こんにちは! 東京ベイ・浦安市川医療センターの救急外来部門です。東京ベイの救急外来(ER)は24時間365日受診が可能です。時間帯によっては混雑していますが、来院された方により良い医療を提供し、受診してよかったなと思って頂けるように努力しています。今年度はよくある病気や怪我に対しての簡単な対処方法などについて解説していこうと思います。
今回は「めまい〜急にめまいを感じた時に気をつけるべきポイントとは〜」です。まず、めまいを感じた時は何科に受診すれば良いのでしょう?とりあえず内科に受診してみるでしょうか?脳外科を受診してみるでしょうか?はたまた耳鼻科に受診してみるでしょうか?一般的には耳鼻科になるのかもしれませんが患者さん御自身が何科を受診すべきかと判断するのはとても難しいです。
当センターでは急な症状の場合は救急外来にまず受診していただくことになります。救急外来では緊急性の判断のみならず、適切な診断を心がけており緊急性がなくとも適切な専門科へ行くという流れを取っています。めまいを主訴に受診する患者さんは救急外来の中でも一般的なので救急医の視点からめまいを感じた時に気をつけるべきポイントなどについてお話ししたいと思います。
まずはめまいで受診する患者さんの具体例をあげてみます。
など、さまざまな状況でめまいを感じ、救急外来に受診します。
①めまいの原因って何?何科の病気なの?
救急外来に受診するめまいの原因を調べた統計では、その原因は
となっています。
“その他”は色々な疾患がまとめられていますので統計的には耳鼻科、精神科、脳外科(もしくは脳神経内科)の順番になるようです。この順番をみてもわかりますように原因は多岐に渡ります。そのため患者さんご自身で判断するのが難しいのです。
それはめまいという言葉が非常に多くの症状を表していることによります。医学的には”めまい”と”ふらつき”のどちらかに分類されることが多いです。
古くはこのように分けることでめまい=耳鼻科、ふらつき=脳外科もしくは神経内科という考えでした。しかし実際はこのような自覚症状の訴えだけでめまいを正確に分類するのは困難であるということが知られています。めまいの症状の訴えはその時々によって変わり、人によっても表現が異なることが多いためです。
次に頻度の多いめまいの病気を解説します。めまいの原因としてもっとも多い病気は“良性発作性頭位変換めまい症”(BPPV)という長い名前の病気です。この病気は100人のうち1-2人が経験すると言われています。“良性発作性頭位変換めまい症”は頭位の変化でめまいが生じ、難聴や耳鳴りを認めません。ポイントはじっとしていれば数秒間から3分程度しか症状は続かないということです。このようなめまいの場合はめまい体操などリハビリが効果的なことがあり、医療機関ではエプリー法という耳の石を元の場所に戻す頭を動かす治療をします。
大半のめまいは中枢代償と言って、頭がめまいになれるように勝手に調整してくれるので数時間すれば改善することが多いのですが、最初の段階では危ないめまいかどうかわからないと思います。ちなみに名前が有名なメニエール病は多く見積もってもBPPVの1/5程度でそこまで多くはない印象です。
次に
②どのようなめまいが危ないめまいか?
について考えたいと思います。受診すべきかどうか迷ったときに、どのような場合に受診したら良いのでしょう?以下のような場合は速やかに受診したほうが良いでしょう。
めまいという訴えは日常生活でも使ったりする言葉です。目の前が真っ暗になる場合は頭に血が行っておらず医学的には失神もしくは失神前状態なのですがこれもめまいと訴えられることがあります。失神だと心臓の病気のことがあるので要注意となります。
ずっと持続するめまいの場合は頭の病気の可能性があります。じっとしていても良くならないめまいの場合・頭痛・嘔吐を繰り返す場合・脳梗塞を疑う症状も頭の病気の可能性が高いので心配になります。①で登場したBPPVは数分で落ち着きますので、1回のめまいの持続時間は原因を調べるのにとても大事な情報です。
次にめまいとして緊急性は高くありませんがよくある乗り物酔いに関して説明します。
③乗り物酔いしやすい体質の場合はどうしたらいいの?
めまいの予防についてお話しします。乗り物酔いしやすい体質の方はいらっしゃいます。片頭痛持ちの50%が乗り物酔いを経験し、妊娠中も含めて女性はなりやすいと言われています。めまいがどのように起こるかを考えるとわかりやすいので簡単に説明します。
人間がどのようにバランスを保っているかというと
この3種類の感覚を頭の中で計算し無意識のうちにバランスを保つといわれています。
乗り物、例えば車・船・バス・遊園地の乗り物に乗ると揺れによって、耳の中のリンパ液が振動します。そうすることで目に見えてる情報と耳の奥のバランス情報が混乱してしまうことが原因だと言われています。乗り物酔いの症状としては、ふらつき・げっぷ・唾液が増える・汗をかく・全身倦怠感などがあります。予防方法としては環境の調整と薬を飲んでしまうことになります。
環境の調整とは具体的には
めまい止めの薬としてトラベルミンやアネロン(抗ヒスタミン薬)が有名ですが、これらはめまいを感じにくくする、もしくは吐き気を抑える作用があるといわれています。また生姜キャンディは海軍候補生が使用するとめまいが減ったという研究もありますが、効くかどうかは個人差があると思われます。こうした薬やキャンディは乗り物酔いしやすい体質の場合は使用を検討しても良いでしょう。
以上めまいのポイントとして
となります。
めまいを自覚し症状の判断が難しければお気軽に受診してください。
東京ベイの救急外来部門は住民のみなさまの健康を守ります。
今後ともよろしくお願いします。
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参考文献
Up to date: Motion Sickness (2018/9/14閲覧)
South Med J. 2000 Feb;93(2):160-7; quiz 168.
Mayo Clin Proc. 2007 Nov;82(11):1329-40.
Brain. 1984;107 ( Pt 4):1123.
書籍:めまいのシンプルアプローチ
日本神経治療学会 標準的神経治療:めまい https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/memai.pdf (2018/9/14参照 )
文責: 救急集中治療科:救急外来部門 石上 雄一郎