「頭をぶつけた!」CT検査は本当に必要?〜ERドクターと考える頭部外傷〜

こんにちは!東京ベイ・浦安市川医療センター救急外来部門です。
「頭をぶつけました!」と訴え救急外来を受診される患者さんは珍しくありません。原因は様々ですが、何らかの力が加わって頭皮や皮下組織、頭蓋骨、脳などに損傷が起こることを「頭部外傷」と言います。頭部外傷はお子さんから高齢の方まで年齢層は幅広く、軽症から重症まで重症度や病気の種類も様々です。今回はそんな頭部外傷について、私たち救急医がどのように考え向き合っているのかをお伝えします。

・「頭をぶつけた」はなぜ怖い?〜頭部外傷は何を引き起こすのか?〜

頭部の構造は外側から大きく頭皮、頭蓋骨、脳の順番になっています。
頭皮の外傷としては皮下血腫(たんこぶ)、皮膚が切れてしまう頭部切創、割創、挫創などがあります。傷の大きさや深さによっては止血処置や縫合処置が必要になります。

頭蓋骨の外傷としては骨折があります。ひびが入る程度の線状骨折から複雑に頭蓋骨が割れてめり込んでしまう陥没骨折、頭蓋底骨折などもあります。骨折をする程の外傷ですから、多くの場合は入院加療となります。複雑な骨折や陥没骨折は手術が必要になることもあります。

頭蓋内の病変としては、脳を保護する硬膜の外や内側に血の塊(血腫)ができる硬膜外血腫や硬膜下血腫、脳に損傷が及ぶ脳挫傷や脳内血腫、脳が揺さぶられることで起きる脳震盪などが起きます。経過観察になることもありますが、血腫が大きい場合や拡大傾向が見られる場合は手術になることもあります。

・「頭をぶつけた」後に「するべき検査」と必要性〜頭をぶつけたのに本当にC T検査をしなくて大丈夫?〜

救急外来では「頭をぶつけたけどC T検査をしなくて大丈夫ですか?」と患者さんから尋ねられることがしばしばあります。頭部C T検査は短時間で病変の評価や検索が可能な検査ではありますが、頭部外傷の患者さん全例で行うのは現実的ではなく、医療被曝やコストの観点からも不必要なC T撮像は減らすべきだと言われています。

当院の救急部門ではカナダの頭部CTルール、ニューオーリンズ基準などを参考に頭部CTの適応を決めています。具体的には高エネルギー外傷、意識障害、骨折所見、麻痺などの神経症状、痙攣、健忘、繰り返す嘔吐、頭痛、高齢者、血液サラサラの薬を内服(抗血小板薬)などに当てはまる場合は積極的にCT検査を行なっています。

頭部外傷の原因は交通事故、転落、転倒、虐待など多岐にわたります。私たち救急医はそれがなぜ起きたのかにも常に目を光らせています。単にバランスを崩したり躓いたりしただけなのか、それとも実は失神や痙攣していないか、何らかの感染症や基礎疾患が隠れてないかなどを詳細な問診やバイタルサイン、身体所見を参考に考えています。何らかの疾患の結果、頭部外傷が起きたと考えられる場合は採血、心電図、超音波検査、その他の画像検査などを適宜追加して原因究明に努めています。

・「頭をぶつけた」など、お困りorお悩みのことがあればいつでも頼って下さい!

当センター救急部門は24時間365日対応しており、いつでも診察、検査、治療をさせていただきます。当センターの救急医はどんな頭部外傷にも適切な対応を行えるよう日々研鑽を積んでおります。しかしながら、診察後に危険な頭部外傷でないと判断しても、後から症状が現れる可能性もあります。そのためご帰宅頂く場合にも、どのような症状があればすぐに受診して頂く必要があるか、状況に応じた対処法や注意事項を記載した「帰宅指示書」を渡し説明させて頂いています。

以上、様々な病気の可能性がある「頭部外傷」についてお伝えしました。ご不明な点やご不安なときはいつでもお気軽にご相談ください。

▲当院でお渡ししている帰宅指示書の例(一部抜粋)

参考文献
日本外傷学会, 他監:改定第6版外傷初期診療ガイドラインJATEC.へるす出版
UpToDate: Acute evaluation of an adult with mild head trauma
Smits M, et al.: JAMA.2005 Sep 28;294(12):1519-25.

画像引用:https://www.photo-ac.com/

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