超音波内視鏡って?~胃カメラに超音波を装備!より近くで膵臓を見る!~
超音波内視鏡については、5月web記事にも紹介しました。胃カメラに超音波が装備された特殊な内視鏡です。おなかから超音波を当てると、胃や大腸の空気やおなかの中の脂肪が妨げとなり、よく見えないことがあります。特に膵臓は背中側にある臓器で、おなかから超音波を当ててもきれいに見えないことがあります。超音波内視鏡は、空気や脂肪に邪魔をされるという超音波の弱点を克服したものです。まず胃や十二指腸にカメラをすすめます。そうすると、カメラの先端に超音波が装備されているので、より近くで空気や脂肪に邪魔されずに膵臓をみることができます。
膵臓の“できもの”にはどのような種類がありますか?~良性から悪性までさまざま~
ここで言う“できもの”とはいわゆる腫瘍のことです。腫瘍と言われると、“膵癌”を思い浮かべやすいですが、良性から悪性まで様々な種類があります。大別すると、嚢胞性膵腫瘍(袋のようなもの)と充実性腫瘍(塊のようなもの)に分けられます。
代表的なものを示します。
「嚢胞性膵腫瘍の代表」:膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液産生腫瘍(MCN)
「充実性腫瘍の代表」:通常の膵癌、神経内分泌腫瘍
これら以外にも、まるで膵癌のように見える特殊な膵炎(腫瘤形成性膵炎)などもあります。
では、これらの“できもの”をどのような方法で区別するのでしょうか?従来は、CT検査やMRI検査で判断するよりほかありませんでした。超音波内視鏡の普及はこれらの検査に加えて、“できもの”をより詳しくみるための追加情報を与えてくれます。
超音波内視鏡で“できもの”を穿刺して組織診断!~適切な治療を受けるために~
CT・MRI検査や超音波内視鏡検査で、“できもの”のおおよその診断はつけることができます。しかし、まるで“膵癌のようにみえる”特殊な膵炎もまれですがあります。この場合は、手術ではなく別の治療が必要です。もしも、手術や抗がん剤治療などが必要となる場合、より確定的な情報として組織診断が望まれます。本当に悪性なのか、悪性であればどのような種類なのか、といった情報が必要です。適切な治療を受けるためには、適切な診断が重要となります。超音波内視鏡を用いた穿刺吸引細胞診は、この組織診断において高い診断能を発揮します。
超音波内視鏡による穿刺吸引細胞診~高い診断能!~
これまでは、術前に組織診断を得ることはなかなか難しく、CT・MRI検査による診断に基づいて治療方針が決められていました。組織診断を得るためにERCPという検査で、胆汁や膵液を採取して細胞診検査を提出することもありますが、確実な方法ではありませんでした。
超音波内視鏡検査では、胃や十二指腸から膵臓の中の“できもの”を観察し、カメラを通して針を出し入れすることで、組織を採取することができます。従来のやり方は“できもの”を直接刺すものではなかったので、確実な方法ではありませんでしたが、超音波内視鏡検査は直接的に組織を採ることが可能になります。よって、より高い診断能を発揮します。報告によって多少の差はありますが、検体採取成功率:90∼100%、良悪性鑑別診断能:80∼92%と診断能力の高い検査です。
▲EUS-FNAによって採取された検体(日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol.52(7), Jul. 2010より引用) 細胞を染色して(papanicolaou染色)、細胞の良悪性を病理医が診断しています。
超音波内視鏡を用いた穿刺吸引細胞診に合併症はないの?~検査の注意事項~
まれに、内視鏡操作や組織採取による出血、穿孔、感染、癌の播種、麻酔薬等による副作用がみられます。合併症の発生頻度は約1~2%と報告されています(Gastroenterology 2002)。当センターでは、主に鎮痛・鎮静剤を使用した1泊2日の短期入院で検査をお薦めしています。ご不明な点がありましたら、消化器内科担当医にお尋ね下さい。
文責:宮垣 亜紀