食物アレルギー〜旅行先で気をつけることとは〜

こんにちは! 東京ベイ・浦安市川医療センターの救急外来部門です。東京ベイの救急外来(ER)は24時間365日受診が可能です。時間帯によっては混雑していますが、来院された方により良いの医療を提供し、受診してよかったなと思って頂けるように努力しています。今年度はよくある病気や怪我に対しての簡単な対処方法などについて解説していこうと思います。

今回は「食物アレルギー〜旅行先で気をつけることとは〜」です。救急医の視点からアレルギー症状が起こってしまった時に気をつけるべきポイントを中心にお話ししたいと思います。

まずアレルギー症状とはどういったものがあるのでしょうか。アレルギー反応とは外から入って来た食物などに含まれているアレルゲン(アレルギーの原因となる物質でアレルギー疾患を持っていると反応してしまうもの)が原因で、体を守るシステムが過剰反応してしまいその結果命に危険を与えてしまう反応です。日本の統計では乳児の10%、3歳児・保育所児では5%、学童以降が1.3-4.5%と言われいます。日本人の1-2%が持っているとも言われておりとても多い疾患です。
具体的には

・急に体にブツブツが出て来た
・体がとても痒い
・呼吸が苦しくなって来た
・気を失いそうになった
・吐いたり下痢したりした
・喉が痒くなった

などがあります。

最近は旅行会社からもアレルギーの子供対応プランが用意されていたり、アレルギーナビゲーターがあらかじめ食事の内容を旅行の宿泊先に確認したりすることも増えています。浦安のテーマパークでも低アレルゲン食を提供しているようで、旅行前に公式サイトを見て事前にアレルギー物質不使用のメニューを検索できるようになっているようです。しかし、このような症状が出たときにどのような症状に気をつければ良いでしょうか。

①アレルギーで最も怖いアナフィラキシーに気をつける

アナフィラキシーとは何でしょうか。アレルギー反応のなかでも特に強い反応がでて、体の重要な臓器に症状が生じることを指します。アナフィラキシーの症状は40以上あると言われていますが代表的なものを以下に挙げます。

・皮膚症状:体が痒い・赤い・熱い・じんましんができた
・気道症状:嗄声(声のかすれ)・のどが腫れぼったい感じ
・呼吸器症状:喘鳴(ヒューヒュー聞こえる)・咳
・循環器症状:頻脈・低血圧・不整脈・失神
・消化器症状:嘔吐・腹痛・下痢・吐き気
・そのほか:結膜充血・鼻づまり・目のかゆみ・興奮

このような症状が出現した時には注意すべきでしょう。

典型的には皮膚粘膜症状(かゆみや蕁麻疹)が出現し、気道症状・呼吸器症状・循環器症状のいずれかひとつ症状が出た時、またはアレルギーの原因となる物質に触れてから、気道症状・呼吸器症状・循環器症状・消化器症状・皮膚粘膜症状のいずれか2症状が急速に出現した場合に診断します。つまりアレルギーのうち皮膚以外の症状も出た場合には怖いアナフィラキシーかもしれないということです。

②アナフィラキシーだと思ったらどうすれば良いか?

食物アレルギーによるアナフィラキシーで死亡する人は10万人中2人と言われています。特に死亡原因は気道閉塞が最も多いと言われています。特に喉の腫れや呼吸困難は一刻を争いますので躊躇なく救急車を呼んでください。アナフィラキシーになる人の53%がアレルギー素因(アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息)を持ってると言われています。

また食物アレルギーを持っていて仕事上アレルゲンを避けることができないなどを理由にエピペン®という注射をすでにお持ちの方もいるかと思います。この注射はアドレナリンとよばれる血管を収縮させる薬です。呼吸症状や気道症状が出現したり、失神して倒れたりしてしまうような重症の場合は特に早く筋肉注射をしたほうが良いと言われています。

医療機関に来た場合は点滴で治療することが多いです。まだエピペンを投与されていない場合はアドレナリンを投与することがあります。医療機関では症状が出る4-6時間前程度で何をどれくらい食べたか?を聞かれることになります。医療機関に到着した時にはすでに症状が落ち着いてる方もいますので、食べてどれくらいの時間でどのような症状が出たかをお医者さんに伝えてくださるととても助かります。アナフィラキシーは悪くなるケースのほとんどが発症後4時間であり遅くとも6時間以内といわれています。発症後4-6時間は病院内で経過観察を行うことが無難であることが専門家内のコンセンサスとして言われておりますので、当センターでも最低4-6時間は経過を見るようにしています。

③旅行前にアレルギー情報を滞在先に伝え、薬を持参するなどしっかり準備を行う

以上のように食物アレルギーではアナフィラキシーという生命に危険がある症状を起こすことがあります。では旅先でどのようなことに気をつければ良いのでしょうか?
それは食べるものを事前に把握することです。アレルギー表示には「表示義務」(件数が多いため)と「任意表示」があります。
消費者庁が表示義務としているのは7つの食材になります。

・卵
・乳
・小麦
・落花生
・えび
・そば
・カニ

任意表示は いくら・キウイフルーツ・くるみ・大豆・カシューナッツ・バナナ・山芋・もも・りんご・さば・ごま・さ毛・いか・鶏肉・ゼラチン・豚肉・オレンジ・牛肉・アワビ・まつたけとなっています。こちらは表示義務より数が少ないので書いてないこともあるかもしれません。

食物アレルギーの実態調査によると4,644人の調査で

1位 鶏卵……… 35%
2位 牛乳……… 22.3%
3位 小麦……… 12.5%
4位 ピーナッツ 5.6%

と続きます。こちらは表示義務に記載する内容ばかりになっています。 食べたことがないものを食べるときは必ず表示を確認することが大事です。また事前に滞在先やレストランに事情を説明してアレルゲンとなる成分を除去してもらう対応が可能なら除去を行ってもらう。それが困難な場合はレトルト食材など内容がわかっているものを活用するのも一つの手でしょう。食物アレルギーや喘息をお持ちの方は旅先にエピペン®・内服薬・吸入薬を持ってくることを忘れないのも重要と言えます。

以上の様に食物アレルギーの方が旅先で気をつけるべきポイントは

①アナフィラキシーの症状を知る
②アナフィラキシーであれば救急車を呼び、可能であればエピペン®を筋肉注射する
③旅行前にアレルギー情報を滞在先に伝え、薬を持参するなどしっかり準備を行う

となります。

東京ベイの救急外来部門は住民のみなさまの健康を守ります。
今後ともよろしくお願いします。

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参考文献
Up to date: Food allergy
・日本アレルギー学会アナフィラキシーガイドライン2014
・食物アレルギー診療ガイドライン2016
・食物アレルギー診療の手引き2017
・Umasunthar T, et al. Clin Exp Allergy 2013; 43: 1333-41.
・消費者庁アレルギー表示について(最終閲覧日:2018/10/17)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/pdf/food_index_8_161222_0001.pdf
・東京ディズニーリゾート アレルゲン情報について
http://fsp.tokyodisneyresort.jp/p/info
書籍:保護者からの質問に自信を持って答える 小児食物アレルギーQ &A

文責: 救急集中治療科:救急外来部門 石上 雄一郎

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科(救急外来部門)

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