こんにちは! 東京ベイ・浦安市川医療センターの救急外来部門です。
東京ベイ救急外来(ER)は24時間365日受診が可能です。時間帯によっては混雑していますが、来院された方にベストの医療を提供し、受診してよかったと思って頂けるように努力しています。今年度はよくある病気や怪我に対しての簡単な対処方法などについて解説していこうと思います。
今回は救急医の視点から子供が誤飲(ごいん)、誤嚥(ごえん)してしまった時に気をつけるべきポイントを中心にお話ししたいと思います。
誤飲とは本来飲み込まないものを間違えて飲んでしまうことです。ちなみに食べ物が空気の通り道に入ってしまうことを誤嚥といいます。子供の死亡原因の第一位は不慮の事故です。ここでは子供を不慮の事故から守るためにどのようなことに気をつけるべきか説明します。
誤飲で受診する患者さんの具体例をあげましょう。
- おばあちゃんの薬が床に落ちていて飲んでしまった
- タバコの灰皿が床においてあり食べてしまった
- 遊んでいるときに口に入るサイズの10円玉を飲んでしまった
- 子供がおもちゃを投げて飛び出て来たボタン電池を飲んでしまった
- クレヨンを食べてしまった
などがあります。
ご家族の方は吐かせた方がいいのか、無理に口をこじ開けてかき出すことができないか試行錯誤されて来院されることが多いです。
まずはどのようなもので誤飲は起こるのでしょうか?
①子供の口に入るサイズのものはなんでもありうる
具体的には子供の口のサイズは最大で39mm言われています。トイレットペーパーの芯の直径が38mmというのがJISの規格で決まっていますので、トイレットペーパーの芯より小さいものは誤飲する可能性があります。
具体的にはどのようなものが危ないか列挙します。
- ボタン電池–数時間で食道に穴があくことがあり重症になることがあります。リモコンやおまけでついてくるおもちゃなどにも入っているケースがあります。
- 磁石-複数飲んでしまった場合は腸の中で壁ごとくっついてしまい手術が必要になることがあります。100円ショップなどで超強力な小さい磁石が手に入るので注意が必要です。
- 鋭利なもの-想像通り危ないです。
- 医薬品-子供はとても体が小さいので大人が飲む量を飲むと重症になることがあると言われています。たとえ1錠でも血圧の薬や心臓の薬を飲んでしまうのは命に関わるのです。おばあちゃんが飲んでいる薬を床に落としてしまいそれを子供が飲んでしまうというのが最悪のシナリオです。
- 洗剤–特にボール型の物で事故の報告があります。
- タバコ-ニコチンが入ると吐きたくなりますので摂取量は少ないことが多いです。ただし空き缶にタバコの吸い殻を貯めていることがあり、そこに溜まった水をジュースと勘違いして飲むという事故があり重症化し命に関わることがあります。近年加熱式タバコの相談も増えています。使用後にゴミ箱に捨てていたものを取り出して口に入れるという事故が多いようですので注意が必要です。
- 吸水ボール-高吸水性樹脂(オムツや生理用品に使用されているものと同じ)でできており飲んでしまうと体の中でゼリー状になり3-5倍になってしまうこともあるそうです。腸閉塞など手術が必要となった報告があり重症化します。
②何をどれくらいいつ飲んでしまったか?嘔吐したか?を伝えましょう。誤飲したものの容器や同じもの・あれば袋や説明書を医療機関に持って行きましょう。
誤飲物によっては牛乳を飲ませることが勧められます。牛乳や卵白はタンパク質が豊富であり希釈することにより胃粘膜のダメージを減らす可能性があると言われています。(近くになければ水でも大丈夫です。)闇雲に嘔吐させてはいけないものもありますので注意が必要です。
- ボタン電池→何も飲ませずに一刻も早く救急外来受診を
- タバコ→何も飲ませない
- 医薬品→水や牛乳を飲ませる
- 防虫剤(ナフタレンなど)→牛乳はダメ。水をのませて吐かせる
- ガソリン・灯油・除光液→吐かせてはいけない
- 洗剤・漂白剤→水や牛乳を飲ませる。酸やアルカリが強い。吐かせてはいけない。
③誤飲するかもしれない危ないものはしまっておく。丸くてツルツルしたものや豆は子供のうちは避ける。
子供はご両親の予想を超えてアクロバティックな行動をしてしまいます。1歳から2歳は目線の高さにあるものは手を伸ばして取ってしまい、3歳から5歳は椅子などの”とっかかり”を使って登ってしまい机の上のものも取ってしまうことがあると言われています。対策の一つ目は”子供が飲み込める危ないものはしまっておく”です。
誤飲について上で述べて来ましたが誤嚥の方がより重症となることが多いです。子供の気管の太さは大人の小指の太さ(赤ちゃんならストローくらいの太さ)と言われています。食べ物やおもちゃを吸い込んでしまうと息ができなくなってしまいます。
- 4歳まではミニトマトやぶどうなど丸いものは4つに切る
丸くてツルツルしたものはすっと奥に行くことがあるようです - 5歳まではピーナッツなど豆類は食べさせない
吸水して気管を塞ぐことがあります。節分で豆をまいても中身の豆は食べないことも大事な予防になります。
首を抑えて息が詰まった場合にはすぐに救急車をよんでください。1歳以下だと背中を叩く、1歳以上だとハイムリック法が勧められていますがいきなり一般市民が行うのは困難と思われます。
以上の様に誤飲・誤嚥が起こった時に気をつけるべきポイントは
- ①トイレットペーパーの芯より小さいものはなんでも誤飲するかもしれない。
- ②家庭でできる対応
….何をどれくらいいつ飲んでしまったか?嘔吐したか?を伝えましょう。誤飲したものの容器や”同じもの”・あれば袋や説明書を医療機関に持って行きましょう。 - ③家庭でできる予防
….誤飲するかもしれない危ないものはしまっておく。丸くてツルツルしたものや豆は子供のうちは避ける。
となります。
東京ベイの救急外来部門は住民のみなさまの健康を守ります。
今後ともよろしくお願いします。
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参考文献
Up to date: Pediatric injury prevention
Up to date: Foreign boides of the esophagus and gastrointestinal tract in children
Up to date: Button and cylindrical battery ingestion
NPO法人 SAFE KIDS worldwide japan
ホームセーフティー100
子供に安心をプレゼント
日本中毒情報センター 072-727-2499
タバコ誤飲事故専用電話 072-726-9922
日本小児科学会 injury alert
消費者庁子供を事故から守る!!事故防止ハンドブック アブナイカモ
文責: 救急集中治療科:救急外来部門 石上 雄一郎