こんにちは! 東京ベイ・浦安市川医療センターの救急外来部門です。東京ベイ救急外来(ER)は24時間365日受診が可能です。時間帯によっては混雑していますが、来院された方により良いの医療を提供し、受診してよかったなと思って頂けるように努力しています。今年度はよくある病気や怪我に対しての簡単な対処方法などについて解説していこうと思います。
今回は「歯ブラシが刺さって口から血が出たら?」です。救急医の視点から歯ブラシが口に刺さってしまった時に気をつけるべきポイントを中心にお話ししたいと思います。子供の口の中や喉のけがはけがの全体の1%と言われています。歯ブラシ以外のものでももちろん起こります。鉛筆・ペン・アイスの棒・ストロー・キャンディの棒などが報告されています。
などが考えられます。
考えただけでも怖いかもしれませんが、実際にそのような患者さんは時折いらっしゃいます。実際にはどのような子供に多いのでしょうか?
①1-3歳は特に歯ブラシで歯を磨きながら歩いて転倒する事故が多い
消費者庁の報告では2010年から2016年の6年間で139件が報告されているとのことですが受診に至らない多くの患者がいると思われます。その統計では1歳児が64例と約半数、2歳児が42例、3歳児が17例と報告されています。ここから小さい子供は特に歯ブラシで歯を磨きながら歩くことは危険だと考えられます。さて実際にけがをしてしまった場合にはどのようなことに気をつけて受診すれば良いのでしょうか?
②どんな風にしてどこに何が刺さったか?
まず何が刺さったかは非常に重要です。そのため刺さった実物を持ってくるか、同じものを持ってきてくださると助かります。どんな長さでどれくらい刺さってるかを確認するのに有用だからです。
続いて「どんな風に」ですが、つまずいて膝から倒れたのか、ジャンプして落ちたのかなどによってけがのエネルギーが変わってきますのでできるだけ詳細に教えて欲しいと思います。実験では1歳相当の2.6kgの重りをつけた歯ブラシが50cmの高さから落下すると歯ブラシの先にかかる重さは80kgにもなるという結果もあります。口の中、特に奥の方は重要な血管や臓器がありますのでどこに刺さったかはとても重要です。刺さる場所は口の上の火傷する部分(硬口蓋)、俗に喉ちんこと言われる部分付近(軟口蓋)、口の横の頬の内側・喉の一番奥の咽頭後壁のどこかに刺さることが多いようです。また同時に歯・顎・舌もけがしていることがあるので評価します。
③何か症状を訴えてないか?
などがあれば損傷によって重篤な損傷が起こっている可能性があります。具体的には刺さった傷から菌が入って膿みの塊ができることがあります。また近くを走っている首の動脈にダメージがあった影響で脳梗塞になることもあると言われています。これらの症状はすぐになることはないのですが数日経ってから出ることがあるので注意が必要です。傷については口の中の傷であれば2cm以上の大きな傷や深い傷であれば縫うことはありますが通常は縫わなくても自然に改善することが多いです。口の中に傷ができた際は一度受診して評価を受けると良いでしょう。ではどのように予防すれば良いのでしょうか?
④座って歯磨きをするように指導して事故を予防する
当たり前の話ですが座って歯磨きをしていればこうしたエネルギーの高い損傷は起こりません。できるだけ歯を磨いてる間は座るように子供に習慣をつけるようにしましょう。最近では歯ブラシ自体が柔らかく曲がるものや、刺さらないうようなストッパーも販売しています。ただ全ての歯ブラシをそのように変更するのは現実的ではなく、座って歯磨きするが一番だと思います。
以上の様に歯ブラシが口に刺さってしまった時に気をつけるべきポイントは
となります。
東京ベイの救急外来部門は住民のみなさまの健康を守ります。
今後ともよろしくお願いします。
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参考文献
Up to date: oropharyngeal trauma in children
NPO法人 SAFE KIDS worldwide japan
ホームセーフティー100
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消費者庁子供を事故から守る!!事故防止ハンドブック アブナイカモ
文責: 救急集中治療科:救急外来部門 石上 雄一郎