こんにちは! 東京ベイの救急外来部門の医師です。東京ベイ救急外来は24時間365日受診が可能なので、たくさんの方がいらっしゃいます。我々救急外来のスタッフは、来院された方が受診してよかったなと思える治療を提供できるように努力しています。今年度、当センターホームページを通じて救急外来でよくみる病気や、皆さんが旅先で体調を崩した場合にどうすれば良いかなどについてお話したいと思います。
今回は熱中症〜予防と対応が大切〜
暑い日が続いています。毎年梅雨明けの6月末になると熱中症の数が増えることが統計からもわかっています。湿度が上がり気温が高く急に暑くなった日は要注意です。日本では毎年約40万人が熱中症で受診し、約5万人が救急搬送されています。特に体温調節する機能が未熟な子供や高齢者は注意が必要です。また暑さに慣れていない人や肥満の人も熱中症になりやすいと言われています。
熱中症はどんな症状が出るのか
熱中症は軽いⅠ度・真ん中のⅡ度・重いⅢ度の3つに分類されます。熱中症は暑い環境によって起こるいろいろな症状なので室外の暑い環境でしか起こらないと思われがちですが、統計を取ると室内のほうが件数は多いことがわかっています。
具体的には以下のような症状があります。
Ⅰ度:めまい・立ちくらみ・筋肉痛・汗が止まらない・こむら返り・過呼吸
Ⅱ度:頭痛・吐き気・全身がだるい
Ⅲ度:意識がない・全身が痙攣している・呼びかけに対して返事がおかしい・歩けない
以上のような症状が暑い環境で出た場合は熱中症かもしれません。
熱中症にならないために〜予防〜
熱中症は暑い環境が問題なので働く環境によってはなかなか予防が難しいかもしれません。
以下の予防はできるだけ心がけたほうが良いでしょう。
・こまめな水分、塩分補給
・暑いと感じたら無理をしない
・直射日光を避け日傘や帽子を使用する、日陰を利用する
・エアコンを使用する
・風通しのいい服装をする
・シャワーやタオルで体を冷やす
・扇風機やうちわを使用して風を送る
体内の水分量も年齢を重ねることで減っていき脱水になりやすいのですが
高齢者だと特に
・水を普段から飲まない
・汗はかかないし喉は乾かない
・エアコンは体が冷えるから嫌いだ
と言って無理をするケースがよく見られます。
暑い日には水を少量ずつ(1カップ)適切に取るのは重要でしょう。ちなみに暑さ指数(WBGT)という指標もありこれが高い時には長時間の運動を避けたほうが良いという記載もあります。
熱中症かもしれないと思った時の対応
意識があり反応が正常な時は
・涼しい場所へ移動する
・衣服を緩める
・スポーツドリンク、薄い食塩水(0.1-0.2%)などを飲ませる
・太い血管のある腋の下、両側の首筋、足の付け根を冷やす
意識がない・反応がおかしい時は重症かもしれないので救急車を呼びましょう。
熱中症は「暑熱による諸症状を呈するもの」のうちで他の原因疾患を除外したものを熱中症と診断する。」と熱中症ガイドライン2015にも書いてあるように、熱中症かもしれないと思って受診してもらっても実は風邪や肺炎で発熱していることもあります。熱中症の対応をしても良くならないなと思った場合には違う病気かもしれないので病院に受診したほうが良いでしょう。
以上の様に今回は
①熱中症の症状
②熱中症の予防
③熱中症かもしれないと思った時の対応
をお話ししました。
いかがでしたでしょうか。これからも東京ベイの救急外来では地域のみなさまの健康を守るために役に立つ情報を発信して参ります。今後ともよろしくお願いします。
「どこにいけば?」を「ここにいけば」へ 東京ベイ ER
参考文献
熱中症ガイドライン2015
熱中症環境保健マニュアル2018
CDC NIOSH Criteria for a Recommended standard Occupational Exposure to Heat and Hot Environments
文責: 救急集中治療科(救急外来部門) 石上 雄一郎