ハチに刺された!~注意すべき症状と正しい初期対応をERドクターがお話します~

こんにちは東京ベイ浦安市川医療センター救急外来部門です!これから夏に向けて旅行やキャンプなど外でのアクティビティも増えてくると思います。暖かくなると途端に増えてくる“ハチ刺され”についてお伝えします。刺されると大変、1回目なら大丈夫?など多くの方がハチに対しては何となく危険という認識はあると思います。改めてハチに刺された時に気を付けること、そしてどう対応するべきかという観点でお話していきます!

全身の症状が出た!最も危険!!

”アナフィラキシー”. 一度は聞いたこともある人もいると思いますが、全身にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応と定義されています。前回の蕁麻疹・アナフィラキシーの記事も合わせて参考にしてください。

全身の蕁麻疹や掻痒感(かゆみ)、口が腫れるなどの代表的な皮膚症状に加えて息が苦しいなどの呼吸に関する症状、腹痛や嘔吐・下痢などの消化器症状、ふらふらするなどの循環器症状からなります。日本でのアナフィラキシーによる死亡は年間約50名で、その中でもハチ刺傷は最多と報告されており非常に怖いことがわかります。

でもご安心ください。しっかり治療薬はあります。怖いアナフィラキシーに対する第一選択の治療はアドレナリンの筋肉注射になります。アナフィラキシーでは投与の遅れが死亡に寄与すると報告されていますので、生命線ともいえる治療です。実際アナフィラキシーショックの既往がある人にはエピペン(携帯型のアドレナリンキット)を処方し、いざというときに自分で使えるように備えてもらいます。

ハチ毒の場合にはアナフィラキシーによる心肺停止の時間は15分程度との報告もあります。早期治療が必須かつ致死的であることから、ハチに刺されて全身の症状(刺されたところが痛い以外)が出てきた場合にはすぐに救急車を呼んで病院受診をしてください。またハチ刺され1回目であってもアナフィラキシーをきたすことはありますので、“初回だから大丈夫”ではないことも覚えておいてください。

刺されたところが痛い!

局所の発赤と痛みを伴う腫れが刺されてから数分以内に出現して、数時間以内に消失します。腫れを悪化させないように冷却や挙上をする、入浴や飲酒は避けるなどの処置、そして疼痛や掻痒感への対症療法をします。

約10%の割合で広範囲の局所反応となることがあります。刺された場所の赤みや腫れが急激に進行します(約10㎝まで)。どんどん悪くなる場合に上記に加えてステロイド薬内服も検討されるので、引き続き医療機関を受診する必要があります。

予防が一番大事!

その上でやはり大事かつ最も救急医として伝えたいことは“刺されないようにすることが一番大事”ということです。注意点としては代表的なものを挙げると以下があります。

  • 屋外では靴を履く、長袖を着るなど皮膚をしっかり覆う
  • 黒色の衣服を着ない
  • 香水や果実・飲料など甘い匂いが発するのを避ける

厚生労働省鳥取労働局から蜂刺され予防の記事もありますので合わせて参考にしてもらえればと思います。
蜂刺され災害を防ごう(厚労省 鳥取労働局):https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/content/contents/2_hachi.pdf

これから楽しい夏が始まりますね!ぜひ夏を満喫して健やかに過ごしていただくためにも、蜂刺されには気をつけて、いざという時の対処法も記憶にとどめて置いてください。ただ、気を付けていても刺されてしまうこともあると思います。その時は上記の初期対応をしつつ、早めに救急外来を受診するようにしてください。もちろん当院でも緊急対応をしっかりさせて頂きます。

参考文献
Up To Date: Bee, yellow jacket, wasp, and other Hymenoptera stings: Reaction types and acute management.
Philip M. Buttaravoli MD, FACEP, Stephen Leffler MD, FACEP and R. Ramsey Herrington MD, FACEP. Minor Emergencies, Chapter 173, 758-762
アナフィラキシーガイドライン2022. 日本アレルギー学会
厚生労働省 鉢刺され災害を防ごう:https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/content/contents/2_hachi.pdf
画像引用:https://www.photo-ac.com/

メニュー