東京ベイweb通信をご覧の皆さまこんにちは。消化器内科の高崎です。9月になってもまだまだ暑い日が続きますね。今回は、当センターホームページをご覧の患者さんやご家族に向けて、“膵臓に生じる火事”と呼ばれる「膵炎」についてご紹介します。今回の記事では主に急性膵炎についてご紹介しますが、慢性膵炎も膵臓がんのリスクという意味では非常に重要な病気ですので、今後のweb更新でいずれ触れたいと思います。
まずは、膵臓について〜どこにあるどんな臓器?〜
ホームページをご覧の皆さまは膵臓がどのような臓器がご存知でしょうか。膵臓は腹部の中で、背中よりに位置する細長い臓器です。様々な消化酵素を含む膵液を消化管に出し、血糖降下作用を持つインスリンを体内に分泌するなど、体にとって重要な役割を担います。また、膵臓がんが生じても、早期の場合はほとんど症状が出ないことから、“沈黙の臓器”の異名を持ちます。
膵臓のコワイ火事、急性膵炎~2大原因はアルコールと胆石、でも稀に膵臓がんが隠れていることも〜
急性膵炎とは、膵臓が何らかの原因で急性(短い期間で)に炎症を起こした状態を指します。急性膵炎の2大原因はアルコールと胆石によるものであることが知られています。他にも薬剤や外傷など種々の原因によって引き起こされますが、いずれも本質は、膵臓が分泌する消化酵素が、消化管ではなく膵臓自体で活性化し、自己消化を起こしてしまうことに起因します。症状としては、腹痛や背部痛で発症することが多く、診断には膵酵素の上昇を採血で確認すること、画像検査により膵臓の炎症を確認することが必要です。膵炎と診断された患者さんは原則入院が必要です。入院後は大量の点滴(炎症に対して大量の水を必要とするのはホンモノの火事と同じです)と、膵炎になった原因に応じた治療を実施します。膵炎は軽症から重症で辿る経過が大きく異なる病気です。軽症であれば、数日で退院が可能な一方で、重症であれば命を落としてしまったり、救命できても数ヶ月の入院治療を要したりすることがあります。
膵炎を治療した後に重要なのは再発を予防することです。例えばアルコール性膵炎であれば断酒が必要となります。急性膵炎の原因としては比較的少ないのですが、膵臓がんも膵炎の原因となることがあります。
原因のはっきりしない膵炎では、膵臓がんなどにより、消化酵素が通る膵管が狭くなったり詰まったりしていないかを追加の検査で調べることもあります。CTやMRI検査が多く用いられていますが、最近では超音波内視鏡検査も一部の施設では使用できるようになってきました。超音波内視鏡検査は、従来の検査よりも診断精度が高いため、膵臓がんを疑う場合にはCTやMRI検査に併せて検査を行うことが推奨されています。しかし、超音波内視鏡検査はまだ新しい検査のため、国内の病院でもできる施設は限られています。膵臓がんの検査として超音波内視鏡検査が可能かどうかは、各施設にお問い合わせください(もちろん当センターでは実施可能です)。
