胸が苦しい時はどうしたら良いの?〜胸痛の原因は心臓、大動脈、肺、胃・食道?〜

こんにちは、東京ベイ・浦安市川医療センター救急外来部門です。
まだまだ、暑い季節ですが、これから徐々に気温が下がってくる季節になりましたが、いかがお過ごしでしょうか?
今回は、冬になると増えてくる症状の一つとして、胸が痛くなったときについて、ご説明させていただきます。

・一番怖い心筋梗塞の痛みって?

胸が痛いという症状で最も怖い病気として思い浮かべるのは、心筋梗塞だと思います。
心筋梗塞とは、心臓に血液を送っている血管がつまる病気で適切な時間に適切な治療が行われないと、死にいたることもある非常に怖い病気です。
早期診断・早期治療する必要があり、時間経過とともに心臓の筋肉が死んでしまい、心臓の動きが悪くなってしまうため、症状から治療までの時間が非常に重要になります。
では、典型的には心筋梗塞で起こる胸痛はどのような感じでしょうか。
一般的には、胸部が掴まれるような鈍い痛みと言われています。
また、運動などによって引き起こされ、体勢や呼吸によって変化がなく、押しても痛みが変わりません。
また、放散痛といって腕、肩、下顎、歯などに痛みが広がることがあり、持続時間は様々ですが、典型的には30分以上継続します。
しかし、すべての人がこのような典型的な症状になるわけではなく、もちろん非典型な場合も多数あります。
恐ろしいことに、高齢者の方になると胸痛がなくても嘔気だけで心筋梗塞の診断を受けるといった場合もあります。
このように胸痛が出現しにくいのは、①高齢者②糖尿病患者③女性と言われていますので、特に注意が必要です。(文献1参照)

・どのような人に注意が必要か?

次に、どのような患者さんが心筋梗塞になりやすいかについてご説明させていただきます。
心筋梗塞になりやすいリスクとして、様々な研究が世界で行われていますが、日本循環器学会などのまとめによると、年齢、血圧、喫煙、血清総コレステロールが様々な研究で指摘されており、また、耐糖能異常(糖尿病)、肥満、飲酒を指摘している研究もあります。(文献2)
よって、このような基礎疾患をお持ちの方で、胸が痛くなった場合はより注意が必要です。
もちろん、症状だけでの診断は困難であり、心電図、採血、心臓のエコーなどを用いて総合的に判断されますので、ご不安な時はいつでもご相談ください。

・その他、胸が痛い時に注意することは?

心筋梗塞以外でももちろん胸が痛くなることはあります。
では、どのような病気で胸が痛くなるでしょうか?
臓器としては、心臓、大動脈、肺、胃・食道と複数あり、さらに表面には肋骨、肋間神経、皮膚などがあり病気としても、大動脈解離、気胸から肋骨骨折、帯状疱疹まで様々です。
痛みも強いものから、弱いものまであり、波があったり、なかったりと様々な痛みの性状になります。
特に注意する必要のある痛みは、突然最大になるような痛みです。
我々、救急医はこのような病歴を聞くと、何かが裂けたり、詰まったり、ねじれたりするような疾患を思い浮かべ、その多くが重症であり精査が必要になります。

今回は、胸が痛くなることについて考えてみました。
痛みの性状、基礎疾患などから様々な疾患が考えられます。
ご不安があればいつでもご相談ください。

1:JAMA. 2000;283(24):3223.
2:虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012 年改訂版)

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科(救急外来部門)

メニュー