がん薬物療法専門医と一緒に目指す「無理をしない」抗がん剤治療〜がん患者さんに寄り添った治療を〜

自己紹介

東京ベイ消化器内科web通信をいつも読んでくださりありがとうございます。
2021年4月より消化器内科/腫瘍内科の医長に着任しました佐々木昭典と申します。

元々、当センターで総合内科及び消化器内科として勤務しておりましたが、2017年より国立がん研究センター東病院で勤務し主に化学療法に携わっていました。主に消化器がんの化学療法を行っていましたが、がんセンター勤務中に肺がん、乳がん、血液がんに対する化学療法にも関わり、「がん薬物療法専門医」という全癌腫に対する化学療法が行える専門資格も取得しました。この病院で働き、がんを患った患者さんが、抗がん剤治療を続けながらも、今まで通りの日々の暮らしを過ごせることができるように、精一杯サポートさせていただきたいと思います。
*主に消化器がんの化学療法を行なっておりますが、乳がんや肺がんなど様々な癌腫におきましても治療を担当しております。

私がこれまで診てきたがん患者さんからは、がんを患ってから、
「抗がん剤治療は辛いだけの延命治療じゃないのか」、「知人が抗がん剤治療をしていたけど、とても大変そうだった」、「髪の毛がなくなるぐらいだったら治療は希望しない」、「抗がん剤治療はずっと吐いて食事が取れなくなるイメージ」といったお悩みを多く聞きます。

こういったがんを抱えている患者さんのお悩みに、同じ目線の高さで共に向き合い、できる限り課題を解決したいと思っております。治療の目標は「辛いだけの延命」ではなく、「今の日々の暮らしを少しでも長く続けられる」であると思っております。
がん患者さん一人一人のお力になれるように頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

化学療法について

抗がん剤によるがんの治療を行うことを化学療法と言います。化学療法には、手術前後に行い根治性を高めるものと、全身に広がったがんの進行を遅らせて、少しでも患者さんの今の生活が長く続くように、がんと共存していくための治療法の2つがあります。

後者の化学療法に関しては、残念ながらがんが体からなくなることはありません。しかし、多くのがんでは、化学療法によって症状が緩和したり生存期間の延長が期待できます。また、化学療法でがんが縮小し、外科手術で根治ができる場合もあります。

近年、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など様々な新規の薬剤が開発され、使用できる様になっています。それに伴い、がん患者さんの予後も改善されております。当センターに受診していただければ、化学療法のメリットデメリットにつきまして、お話をさせていただきます。

化学療法の副作用は?

抗がん剤によるがんの治療を行うことを化学療法と言います。抗がん剤と聞くと「吐き気が凄くて食事が取れなくなる」、「髪の毛が全て抜ける」などのネガティブなイメージが強いと思います。確かに副作用は全くないとは言えません、でも様々な副作用を抑える薬剤が近年利用できる様になっており、以前と比較し患者さんの負担は少なくなってきております。

また、一つのがんに対しても使用できる抗がん剤は一種類だけではありません。色々な抗がん剤があり、副作用に応じて抗がん剤の種類を変更することも可能です。例えば、副作用としてしびれが現れる抗がん剤がありますが、症状が強くなった場合はしびれが出ない抗がん剤に変更し治療を継続していくことも可能です。

このように可能な限り患者さんの副作用を軽減し、治療を継続できる様に工夫をしていきます。副作用に苦しみながら延命をするのではなく、患者さんの「今の生活」を損なう事なく過ごせる様にする事が化学療法の目標です。また、化学療法によってがんが小さくなることで痛みが消えて、元の日常生活を送ることができる様になった患者さんもたくさんいらっしゃいます。

大腸癌ステージ4の生命予後は以前では半年程度と言われていました。しかし、化学療法の進歩により現在は3年程度まで改善されています。そして、今後も新規薬剤の承認により、もっと良くなる可能性もあります。

▲当センターの化学療法室の様子

化学療法はしたくないけど、癌の痛みはとってもらいたい場合は?

化学療法をするかしないかの決定は、患者さん本人の意思決定が最優先です。ご本人が希望されないのに無理に治療を行う事はしませんのでご安心ください。ただ、上記の様に化学療法による症状の緩和や生存期間の延長が証明されており、副作用も薬剤で軽くすることができる様になってきています。

また、化学療法は一度始めたらどんなに辛くても続けなくてはならないというものではありません。一旦化学療法を始めた後も、患者さんの希望で治療を中止することも可能です。化学療法はしたくないけれど、治療によるメリットや副作用に関して一度説明を聞いてみたいという方も是非一度当センターの外来を受診していただければ幸いです。

また、化学療法は希望しないが、がんによる痛みを和らげてもらいたいという方も是非受診をご検討ください。私は日本緩和医療学会に所属し、当センターの緩和ケアチームも担当しております。痛みをとるお薬は強さや形状によって様々な種類があり、各患者さんに一番合う薬剤を処方しますので、ご遠慮なさらずご相談ください。

がん専門病院に紹介してもらうことは可能ですか?

国立がん研究センターなどのがん専門病院での治療を希望される方もおられると思います。その際はご遠慮なく仰ってください。当センターの検査データを含めた紹介状を作成しまして、ご希望の病院に受診できるように手配をいたします。

ただ、大多数の方はがん専門病院に於きましても標準的な化学療法が行われます。これに関しては当センターでも実施することが可能です。また、化学療法は2〜3週間の頻度で定期的に病院に受診し治療を行っていく必要があります。一旦、がん専門病院で治療を開始したけれど遠方で通うことが大変という方は、当センターに言っていただければ、再度当センターで治療をすることもできます。

どちらか一方の病院で治療するのではなく、標準化学療法はご自宅に近い当センターで行い、治験や専門的な治療を行う際はがん専門病院を受診していただくことも可能です。患者さんのご希望に合わせて柔軟に対応をいたしますので、ご相談いただければ幸いです。

当センターの特色

当センターの特徴としまして、なんと言いましても総合内科や救急集中治療科など多くの科が充実しており、それぞれの科に優秀な先生が在籍していることだと思います。患者さんの中には、化学療法治療に、がんによる症状や抗がん剤の副作用によって体調が悪化する方もいらっしゃいます。その際に当センターは24時間対応している救急外来があり、夜間に於きましても救急専門の先生に対応をしていただけます。

また、もし入院が必要となった場合も、当センターは様々な疾患に対して知識を持っている総合内科の先生が担当をしてくれます。例えば、化学療法中の患者さんが心不全や肺炎を合併し入院となった場合でも、総合内科の先生と協力して、がんに対する治療や合併症に対する治療を行っていきます。

がんの患者さんの中には心疾患や糖尿病など、他の病気を治療されている方もいらっしゃいます。これらの病気の治療に関して専門科の先生と協力して診察をさせていただきますのでご安心ください。

最後に

化学療法を行うことの1番の目的は、治療を受ける患者さんが少しでも長く今の日常生活を続けられるようにすることです。がんと診断されるという事は心身共にとても辛い状況であります。患者さんの苦痛を理解し、医学的及び社会的にサポートしていくことが病院の役割であると自分は思っております。化学療法をするかどうか迷っているけど一度話だけでも聞いてみたいという方でも、是非一度受診をしていただければ幸いです。

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