腰痛の見分け方、救急医がお話します ~その腰痛、本当にぎっくり腰?それとも危険な病気?~

こんにちは!東京ベイ・浦安市川医療センター救急外来部門です。
今回は誰もが悩まされたことのある「腰痛」について、救急医がどのように向き合っているのか、そしてどのような時に病院を受診すべきなのか、お伝えしていきます。

腰痛は非常に一般的な症状であり、実に80%以上の人が一生に一度は腰痛に悩まされるといわれています。その殆どが自然に治りますが、痛みで日常生活に支障をきたす場合がありストレスになります。いわゆる「ぎっくり腰」は重い物を持ち上げたり腰を捻ったりしたときに突然生じる腰痛で、レントゲンやCT検査などでは特に異常が見つからないものを言います。ぎっくり腰は数週間以内に自然に改善し、体を動かすようにすると回復が早まると言われています。痛みが強い場合はNSAIDs(ロキソニン®、ボルタレン®、セレコックス®など)とよばれる鎮静薬を服用することで痛みを軽減することが可能です。

・いろいろあります、腰痛の原因

腰痛は背骨やその周りの筋肉、神経が原因だと思われている方が多いと思いますが、血管や内臓の病気によって生じることがあります。例えば、激しい腰痛とともに尿に血が混じっていたり、吐気や下腹の痛みを伴っていたりした場合は、尿管結石の可能性があります。

また、特に気をつけなければいけないものとして、以下の項目は腰痛の危険信号と呼ばれ、当てはまる場合は緊急での治療が必要な整形外科疾患(神経症状の強い腰椎ヘルニアや癌の転移や感染症)、重大な血管や内臓の病気を見逃さないように注意が必要です。

  • 発熱
  • 20歳以下または55歳以上
  • 時間や運動によらず持続する腰痛
  • 胸痛を伴う場合
  • 癌の治療中、免疫力が低下している状態(ステロイドを内服、HIV感染、血液疾患など)
  • 体重減少
  • 広範囲に及ぶ神経症状(下肢のしびれや痛み、脱力、排尿・排便感覚の異常)

特に危険な状態と判断されるのは、下半身の神経症状(足に力が入らない、排便排尿時の感覚がわからない)を伴う腰痛や、胸痛や腹痛を伴う腰痛です。

足のしびれや脱力感を伴う場合や、排尿をしたいのに出来ない、残尿感がある場合、また排便をしている感覚がない場合には脊髄の障害が起きている場合があります(馬尾症候群と呼ばれます)。原因として脊椎の圧迫骨折や、脊髄の周囲の出血や、細菌感染、脊髄の腫瘍や癌の転移などがあります。

胸痛を伴う腰痛、特に突然発症で痛みの位置が移動する症状がある場合や裂けるような痛みの場合急性大動脈解離の可能性があります。また、今までに腰痛を感じたことのない中高年の方が運動などを誘引とせず、突然腹痛や立ちくらみを伴う腰痛が出現した場合は腹部大動脈瘤破裂かもしれません。
その他にも発熱を伴う場合は、脊椎に感染が及んでいる場合や腎臓などの臓器の感染症の場合があります。

・どんな検査をするの?

上記の危険信号に当てはまらず、事故や怪我などの場合は骨折の有無をレントゲン撮影します。
骨ではなく筋組織の障害が腰痛の原因と思われるエピソード(「重いものを持ち上げた」、「腰を捻った」など)があればレントゲンは行わないことがあります。

ただし、レントゲンだけでは骨折がわからない場合があり痛みが強く骨折かもしれない場合はCT検査を行う場合もあります。腰痛以外の症状や身体診察をした上で場合によっては血液検査や心電図検査、超音波検査、CT検査を行います。神経症状がある場合、MRI検査を行う可能性があります。

また発熱を伴う場合については採血・尿検査、場合によってはCT・MRI検査など感染の原因となる部位の特定に至る検査を行うこともあります。

・いつ病院に行けばいい?

これまで腰痛の原因をお話してきましたが、いつ病院にかかればいいのでしょうか。危険信号に当てはまる方はすぐに病院受診をする必要があります。特に危険な状態と説明した症状がある場合は、対応が遅れれば後遺症が残る、また命に関わる危険性があります。1分1秒を争うため、迷わず救急車を要請することが重要です。

ではそれ以外のときはいつ病院を受診すればいいでしょうか。答えはいつでもOKです。どの地域であっても救急病院の門戸はいつでも誰にでも開かれています。もちろん当センター救急部門も24時間365日対応しており、腰痛が辛いときにはいつでも診察、検査、治療をさせていただきます。当センターの救急医はどんな腰痛にも適切な対応を行えるよう日々研鑽を積んでおります。

しかしながら、診察後に危険な腰痛でないと判断しても、後から症状が現れる可能性もあります。そのためご帰宅頂く場合にも、どのような症状があればすぐに再診して頂く必要があるか、状況に応じた対処法や注意事項を記載した「帰宅指示書」を渡し、説明させて頂いています。

以上、様々な病気の可能性がある「腰痛」についてお伝えしました。ご不明な点やご不安なときはいつでもお気軽にご相談ください。

参考文献
UpToDate:Patient education: Low back pain in adults (Beyond the Basics) (Topic 705 Version 46.0 2021/12/1閲覧)
腰痛診療ガイドライン2019 改定第2版

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