あつい季節は、熱中症にご注意!!〜救急外来医師から地域のみなさまへ〜

皆さま、こんにちは!!
東京ベイ救急集中治療科救急外来部門です。
7月になり、本格的に暑くなってきました。
一般的に、夏は救急での患者さんが少なくなる季節ですが、この季節に特有の病気があります。
そうです!!熱中症です!!

救急外来医師から見た熱中症 〜死亡数、救急搬送件数、熱中症のリスク〜

熱中症というと一見軽く見てしまいがちですが、患者さんによっては重症となり亡くなってしまうこともあります。
厚生労働省のデータでは、2015年には968名の方が熱中症でお亡くなりになっており、65歳以上の方が781名と全体の80.7%を占めており、高齢化社会である日本で熱中症には特に注意が必要であると思います。
年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(1995年~2015年) ~ 人口動態統計(確定数)より

救急搬送では消防庁のデータによると、以下のグラフのように毎年4万人以上の方が熱中症で救急搬送されております。
熱中症による救急搬送件数は例年7月に入り増加し、8月初旬にピークに達します。
2015年の熱中症による救急搬送状況

では、どのような場合により熱中症に気をつける必要があるでしょうか?
様々な論文で、いろいろな熱中症のリスクが挙げられていますがわかりやすいものをあげると、
・75歳以上
・4歳以下
・アルコール摂取
・肥満
・脱水
などが挙げられています。
(CMAJ. 2010 Jul 13; 182(10): 1053–1060.)
よって、このような項目に該当する方はより気をつけていただく必要があります。

熱中症の重症度 〜体温だけでなく症状にも要注意〜

次に熱中症をきたしているのかどうかを判断する際に注意する点について述べてみたいと思います。
普段、我々医療従事者は熱中症を疑った際に直腸温といい肛門に体温計を入れ、体温を測定し参考にします。
しかし、社会的には脇の下で腋窩温を測定することが一般的です。
直腸温と腋窩温では、だいたい1℃程度の変化があり、直腸温の方が高いと言われています。
よって、腋窩温で正常でも実は直腸温は高いということもあります。
腋窩温が低いからといって安心できるわけではなく、患者さんの症状を見ながら本当の体温を判断する必要があります。

いわゆる熱中症は重症度の軽いものから、①熱痙攣②熱疲労③熱射病と我々は分類します。
熱痙攣は、大量の発汗により塩分補給がされずに筋肉が痙攣するもので運動後に発症します。
それがひどくなり、水分も補給されないと水分と塩分が欠乏し熱疲労になります。
症状としては、口が渇く、立ちくらみ、嘔気、嘔吐、頭痛などがありますが、意識障害などの中枢神経症状は認めません。
中枢神経症状を認めると、最重症である熱射病となります。
これら熱痙攣、熱疲労、熱射病では、水分・塩分の補給、クーリング、合併症の予防が必要になります。
よって、みなさん(特に高齢者の方)が暑い場所に長時間いて、上記のような症状(口の渇き、立ちくらみ、嘔気、嘔吐、頭痛、意識障害)を認めた場合には早めに医療機関を受診していただいた方が良いと思います。

熱中症の予防 〜暑さ指数を外出時の参考に〜

最後に、熱中症の予防について述べたいと思います。
熱中症では、暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature)といって湿度、気温、周辺熱環境を考慮した値を見て熱中症になりやすい環境かどうかを判断し予防の参考とします。
暑さ指数が28℃を越えると熱中症の患者さんが増えるというデータもあり、夏にお出かけになったりする際にはご参考にされると良いと思います。
具体的には、生活環境、運動環境でのアドバイスが環境省のホームページにありますのでご参照ください。(http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

今回は、以上です。
楽しい夏休みもはじまりますし、皆さんがしっかりとした知識で熱中症を予防し、夏をうまくエンジョイされることを願います!!

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科(救急外来部門)

メニュー