こんにちは、東京ベイ・浦安市川医療センター救急外来部門です。
少しずつ寒くなっておりますが、皆様いかが過ごしでしょうか?
今回は、寒くなってくると毎年、全国的に流行するインフルエンザについてお話ししようと思います。
・インフルエンザの正体とは?
一般でいうインフルエンザとは、インフルエンザウイルスの感染により発症する全身感染症です。
症状としては、高熱、関節痛、悪寒のほか、鼻水や咳、喉の痛みといった気道症状を起こします。
約5日間程度発熱が持続する場合が典型的であり、時として肺炎などの合併症を引き起こすこともあります。
日本では主に冬の時期に流行することで知られていますが、地域によっては1年中インフルエンザが流行する場所もあり、特に沖縄地方や海外への旅行から帰宅され発熱した場合は注意が必要です。
・インフルエンザの検査って必要ですか?
インフルエンザの流行時期になると、発熱しただけでインフルエンザと考え検査を希望される患者さんが増えます。
しかし、実際にインフルエンザの検査は必要なのでしょうか?
実はインフルエンザ検査はインフルエンザの診断には有用であっても、「インフルエンザではない」と否定することはできない検査なのです。
インフルエンザ検査で陽性を認めれば間違いなくインフルエンザと診断できます。
しかし、インフルエンザに罹っている患者に検査してもインフルエンザ陽性と出る可能性は50-90%とバラつきがあるのです。
つまり検査が陰性であっても、流行時期においては「インフルエンザではない」とは言えないのです。
・どうする?インフルエンザの診断
ではどのようにインフルエンザと診断するのか?
それは症状と周囲の流行状況です。
例えば、悪寒・関節痛を伴う発熱で、子供がインフルエンザに罹患している場合は、例え検査が陰性であっても症状から臨床的にインフルエンザと診断されることもあります。
この場合は検査をする必要性は低く、インフルエンザとして感染対策や解熱剤の使用などを行うことが大切になります。
・飲むのが当たり前?抗インフルエンザ薬の効果は?
では次にインフルエンザの治療について考えてみましょう。
抗インフルエンザ薬は日本でも、タミフルやリレンザなどいくつかの種類が使用されています。
その効果は、どれ程でしょうか?
実は抗インフルエンザ薬の効果は、生来健康な患者さんが内服した場合、平均5日間ある発熱期間を1日短縮する程度と報告されており、さらに発症から48時間以内に内服を開始しなければならないという注意点もあります。
海外では、健康な成人への抗インフルエンザ薬は効果に乏しいとの見方が多いです。
したがって多くの患者さんでは、抗インフルエザ薬を必ずしも飲む必要はなく、自然経過での回復が見込めます。
では、一方でどのような患者さんが抗インフルエンザ薬を内服する必要があるのでしょうか?
肺炎などの合併・インフルエンザの重症化が予測される患者さんには選択的に抗インフルエンザ薬を投与する必要があります。
【重症化しやすい因子】
・65歳以上、5歳未満
・妊娠されている女性
・糖尿病、腎臓病、肺疾患など基礎疾患がある方
・抗がん剤による化学療法、ステロイド内服中など免疫抑制状態の方
抗インフルエンザ薬の内服に関して、ご質問などがあればいつでも受診時に担当医へご相談いただければと思います。
いかがでしたか?
インフルエンザは多くの方が発症する一方で、大半の場合は解熱剤のみの対症療法で自然治癒が見込める病気です。
しかし中には、上記のようにしっかりと治療を行った方がよい場合もあります。
これからの季節、発熱などの症状でお悩みの方はどうぞ当センターへご相談ください。
参考文献
Lancet. 2017Mar10.pii:S0140-6736(17)30129-0.doi:10.1016/S0140-6736(17)30129-0. Influenza