熱中症〜真夏のマスクは逆に危険!?救急医と考えるwithコロナ時代の熱中症予防〜

こんにちは 東京ベイ・浦安市川医療センター救急外来部門です。

「71,317」

突然ですが、この数字、何を表しているのでしょうか?
これは2019 年5月〜9月の全国における熱中症によって救急搬送された方の数です。毎年(2018年は9万人以上でした。)これだけ多くの人々が熱中症によって救急搬送されているのです。特に今年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言による外出自粛で、体が暑さに慣れないまま暑い季節に突入するためリスクが高いと考えられています。そこで今回は、熱中症について、どのように注意すべきか、ご紹介します。

ポイント

熱くない日でも、室内でも熱中症になる
スポーツ活動など激しい運動では短時間でも熱中症のリスクとなる
体調に異変あれば早めに休憩・水分補給
予防は暑さを避けること、特に高齢者に注意
応急処置は体を冷やして水分補給、場合によっては素早く医療機関へ
マスクの使用は適切に

1. 熱中症になりやすい環境に注意

・「熱くない日」でも!
人の体は湿度やスポーツによる体調変化、栄養・健康状態、水分補給の状態によって大きく影響を受け、熱中症をきたします。気温や湿度が高い環境がリスクですが「暑くなり始め」の時期の発症が多いので注意が必要です。

・「室内」が一番多い!
総務省の統計によると、発生場所別では住居が最も多く、次いで道路、公衆(屋外)、仕事場の順となっています。熱中症で亡くなる方の8割は室内での発症であるという事実は注目に値します。

・老若男女!
救急搬送をされた方の年齢区分別では高齢者が最も多く、次いで成人、少年、乳幼児の順となっています。高齢者の方は暑さを感じにくくなりやすいと言われているものの、乳幼児から若いスポーツ選手の身にもしばしば発生します、全年齢で起こりうると認識したほうがよいでしょう。

2.熱中症の初期症状に注意

気温・湿度が高い環境にいた後に起こる以下のような症状は熱中症である可能性があります。
「手足がしびれる」
「めまいがする」
「立ちくらみがある」
「筋肉が痛い・こわばる」
「吐き気がする」      など…

このように熱中症の初期症状はさまざまです。熱中症の重症度はI度(軽症)〜III度(重症)に分類されI度であれば水分摂取で改善しますが、ぐったりしている場合はII度(中等症)以上の可能性があり病院受診が必要です。病院を受診して臓器症状があればIII度(重症)です。

3.熱中症への対策

・予防のためにできることは?
熱中症対策でなによりも大事なのは適切な予防をすることです。
家ではエアコン、扇風機、冷水シャワーを使用しましょう。これら設備が使用できない場合は、ショッピングモールや映画館に行くこともひとつの手段です。また、高齢者を孤独にしないことも大事だと言われています。

運動をする際に暑い時間帯を避ける、できるだけ風通しのよい服装にする、こまめに水分・休憩を取る、予兆が見られれば運動を避けるといった、環境要因を取り除くことが重要です。

・どう対処するの?
①本人が呼びかけに反応しない場合は救急車を要請してください。救急車到着を待つ間に下記の応急処置を試みましょう。
②日陰などの涼しい場所に移動し、衣服をゆるめてください。
③水分を自力で摂取できない場合は医療機関を受診してください。できる場合は塩分の入ったドリンクを補給してください。首や腋窩など大きな血管の通り道を冷やします。

・マスクについて
アメリカのCDCでは無症状の人も人のいるところではマスクをつけることが推奨となりましたが、屋外で、人との距離を2M以上とれる場合は基本的にマスクは不要です。また、小児のマスク着用は特に気をつける必要があり、特に2歳未満の乳幼児の場合は窒息の危険が高まるため布マスクは使用すべきではありません。

東京ベイの救急外来では、来院された方が受診してよかったなと思える治療を提供できるように、医師、スタッフ一同、引き続き努力してまいります。
当センターを受診してくださる患者さん、ご家族をはじめとした地域の皆様、これからも東京ベイERをどうぞよろしくお願い致します。

<参考文献>

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科(救急外来部門)

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