ピロリ菌を退治すれば胃がんは大丈夫?それってほんと?〜除菌後の胃がんリスクにも要注意!〜

みなさんこんにちは。今月の消化器内科web通信は“除菌後胃がん”についてお話します。

突入!ピロリ菌撲滅時代!

除菌後??そもそも除菌って何?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。胃がんの主な原因は、ヘリコバクター・ピロリという1000分の4mmの、ごく小さならせん状の細菌の感染であることが分かっています。ピロリ菌は主に幼少期に口から感染し、胃の粘膜にすみついて慢性的な炎症を引き起こします。加齢とともに徐々に胃炎が進行し、多くは胃の粘膜が萎縮する萎縮性胃炎という状態になります。胃がんが発生するのは、ピロリ菌が感染して炎症をおこした胃粘膜からがほとんどであり、萎縮が進行すると胃がん発生の危険性がより高まります。ピロリ菌を退治する(これを除菌と言います!)には、抗生物質2剤と胃薬1剤の計3剤を1週間内服する必要があります。除菌が成功しピロリ菌がいなくなることで胃の炎症が徐々に軽快し、萎縮を改善し、胃がんの発症が抑制できることが明らかにされており、2013年2月から内視鏡検査でピロリ感染胃炎と診断されれば、保険診療で除菌できるようになりました。現在国内の感染者は約3500万人と推察されていますが、除菌件数は年間約150万件とされており、ピロリ菌撲滅!国民皆除菌時代に突入したと言えるでしょう。

ピロリ菌を除菌すれば大丈夫なの?

患者さん
1週間除菌の薬をしっかり飲んで、無事ピロリ菌を退治できました!これでもう胃がんの心配はないってことですね!
医者
いやいや、そうは問屋が卸さないのですよ。

しかし、「ピロリ菌を除菌すれば胃がんにはならないのか?」と言ったら残念ながらそうではありません。ピロリ菌の除菌で胃がん発生の危険性が1/3〜1/4に下がることは確かですが、胃がんリスクはゼロにはならないのです。これまでの報告では、除菌後に発生する胃がんの頻度は年0.2〜2%と言われています。ピロリ菌がいなくなった時点で、すでに検査では発見できないような極めて小さな“がんの種”ができてしまっている可能性が考えられています。また除菌前の炎症が強ければ強いほど、萎縮が進んでいればいるほど、除菌後も胃がんのリスクは高く残ります。他にも男性、高齢などが危険因子として知られています。

さらに除菌後は粘膜の炎症が軽快するため、がんを発見しやすくなると考えられていましたが、除菌によって胃がん自身も組織学的な影響を受け、色や形が変化し、かえって診断が難しくなる場合もあることがいくつかの施設から報告されています。現在報告されている除菌後胃がんの特徴として、「発赤調・平坦陥凹型・10mm前後の小さいもの」が多いとされています。また組織学的に進行が早いタイプのがんもあり、定期的に内視鏡観察を行っていても進行した状態で発見される病変もあるため注意しなければなりません。

勝って兜の緒を締めよ〜胃がんリスクと闘うために〜

胃がんの予防・撲滅のため積極的にピロリ除菌を行うことが第一ですが、除菌しても気を抜かず、早期発見・早期治療のため定期的な内視鏡検査を受けることを心がけましょう!当科では早期胃がんの内視鏡治療も豊富に行っておりますので、がんが見つかっても早期であれば完治が望めます。“そういえば昔除菌したような気がするな、胃カメラはしばらくしていないな”という方は、ぜひ一度、お近くの消化器内科の先生に相談して胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)をご検討ください!

 

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 消化器内科

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