低侵襲検査の極み、「腹部エコー」〜恐れることは何もない〜

外来で「それではお腹の超音波検査をしましょう」と言われたり、健康診断で腹部エコーの検査項目が入っていたりと、みなさんにも比較的馴染みのある検査だと思います。

例えば「食後にお腹の右上が痛くなる」と病院を受診すると問診と身体診察の後、採血検査と腹部エコー検査がオーダーされることがあると思います。初めての方は「腹部エコーで精査」と聞くと「なにそれ、怖い!」「超音波を身体に当てて大丈夫なの?」「痛いの?」などと心配に感じられる方もいるかも知れません。また、腹部エコーを受けられたことがある方でも「最新のCTとかMRIが凄いってテレビで言っていたからそれにしてほしい」など思われる方もいらっしゃると思います。

この記事では腹部エコーがどんな場面で活躍するのか、痛いのか、CTやMRI検査ではいけないのかなど読者の皆さんが気になりそうな疑問に答えていきたいと思います。

Q:どんな検査?
A:迅速、簡便、低侵襲。

正式名称を腹部超音波検査といい、その名の通り超音波を発して跳ね返ってきた信号を映像化することによってお腹の中の構造を観察する検査です。「超音波なんて身体に当てて痛くないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は痛くも痒くもなく、人体になんの有害事象も来しません。強いて言うならば検査時に使用するゼリーがひんやりするくらいです。

検査自体はプローベという機械をお腹に当てるだけで、救急外来では数分、健康診断などでも15〜20分程度で終わります。CTのように放射線被爆の心配もなく、MRIなど磁気を使うわけではないのでペースメーカーなど撮像に伴う制約も伴いません。胃カメラや大腸カメラなどのように検査前の準備、心の準備も必要ありません。簡便にできて、迅速に、たくさんの有益な情報を得られる検査。それが腹部エコーの最大の特徴です。

Q:何がわかるの?いつ行うの?
A:救急外来、通常外来、処置など多用性は絶大です。

腹部エコーでは簡便にお腹の中の様々な臓器(肝臓・胆嚢・脾臓・膵臓・腎臓・膀胱・腸管・血管etc.)を評価することができます。救急外来では外傷による臓器の損傷や腹腔内出血の有無を迅速に評価したり、尿管結石による水腎症の有無を確認したり、腹痛患者さんに胆石・胆嚢炎がないかを評価するなど迅速に対応が必要な場面で活躍します。

皆さんのおなじみの健康診断では肝臓や膵臓に腫瘤ができていないか、脂肪肝、胆石、腹水の有無、脾臓が腫大していないか、腹部大動脈など血管の評価など、じっくり時間をかけて検査します。また、検査以外にもお腹に溜まった水を抜く腹腔穿刺や、入院して肝生検を行う場合など様々な手技でも活躍し、その多用性は非常に高いです。

Q:全部エコーではだめなの?
A:それぞれの検査の特性と使い分けます。

腹部エコーは簡便に行える反面、やはりCTやMRIと比較すると情報量としては劣ってしまいます。一般的な流れとしては、まず腹部エコーを行い、異常を認めた場合にCTやMRIで更に精査を行います。低侵襲で簡便な腹部エコーをまず行うことにより、精査が必要な疾患を抽出し、不必要な被爆や侵襲を減らすことができます。

また、腹部エコーは超音波の反射を用いて映像化している特性上、肝臓、脾臓、腎臓などの実質臓器の評価に長けている反面、空気を含む胃や腸管などの管腔臓器の描出には強くありません。そのため腸管の評価や、腸管ガスで腹部エコーでの描出が困難な場合はCT、MRIや内視鏡検査など行う必要があります。このようにそれぞれの検査にはそれぞれの特性や得手不得手があり、医療者はそれを患者さんの病態に併せて使い分けていきます。

Q:準備は?当日の流れは?
A:特にありません。寝転がるだけ。

特別な準備は必要ありません。健康診断など予定された腹部エコー検査の当日は朝食事を抜いていただきます。理由としては、食事を摂ってしまうと胆嚢が収縮してしまい、また、腸管内にガスや食物残渣が貯留し臓器の描出が困難になってしまうからです。

逆にいうと、それ以外の準備はありません。当日は15分ほど検査ベッドの上に横になっていただき、検査が終わったら普段どおりの生活を送っていただいて構いません。検査後は食事もOKです。

Q:つまり?
A:低侵襲。何も恐れることはありません。

何度も言うように腹部エコーは痛くも痒くもありません。迅速にかつ簡便にお腹の臓器を評価する事ができる非常に有用な検査です。なにも恐れず気楽に受けましょう。しかし、腹部エコーも万能ではないので、それぞれの検査の特性を活かしつつ他の検査と組み合わせて診療を行っていきます。

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