その症状も、もしかすると逆流性食道炎?〜胸焼けだけじゃない…多彩な症状にご用心〜

東京ベイweb通信をご覧の皆さまこんにちは。消化器内科の藤岡です。今回は、日本人の10人に1人に認められるほど頻度の高い、逆流性食道炎についてご紹介したいと思います。

激増中!逆流性食道炎… それってどんな病気?

逆流性食道炎という病気については、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか?その名の通り、胃の酸が食道に逆流することによって、食道に炎症が生じることで様々な症状を招く病気です。
もともと普段から胃酸に曝され、防御機構が出来上がっている胃の粘膜と違って、食道の粘膜は酸に強くありません。そのため、簡単に胃酸が食道に“逆流”しないように、胃と食道の境目には“下部食道括約筋”という筋肉が備わっています。しかし、なんらかの原因で胃酸が食道側に上がってきてしまうと、容易に食道粘膜は障害を受け、炎症を起こしてしまいます。それが、つらい「燃えるような胸焼け」や、「酸っぱいものが上がってくるような感じ」と言われる症状を来たすことになるのです。

病気のリスクファクターとして、食道裂孔ヘルニア(胃が食道側に持ち上がってしまう病気で、“下部食道括約筋”がうまく働かなくなってしまいます)、肥満、食生活などが知られています。もともと日本では欧米に比べて少ない病気、とされていましたが、食生活の欧米化などの影響で、最近すごく増えてきているとされています。実際に外来でも、「なんだか食後に横になったりすると、すごく胸が気持ち悪い」とおっしゃる方にはよく出会います。

そんな方に胃カメラをすると、こんな風に、胃と食道のつなぎ目のところに、胃酸が逆流したことによる炎症の傷跡が確認出来ることがあります。

クリックすると胃カメラの画像が開きます

“胸焼け”だけじゃない… 逆流性食道炎の多彩な症状

ただ、お話を伺うだけで、「あ、これは多分逆流性食道炎だな。」とはすぐには思わないような、典型的でない症状を訴える患者さんもいらっしゃいます。例えば、「なんとも言えない胸の痛みがあって、狭心症とか、心臓の病気が心配になって循環器内科に行ったけど、心電図もエコーの検査も問題なくて、心臓の問題ではなさそうですよ、と言われた。安心したけど、まだ胸の痛みが続いている…。」「数ヶ月咳が続いていて、肺がんが心配になって呼吸器内科に行ったけど、CTまで撮ってもらったけど問題なくて、咳止めを処方されたけど全然良くならない…。」そんな患者さんの中にも逆流性食道炎が隠れていることがあります。

ちなみに、咳の症状は、胃酸が喉のところまで上がってきて、刺激することで症状を来たす、と言われています。咳の症状が胃薬で良くなる!?なんて嘘みたいですが、逆流性食道炎の治療をしっかりすることで、「原因がわからないけど胸が痛い」「原因がわからないけど咳が止まらない」というような症状がすっかり良くなってしまうこともあるのです。

胃薬だけじゃ治らない!? 難治性逆流性食道炎とは。

ちなみに、胃薬、と一般的に言われるお薬には、漢方薬や、胃粘膜保護薬と言われるもの、整腸剤のたぐいまで、いろんな種類のものがあります。逆流性食道炎の治療に用いられるのは、“胃酸”の分泌を抑制する、いわゆる制酸薬になります。制酸薬を適切な量で内服することで、80-90%の効果が得られるとされています。

ただ、症例が増えるにしたがって、制酸薬をしっかり飲んでも改善しない、“難治性”の逆流性食道炎の方も少なくないことがわかってきました。そういった方にも、まずはお薬を飲むタイミングを変えてみるとか、生活習慣指導(ダイエットや、締りのきつい服を着ないようにする、などなど)で工夫をして見てみることが多いですが、それでも良くならない場合には、他の種類のお薬を追加してみる、専門施設でより詳しい検査や手術などを検討する、ということもあります。

逆流性食道炎は、これまでweb通信で取り上げてきた癌や、急性膵炎、出血と違って、すぐに命に関わる病気ではありませんが、つらい症状を抱えることは、生活の質(Quality of Life)を下げてしまうことになります。「あ、この症状ってひょっとしたら逆流性食道炎なのかしら」と思ったら、ぜひお近くの消化器内科を受診してみてください。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 消化器内科

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