特徴のひとつは、今回ご紹介する内視鏡治療で切除できるケースが多いことです。

内視鏡治療のこれまで〜ESDの登場〜

消化器癌に対する内視鏡治療が世に生まれたのは、実はここ日本においてでした。1960年代から開発が始まり、その後すぐに、高周波電流など現在の内視鏡治療で使用される基本手技の開発が進んでいくこととなりました。1970年代になると、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と呼ばれる治療方法が登場します。EMRは、薬液を病変の下層に注入して隆起させ、隆起した病変ごとスネアーと呼ばれる金属のリングで焼灼切除する、現在においてもポリープ切除術において主となる治療方法です。早期癌を治療する上で非常に重要な地位を確立したEMRですが、病変の大きさが1~2cm程度までのものしか切除することができず、大きいものでは根治できる可能性が下がってしまいます。また、無理に切除しようとすると穿孔といって胃や腸に穴が空いてしまうというしまうリスクが高いこともわかっています。安全かつ負担が少ないことが内視鏡治療の必須条件であるとすると、これでは良くありません。

そこで、1990年代に開発されたのが、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)です。より大きな病変を切除するために開発されたESDでは金属製のリングの代わりに、電流の流れるナイフを使用します。このナイフで、薬液で浮かせた病変の周囲および下層を剥ぎ取って治療をすることで、より大きな病変でも切除できるようになりました。内視鏡切除の適応となる病変であれば、良悪性に関わらずESDをすることが可能です。消化管といっても、食道、胃、腸管など臓器ごとに内視鏡治療の適応は異なり、①病変の深さや大きさ、②潰瘍の存在、③組織型などを参考としています。また、臓器によらずリンパ節など他に転移がないことが必要です。

当院では、治療の前に超音波内視鏡を組み合わせることで、より正確な評価を実施し、適応の見極めをできる限り厳密に行っているのも特徴です。超音波内視鏡に関しては別のweb通信もご覧いただけたらと思います。
https://tokyobay-mc.jp/gastroenterology_blog/web12_14/

当院で使用しているデバイスClutch Cutter®〜治療は安心・安全を最優先に〜

ESDの発展に伴い使用する機器(デバイス)も様々なものが開発されてきました。切除を目的としたデバイスとしては、開発当初から現在に至るまでナイフ型が主流となっています。一方で、比較的新しいものとしてハサミ型のデバイスが普及してきており、当院ではハサミ型のClutch Cutter®(クラッチカッター)と呼ばれるものを多用しています。

Clutch Cutter®を使用するメリットは多くありますが、一番は安全であるという点でしょう。つかんだ組織を切断する機能をもつため、ハサミ型とお伝えしましたが、切るだけではなく止血も可能なピンセットといった方がイメージしやすいかもしれません。電気を流すことで切る機能を発揮しますが、スイッチを押さなければ掴んだまま保持することも可能で、穿孔や出血のリスクを最小限にすることが可能です。目標としている病変が常に静止していれば、治療も比較的容易に行うことができますが、消化管自体の動き、あるいは心臓の拍動や呼吸、体動によって病変の位置が瞬間的にずれてしまうことはよくあることなので、安定した治療にClutch Cutter®は非常に有用と考えています。

ESD目的の入院期間は当院では1週間前後を目安としています。多くの癌患者さんに安心して治療を受けていただけるように、今後も安全第一を徹底していくことをお約束いたします。ESDに関して疑問をお持ちの方は、いつでも当院消化器内科医もしくは内視鏡室スタッフにお尋ねください。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 消化器内科

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