水回りの事故〜子供が溺れてしまったら〜

こんにちは!東京ベイ・浦安市川医療センターの救急外来部門です。東京ベイ救急外来(ER)は24時間365日受診が可能です。時間帯によっては混雑していますが、来院された方により良いの医療を提供し、受診してよかったなと思って頂けるように努力しています。今年度はよくある病気や怪我に対しての簡単な対処方法などについて解説していこうと思います。

今回は「水回りの事故〜子供が溺れてしまったら〜」です。救急医の視点から子供が溺れてしまった時に気をつけるべきポイントを中心にお話ししたいと思います。まず、子供はどのような環境で溺れてしまうのでしょうか?

・お風呂場の浴槽へ転落して溺れてしまう
・入浴時に大人が目を離した隙に溺れる
・洗濯機、バケツ、洗面器などによる事故
・ビニールプールやプールでの事故
・海や川での事故
・ため池・排水溝・浄化槽での事故

などが考えられます。
溺れることを医学用語で溺水(できすい)といいますが、溺水は一般的に抱かれているイメージとは異なる点があります。

①子供はバシャバシャすることなく静かに溺れる

こちらはとても重要なことで、映画のように溺れるときにはバシャバシャもがくのは典型的ではありません。溺れている状況もわからず、呼吸に精一杯で声を出すこともできないかもしれないのです。これは本能的溺水反応と言われており、ライフガードを10年間していたFrank博士が提唱した概念です。溺れたら子供が泣く、騒ぐから気づくだろうと思って隣の部屋にいる間に子供が溺れるかもしれず、この認識の誤りはとても危険です。
では目の前で子供が溺れていたらどのように対応すれば良いのでしょうか?

②平らな場所に寝かせた後に、意識を確認し、なければすぐに救急車を呼ぶ。

漫画のようにお腹を圧迫して水を出すことを昔はしていましたが最近はそのような治療をすることはありません。何も症状が出てなくても後から呼吸器症状などが出ることもありますので、一度病院で診察を受けてもいいかもしれません。もし息をしていない、異常な呼吸の場合は胸骨圧迫を開始したほうが良いでしょう。また、救急搬送時に溺水の患者で我々が知りたいと思う重要な情報は以下のような情報です。

・水の温度はどれくらいだったか?
・水は汚染されているか?
・沈んだ瞬間の目撃があるか?
・首やそのほか怪我がないか?
・どれくらいの時間沈んでいた可能性があるか?
・溺れる前に頭痛や胸痛など症状がなかったか?
・溺れた後に咳や呼吸困難感がないか?

搬送前にできる限りこれらの状況を把握して頂けると助かります。呼吸の状態が悪い場合は肺炎をこじらせたりすることもあるため入院することが多いです。
その一方で一番いいことは溺れないことです。どのようにして子供が溺れてしまうのを防げばいいのでしょうか?

③あらかじめ水を抜いておく。目を離さない。

子供はバケツや洗濯機に溜まったわずか10cmの深さの水でも溺れてしまいます。大人が洗髪している時や着替えを取りに行ってる時や電話に出ている間などの僅かな時間に溺れるのです。そこでできる対策として、

・洗髪中は子供を浴槽から出す。
・使用後の洗濯機から水は抜いておく。
・子供が浴室に入ってしまい、浴槽を覗き込み転落し溺れることがある。浴室には外側から補助鍵(手が届かない位置)を取り付け子供が中に入れないようにする。
・トイレで便器の蓋をしめておく
・浴槽やビニールプールの水はあらかじめ抜いておく

などをご検討ください。

以上の様に子供が溺れてしまった時に気をつけるべきポイントは

①子供はバシャバシャすることなく静かに溺れる。
②平らな場所に寝かせた後に、意識を確認し、なければすぐに救急車を呼ぶ。
③あらかじめ水を抜いておく。目を離さない。

となります。

東京ベイの救急外来部門は住民のみなさまの健康を守ります。
今後ともよろしくお願いします。

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参考文献
Up to date: Drowning
NPO法人 SAFE KIDS worldwide japan
ホームセーフティー100
子供に安心をプレゼント
消費者庁子供を事故から守る!!事故防止ハンドブック アブナイカモ
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201407/3.html
https://oshiete-dr.net/2017/09/28/obore/

文責: 救急集中治療科:救急外来部門 石上 雄一郎

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科(救急外来部門)

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