こんにちは!東京ベイ・浦安市川医療センター救急外来部門です。
皆様体調はいかがでしょうか?未曾有の感染症も相まって、食事や運動など生活習慣が乱れ気味になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、今回は、生活習慣や社会環境の変化に伴って急増している「糖尿病」についてお話ししたいと思います。
糖尿病とは、インスリンという血糖を正常に保つ役割をするホルモンの量や作用不足が原因で血糖値が慢性的に高くなってしまう病気です。
糖尿病の恐ろしさは、重篤な合併症に進展する可能性があることです。
網膜症・腎症・神経障害といった三大合併症の他、心筋梗塞をはじめとした心臓や脳などの血管病のリスクも高まります。通常、心筋梗塞や狭心症は「胸の痛み(胸痛)」で気づくことが多いですが、糖尿病の患者さんの場合は明らかな胸痛症状が出ず、食欲不振や嘔吐症状といった胸の病気を疑いにくい症状しか感じず発見が遅れることもあります。
それらの糖尿病の血管合併症を重症化させないために重要となってくるのが普段の血糖管理です。血糖値を適切に維持することができれば、糖尿病であっても長期的に合併症を抑えることができ、そのためには一人一人に合った内服、注射薬治療が重要です。今日は、救急医の視点から、注意していただきたい「糖尿病の救急」について説明します。
1)高血糖
まず高血糖に関する救急疾患を紹介します。具体的には糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高血糖高浸透圧症候群(HHS)という病気になります。最も多い原因は感染症や脱水ですが、心筋梗塞や脳卒中などの病気により引き起こされることもあります。症状としては嘔吐や食思不振に加え、重症になると意識障害を来すこともあります。血糖の補正に加えて厳密な電解質の調整などもあり、場合によっては集中治療室やそれに準じた病室での治療が必要になる場合があります。

2)低血糖
次に低血糖についてです。数値として血糖値が60-70mg/dL以下になった状態のことを指します。主な症状として冷や汗・手足のふるえ・動悸などの症状の他、脱力感・眠気・眩暈といった症状が現れます。この場合にも意識障害を引き起こすことがあります。

引用:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
URL: https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/050/05.html
この低血糖症状の緩和には、ブドウ糖摂取が効果的です。
血糖をあげるためには飴玉やチョコレートなどもすぐに効果が出にくいため、ブドウ糖を常備しておくといいですね。
ブドウ糖摂取後10~15分程で血糖値は回復しますが、インスリンの種類や内服薬によってはまた低血糖を起こす場合があります。繰り返す場合にはすぐに病院を受診して下さい。
また、もしものときのために、家族や職場の人にも低血糖時の対応を知らせておくのもよいでしょう。日本糖尿病協会では、緊急時に備えた「糖尿病IDカード」を発行しているので、携帯することもおすすめです。

3)体調不良な時は?(シックデイ)
血糖管理に関連して、シックデイについてもお伝えします。
シックデイとは、糖尿病患者さんが発熱や下痢・嘔吐をきたしたり、食欲不振のために食事ができなくなったりするなどの体調不良の状態になることです。
シックデイでは、普段よりも血糖値のコントロールが難しくなります。
食事量が減っているにも関わらず、いつも通りに血糖値を下げる薬やインスリン注射を使用した場合は、低血糖に陥る可能性があるので注意が必要です。
シックデイのポイントとしては、
①食事や水分(1~1.5L)をできるだけ摂る。またおかゆやゼリーなど炭水化物もできるだけとるように心がけてください。
②血糖自己測定を3~4時間おきにし、こまめにチェックしてください。
③食事がとれない場合には特定の薬(メトホルミンやSGLT2阻害薬、SU薬など)は中止してください。
④インスリンについては持続型インスリンについては継続、超速効型・速効型インスリンについては全く食事がとれない場合には中止、主食が半量程度とれれば半量に減量してください。
糖尿病を持っている患者さんが感染症や嘔吐などで食事がとれない状況があると感染症が重症化したり、前述のDKAやHHSという病気になったりすることがありますので早めに受診を心がけましょう。
また普段からかかりつけの先生と調子が悪くなった時にどの薬を飲むべきか、インスリンの量をどのように調整するか予め話し合っておきましょう。
また当院の腎臓・内分泌・糖尿病内科のHPにも糖尿病について紹介されていますのでご参照ください。
https://tokyobay-mc.jp/nephrology_endocrinology_blog/web07_11/

以上のように紹介いたしましたが、糖尿病のある患者さんがなにかしらの体調不良がある場合には重症な病気がかくれているかもしれません。不安な時は早めのお近くの医療機関の受診をお勧めします。
当院の救急外来もいつでも対応しております。
参考文献
1)糖尿病治療の手びき2020/日本糖尿病学会
2)糖尿病治療ガイド2020-2021/日本糖尿病学会
3)糖尿病療養指導ガイドブック2021/日本糖尿病療養指導士認定機構